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第一話

 深く薄暗い森を抜けると突然視界が開けた。

 草原の緑と空の青のコントラストが薄闇に馴れていた目に痛い。

 小高い丘には色とりどりの花が咲き、木々の間を小鳥が飛び交う。

 春先らしい穏やかな風が優しく頬を撫でていった。

 その光景に魅入りかけた男は、後続の気配に気付いて我に返った。

 振り返ると今まさに森を出た仲間達が自分と同じ様に目を覆っていた。男は仲間に目配せをすると再び慎重に歩みを進めた。

 その先には誰からも忘れ去られた様な小さな集落があった。

 のどかな情景には不釣り合いな、物騒な物を手にした男達がゆっくりと確実に集落に向かって行った。




     ◆    




 簡素に舗装された小道を抜け、アキラは古ぼけた門扉をくぐった。

 手作りの表札には素っ気なく一言『病院』と書いてある。

 見上げれば病院とは名ばかりの堀っ建て小屋が一つ、生い茂った雑草に埋もれる様に建っている。ひび割れた白塗りの外壁が辛うじて病院の体裁を保っていた。

 外観に比べると意外に清潔な通路をしばらく進み、扉が開け放たれた部屋の一つでアキラは目的の人物を見つけた。

 部屋の隅に鎮座した巨大な機械の下から脚だけが出ている。

 アキラは開いたままのドアを軽くノックした。コンコンと安っぽい音が響く。

 機械の下から響いていた音が止まり、男が顔を出した。

「やあジル。弁当だよ」

 アキラは声をかけながら手にした包みを放った。

 男の歳は三十半ばと言ったところか。医者と言うよりは研究者とか技術者的な雰囲気をしているが、床に座って弁当の包みを受け取る姿は中々精悍で男らしい。アンバランスな印象を受ける男だ。

「アキラか。いつも悪いな」

 ジルは包みを差し上げると軽く礼を言った。弁当はアキラの妻が作った物だ。

「いいよ。こいつに比べたら弁当なんて安いもんだから」

 アキラは先程までジルがいじっていた機械に触れた。

「調子はどうなの」

「問題ないよ。丁度終わったところだ。今日中に再起動できるだろう」

 早速弁当を広げながら軽く放ったその言葉にアキラは苦笑した。

 王都アインツとの国境から八十キロ。名前さえないその村に男が現れたのは今から三年前の冬の事だった。

 深雪の中で行き倒れているのをアキラが見つけこの病院に運んだ。

 当時医者の居なかった村は住民総出で看病に当たり、奇跡的に男は一週間後に意識を取り戻した。

 ひとしきり礼を述べた男は医者の居ない村の現状を知ると助けてくれた礼に、と病院に住み込みで働き出した。

 そんな男を村は暖かく迎え入れた。

 男が流れて来た理由を問う者は誰もいない。

 はぐれものが最後に辿り着く。ここはそう言う村だった。

 アキラが苦笑したのは相変わらず素っ気ない男の口調が面白かったのもそうだが、何よりも整備していた機械の方にあった。

 病院には古い医療機器がいくつか並んでいたが、壊れても構造が複雑なそれは住民では手が出せず、数年前に医者が居なくなってからは壊れたまま埃を被っている状態だった。

 しかしジルは材料と道具が揃うとあっさりと直してしまった。

 まったくたいした男だ。

 ジルは機械の修理に対して一切の対価を受け取ろうとしない。

 一度村で修理代金を払わせてくれと頼んだら

「この貧村が支払おうと思ったら、それこそコイツを売り払わなきゃ追いつかんよ」

と、たった今修理したばかりの機械を軽く叩きながら言われてしまった。

 それでも何か礼をさせてくれる様に頼むと、ジルは渋々と言った様子ながら二つの提案をしてくれた。

 その内の一つがこの賄いだった。

 ジルは料理の腕前も中々で、始めて夕飯に誘われた時などお抱えの料理人でもいるのかとひどく驚いたものだった。

 なので料理が苦手な訳では無いのだから、昼飯くらいは手を抜きたいと言う事なのだろう。

 もしくは村の皆に気を使ってくれたか。

 村には妻帯者はあまり居ないので、毎日の弁当作りはアキラの妻の仕事になった。以前農作業での事故で脚を深く傷付けてしまった時、本来なら切断しなければならなかったその怪我をジルに治して貰った妻は

