信長続生記 端書き 2(閲覧注意)
批判殺到、かと思えばどうやらあまり御不興も買わなかったようですので、本編更新ペースの合間に入れさせて頂きます。
前回に引き続きキャラクター崩壊現象もひどく、読んでて不快になってしまっても責任は取れませんので、寛容な気持ちで御読み頂ける方のみお進み下さい。
秀吉登場で少々下ネタ注意、となっております。
信長続生記 端書き2 「本能寺は変」
秀満「なあ蘭ちゃん」
蘭丸「次その名で呼んだら殺人事件が起こるぞ、この場でな」
秀満「いきなりキレてるッ!?」
蘭丸「呼び名には気を付けろ…で、なんだ?」
秀満「微妙にサ、ここの店の名前に悪意を感じンだけど」
蘭丸「店の名前? 別にいいだろう、そんなもの」
秀満「いやだってさ、ここの店の名前絶対おかしいって! 『創作和食・脇役』ってなんだよ! これ差別じゃねえの!? いやもう立派な嫌がらせか!?」
蘭丸「うるさいぞ、むしろここは良い方なんだ。 創作和食というのもなかなか悪くないぞ」
秀満「いや、でもさー…え、良い方なの、ココ?」
蘭丸「ああ、先程信長様を別の店に送り届けてきた後、私はコチラに来たんだが…その途中で見かけた店は正直……私は絶対遠慮したかった…」
秀満「え、他の皆さんもどっか別の店行ってんの? ちなみにどんなトコ?」
蘭丸「『立ち飲み居酒屋・端役』という店で、安酒と冷凍枝豆と細い焼き鳥しか無いような店だった」
秀満「………創作和食サイコー! 脇役バンザーイ!」
蘭丸「ああ、私もアレだったらむしろ『ファミリーレストラン・モブ』の方がまだマシだ」
秀満「この辺り一帯の店の名前どうなってんだよッ!?」
蘭丸「撮影所が近いせいかな、やたらそれを意識させる店名が多いな」
秀満「そういや俺も見たわ、『美容室・カット』とか『アメリカンバー・アクション』とか!」
蘭丸「うーむ、それはそれで普通にありそうな気もするが…」
秀満「つーか今回って俺と蘭ちゃ……蘭丸クンだけ? 他の皆さん全員よその店行ってんの?」
蘭丸「いや、多分だがそのうち…」
帰蝶「失礼するわね、別の仕事が急に入っちゃってね」
秀満「うぉッと、アンタまでこっちッスか? えー、俺この人苦手なんだよなー」
帰蝶「あら、来て早々に本人目の前に苦手とか、随分失礼よね」
蘭丸「お前本当にその言いたい放題な所、直した方が良いぞ?」
帰蝶「そうね、少なくとも年上に対する敬意は必要よね」
秀満「いーや! 俺は前にアンタに酒付き合わされて、帰りたいって言う俺を朝7時まで連れ回した挙句、『私、明日仕事無いから好きなだけ飲めるわねー、え? あなたはあるの、大変ね』とか言いやがって、次の日の撮影の辛さ、俺は忘れちゃいませんゼ!」
帰蝶「先にツブれたアンタが悪いわね!」
蘭丸「………いや、こればっかりはフォロー入れられません、帰蝶様」
秀満「俺は酒を楽しく飲みたいんだよー、酒入って下らないダジャレ言うオッサンとか、人の都合考え無しに飲み歩く姐さんとか嫌なんだよー、なんでこの現場こんなんばっかなんだよー!」
蘭丸「お前、早くも酔ったか…?」
帰蝶「あらら、随分と女々しいのね。 イイじゃないの、お酒は呑まれる直前まで飲むのが良いのよね」
蘭丸「なんで酒とチキンレースしなきゃいけないのか、理解に苦しみますが…」
帰蝶「あら、お酒ってのはいわば真剣勝負よ? 自分が美味しい、相性が良い、と思えるお酒に出会い、その酒のアルコール分と自分の肝臓がどこまでせめぎ合えるのかを楽しみながら、その勝負に酔っていくんじゃない?」
秀満「な、俺がこの人苦手、って言うの分かるだろ?」
蘭丸「う、うむ……さすがにこれは………そ、そうだ帰蝶様! 信長様が行かれたお店がありますのでそちらにご案内します、そこでしたら美味しいお酒も出してくれますよ!」
帰蝶「あらそう? ちなみに何て名前の店?」
蘭丸「はい、『三ツ星レストラン・メイン』です!」
秀満「だから店の名前おかしいっての!」
蘭丸「あの店には主役級の人物でなければ出入りできませんが、帰蝶様でしたら信長様のご正室ということで、入店が可能かもしれません!」
秀満「どんな店なんだよ、っていうかその店行けるのってやっぱ信長様だけ?」