「ジルさんのお役に立てるなら」と喜んで引き受けてくれた。

 それ以来弁当は気合いの入ったものに変わり、必然的にアキラの弁当も豪華になった。素晴らしい事だ。

 ジルは弁当を口に運びながら、ふと思い出した様に、

「そう言えばシュミラはどうした?」

 と彼の一人娘の名を呼んだ。

「ああ。今日の練習は終わったから一緒に帰って来たよ。シャワーでも浴びてるんじゃないの」

 アキラはジルの対面に座ると弁当の包みを広げた。心なしかこちらの方が入れ物が小さい気もするが、まあ細い事は気にしないのが一番だ。

 ジルは

「そうか」と素っ気無く言うと弁当に顔を戻した。

 今年で三歳になったジルの娘のシュミラには魔法使の特性があった。元々リディア国の魔法使隊だったアキラは、彼女に初歩的な魔法を教えている。

 機械の修理代と治療費の代わりにジルが提案したもう一つの条件がシュミラに魔法を教える事だった。

 もちろん魔法使なんてそうそういるものでは無いので、これも必然的にアキラの仕事になったのだ。

 村人は申し訳無さそうにしていたが、彼らには世話になっているし、その分村の仕事やらを色々優遇してくれているのだからこれくらいは文句は無い。

「シュミラちゃんだけどさ、リディアかアルテイルの魔法使学校に申請したらどうかな?」

 シュミラにはどうやら戸籍は無いようだが、先天的な要因が強い魔法使は世界的にも人数が少ない。

 普通なら入国も断られる様な立場のシュミラでも天下御免で戸籍を発行して貰えるだろう。

 この辺りで魔法使の養成機関を持っている国と言えばアキラの故郷であるリディア、東の大国アルテイル。一番近いのはアインツだが、あそこは三年前に起きた内乱以降情勢が安定していない。