蘭丸「いや、信長様はもちろんだがあとは光秀殿だけだな」
秀満「地雷、超地雷。 ナニその危険地帯、織田信長と明智光秀のサシ飲み空間とか、秀吉サンじゃなくても中国大返しで逃げるわ、マジで」
帰蝶「いいわね、じゃあそこに案内してくれる?」
秀満「行くんだ……地雷原と分かってて自ら進むとか。 ないわー、ホントないわー」
蘭丸「で、では帰蝶様。 私の後に付いてきて下さい、ご案内いたします」
秀満「いってらー。 俺はここにいる、絶対近寄らない」
秀満の視界から、蘭丸とその後に続く帰蝶が消える。
秀満「蘭ちゃんホントよくやるわ、役の上だけでなく普段から『森蘭丸』だもんなー。 さて、蘭ちゃんが戻ってくるまで誰か来るかな」
秀吉「おお、なんじゃお前さんか! 先に一杯やっとるとか、つれない奴じゃのぅ」
秀満「え、秀吉サン? ここにキレイどころはいないッスよ?」
秀吉「なんじゃあ、つまらんのぅ…美人の酌で飲めれば、どんな安酒でも極上の美酒に代わると言うが、男しかおらんのでは極上の酒も寂しいもんじゃ」
秀満「楽しい酒の飲み方って、ホント人それぞれッスねー…」
秀吉「ん、ここにさっきまで誰かおったのか? 器と皿が置いておるが」
秀満「あ、さっきまで蘭ちゃ、じゃなくて蘭丸クンがそこに」
秀吉「おるではないか、キレイどころが!」
秀満「ええええええええッ!?」
秀吉「いや引くな引くな、冗談じゃ。 いくらキレイな顔立ちしとっても男じゃろ? さすがにのぅ…」
秀満「で、ですよねー…あービビった。 100人以上の女に手を出した、人たらし、と言うか完全に女たらしの秀吉サンの事だから、もしかしてとか思っちゃいましたよー」
秀吉「何を言う! 英雄色を好む、とは昔から言われておることじゃぞ? 信長様なんか正室の帰蝶殿との間に子供作らんかったくせに、戦で夫を亡くした未亡人を側室にして、その女に嫡男・信忠殿、次男・信雄殿を産ませたくらいじゃ!」
秀満「わー、聞きたくなかった信長様の女性遍歴…」
秀吉「しかもじゃ、聞く所によれば三男・信孝殿の方が先に生まれておったらしいが、その母親があまり高い身分の女じゃなかったらしく、信長様お気に入りの側室・吉乃殿が産んだ信雄殿がくり上がりで次男になったとか!」
秀満「信長様って、ああ見えて好き嫌い激しいッスよねー」
秀吉「その結果次男は常に三男よりも優遇されたため、官位とかも信雄殿の方が上じゃ! 信孝殿からすれば腹立たしい限りよの、その積み重ねが清州会議で、揉めに揉める原因となる! ま、そのおかげでわしが付け入る隙が出来た訳じゃがな!」
秀満「どうして歴史上の人物って、自分が死んだ後にどうなるかを予想して生きてないんスかねー」
秀吉「そもそもどこまで生きれるか、分からん時代じゃからのぅ…今じゃったらアレじゃ、ホレ。 自分が死んだらハードディスク初期化しとけ、とかパソコン壊しといてとか言わないようなもんじゃろ?」
秀満「なんでハードディスク初期化? っていうかパソコン壊せって?」
秀吉「分からんのか? パソコンのハードディスクなど己の黒歴史が詰まったいわばパンドラの箱ではないか? 自分が必死にかき集めたお宝画像の数々が白日の下に! など死に恥も甚だしいじゃろ?」
秀満「秀吉サン、アンタ一体どれだけそっち系のモノ貯め込んでんスか?」
秀吉「テラバイト単位の外付けハードディスクがもう2つ3つ欲しい、と思っておる」
秀満「お巡りさんコイツです」
秀吉「人を指差すな!」
秀満「通報しますた」
秀吉「するな! お主とてあるじゃろ! 人には見られたくないものの一つや二つや十や百!」
秀満「最後で桁が上がってますけど? 俺はそっちに金つぎ込むくらいなら…刀欲しいっすね、マジモンの一振りン百万とかする奴! 最近ちょっと気になり始めて」
秀吉「ン百万もあるなら、わしだったら…大人のお店に」
秀満「早く帰ってこないかなー、蘭丸クンは! もうヤダこの人!」
秀吉「そういえば蘭丸の奴はどこに行っておるんじゃ、便所か? これだけ長いと大か?」
秀満「メシ食う所でその単語言うのアウトっすよ、そうじゃなくて帰蝶様を」
蘭丸「今戻ったぞ」
秀吉「おう帰ったか、ご飯にするか? お風呂にするか? それとも」
蘭丸「よしそこに直れ、今すぐその首…って、え、秀吉殿?」
秀満「笑えない冗談はやめないッスか、でもずいぶん遅かったなぁ、なんかあったの?」
蘭丸「うむ…帰蝶様を店の前まで連れて行ったら「なんか堅苦しそうだからパスね」と言い始めてな、その後よりにもよって『立ち飲み居酒屋・端役』で「ここが良い」と言って…」
秀満「あ…(察し)……ゴクロウサマ」
秀吉「なんじゃ帰蝶様は居酒屋におるのか! んじゃわしもそっちに!」
秀満「あ、行っちまった……何しに来たんだろうな、あの人」
蘭丸「この世のなにより女が好きな御仁だ、放っておこう」
秀満「……だな。 ンで、今日は基本それぞれの人物に合わせた場所で、飯食ってんだよね?」
蘭丸「ああ、そのはずだ。 信長様や光秀殿は主役級で、その脇を固める私たちが脇役級、その脇役よりも目立たない扱いが端役級、そして一番下がモブ、と…」
秀満「まとめて聞くと差別ヒデエな。 もしかしてこの場にいない利三殿とか」
蘭丸「ああ、先程『立ち飲み居酒屋・端役』で見かけた」
秀満「そっか、あの人端役だったんだー。 モブってのは文字通り足軽その1とかでしょ」
蘭丸「だろうな」
秀満「つまり名前があってもある程度の活躍が無いと、立ち飲み居酒屋行きか…もちっと予算増えねえの、ここの撮影現場」
蘭丸「知らん、私の知るところではない」
秀満「そういや俺この後どうなんのかなー、途中まで出番あったけど結局最後までどうなるか分かってないじゃん?」
蘭丸「せめて自分のもらった役くらい調べておけ、この後お前は切腹して死んでクランクアップだ」
秀満「ネタバレー! 俺もう次あたりで死ぬじゃん!」
蘭丸「いや、そもそも次があるのか、お前? 信長様への報告で「秀満、腹切って死んだってよ」とかで終わってる可能性も」
秀満「俺途中まですごく目立ってたよね、それなのにナニその扱い。 「部活やめるってよ」みたいな言い回しで最後のシーンカット? それとも回想シーンか何かで腹切ってるところだけ映されて、その辺りの描写数秒でクランクアップなの?」
蘭丸「可能性としては……高いかもな」
秀満「呑む、今日は俺トコトン呑む! ンでべろべろに酔っぱらって撮影行ってやるー!」
蘭丸「楽しく飲む、はどうした?」
秀満「だってそんなオチ聞かされて落ち着いていられる訳ないジャン、いっそ他の役とかで良いのあったらなー、そっちやりたかったなー」
蘭丸「そうだな、これから目立ちそうなのと言えば……徳川殿とか、前田殿とか…」
秀満「扱い的には絶対徳川家康の方がデカいよね。 前田利家ってアレだろ、加賀百万石の前田利家サンでしょ、結構有名人だけどあの人若い頃相当ブイブイ言わしてたって?」
蘭丸「そうだな「槍の又左」の二つ名で呼ばれていたな、たしか」
秀満「それも結構カッコいいよなー、二つ名ってやっぱ男のロマンだろー」
蘭丸「そして信長様のお気に入りの、衆道のお相手だったという話もある…ハッ! 私の先輩か! 今度改めて菓子折り持ってご挨拶に」
秀満「だから信長様のプライベート遍歴はもういいんだよー!!」
秀満の叫びが夜の町に響き渡る頃、別の店では帰蝶による大酒呑み対決が行われていた。
帰蝶と同じペースで酒を飲み続け、最後まで立っていられたら勝ち、という簡単なルールである。
その勝負において帰蝶は斉藤利三、羽柴秀吉を楽々と下し、店内の他の客全てを酔い潰れさせた後、悠々と全く危なげない足取りで帰っていったという。
次の日、顔を青くしたまま現場に現れた秀吉と利三は「マムシの娘はウワバミだった」とだけ言い残して医務室へと駆けこんでいった。
蘭丸と秀満は、絶対に帰蝶と同じ席で飲むのだけは止めよう、と固く心に誓ったのだった。
こんな物がまさかの本編一話分と大差ない文章量になってしまうとは、少々自分でも計算外でした。
なお、こちらはあくまで端書きにつき、本編は予定通り明日5月2日更新予定ですので、この話で本編更新ペースが変わる、という事はありません。
次回は「巻の三「新体制」その1」を更新予定です。
直前の自己編集が終わり次第投稿いたします、どうかお待ち下さいませ。