 そうなると先の二つくらいで、シュミラの将来を考えれば悪い話では無いと思うのだが。

 ジルは、

「シュミラは俺の本当の娘じゃない」

 それに…。そこまで続けたところで、しかし不意に言葉を止めた。

 その様子を訝しく思ったアキラが声を掛けようとしたその時、突然廊下から数人分の足音が騒がしく響いて来た。

 足音は乱暴に廊下を踏みしだくと、二人が居る部屋の前で止まり、一拍置いてから扉が強引に蹴り開けられた。

 立て付けの悪かった扉は蝶番を弾け飛ばしながら為す術無く内側に倒れ込んだ。

「っ!何だあんたら!?」

 扉を踏み付けてなだれ込んで来たのは三人の男。村の人間では無い。無遠慮な立ち居振る舞いは一般の人間のものでは無かったが、軍人と言う訳でも無い。

 アキラは顔をしかめる。単なるならず者か。

 男達はアキラの存在をきっぱり無視するとジルを取り囲んだ。

 互いに軽く目配せを送り合うと、中で一番体格の大きい男が一歩前に進み出た。

「あんた、ジルギア・アランドナウだな?」

 ジルは無表情に男の顔を見上げると、ただ一言

「ああ」と頷いた。

 その言葉を聞いた瞬間、男達の表情が一変した。

「ついに見つけたぜ!この人殺し野郎が!」

 怒声と供に振り上げられた棒が有無を言わさずジルを襲った。




 ゴツっと言う鈍い感触が自分が殴られた衝撃だと気付いたのは、床に倒れた後だった。

 額から流れ出た血が頬を伝う感触が遠い。

「何とか言えよこの人殺しが!」

 無言無表情のジルに業を煮やした男の容赦の無い一撃がジルの腹を頭を打ちすえる。

「おい!やめろ!」

 アキラは慌てて男の腕に飛び付いた。腕を絡めとられた男の肘が極められ身体が一瞬で固定される。

「いででで!何だてめえは!すっこんでろ!」

 肘を襲う激痛に顔を歪めながら男はアキラに怒声を浴びせる。

 男は掴まれた腕を強引に振りはらいアキラを睨んだ。

「てめぇこいつが何やったか知らねえのか!?」

「こいつは賞金首だぞ!大量殺人犯だ!」

 男達は次々にまくし立てる。

 身構えたアキラの背後に回った男がその後頭部に向かい棒を振り下ろした。

 アキラは素早く反転すると棒を片腕で受け止め、力を受け流すと同時に男の懐に速攻で踏み込みガラ空きになった胸に容赦無く肘鉄を叩き込む。

 一瞬で呼吸困難に陥った男の身体が崩れ落ちた。

 残りの二人が戦慄した様にアキラを睨む。

「てめえ…邪魔しやがるとただじゃおかねぇぞ」

「やってみろよ。それに…」

 アキラの言葉が終わるのとほとんど同時に男の一人が動いた。

 最初にジルに殴りかかった大男だ。

「もう手を出してるじゃないか」

「うるせえ!」

 樫の木の幹の様に太い筋肉に覆われた腕が、アキラの顔面を狙う。

直撃の寸前で拳をかわしたアキラはもう一度腕を絡み取ろうとするが、今度はそれを読んでいた男は逆にアキラの腕を掴み取る。

「ちっ!」

 アキラは腕を振り払おうともがくが、体格に差があり過ぎる。何よりその大男は三人の中で唯一、格闘技の素人では無かった。

 男の膝が腹に叩き込まれ、膝から力が抜けたアキラの身体が片腕で軽々と持ち上げられそのまま床に叩き付けられた。

「がはっ」

 先程倒した男のすぐ横にアキラが並んでうずくまる。

 立ち上がりアキラに声を掛け様としたジルの横面をもう一人の男の棒が打ち据えた。

「へ、人の心配してる場合かよ」

 アキラに最後の蹴りを食らわせて、大男もジルの方を向いた。

「…外道が…」

 ジルが漏らした呟きを聞き、男達は声を上げて笑った。

「ひゃははっ!俺達が外道だってよ!」

「外道ってのはな、人を殺しておいてこんな所でのうのうと暮らしてるお前みたいな奴の事を言うんだよ!」

 大男の蹴りがジルの横腹に叩き込まれ、決して小柄では無いジルの身体が弾き飛ばされる。

 さらに暴行を加えようと男達が棒を振り上げたその時、廊下からトタトタと幼い足音が駆け寄って来た。

 足音の主の少女は短い手足を懸命に伸ばし、

自らの身長よりも遥かに長い魔杖を抱き抱えてジルと男達の間に立ちふさがった。

「父ちゃまをいじめるな!」

「なんだこのガキ!?こいつの娘か!」

「のうのうと子供なんか作りやがって!」

 少女の登場で男達はさらに色めき出す。

「邪魔だ!」

 少女を強引に押し退けよう男が手を伸ばした時、男達は初めて少女が手にした魔杖と、透き通る瞳に気が付いた。

「このガキ、ま…魔法使か!?」

「う〜〜…」

 少女の左の瞳を、そして魔杖の先端の結晶体を赤い呪文の光が駆け抜けて行く。

 杖の先端の呪文が流れ消えて行った空間の周囲が淡い光を放ち始めたその時―

「やめろシュミラ」

 場の混乱に相反して冷静で静かなジルの声に少女がびくっと震える。

「あっ…」

 涙目でジルを振り返る少女。次の間には成長しかけていた光は弾ける様に消滅していた。

「脅かしやが…」

 言いかけた男の頭部に突然こぶし大の石が直撃した。

「ぶっ!?」

 驚いて振り向くとそこには騒ぎを聞き付けた村人達が手に手にあらゆる物を握り締めて集まっていた。

 次の瞬間には一斉にそれらが投げ付けられた。怒声と共に。

「帰りやがれこの都もんが!」

「ジルは俺達の恩人なんだ!」

「偉そうな口聞きやがって!どうせいぎたない賞金稼ぎだろうが!」

「くそっ!」

 頭を押さえてうずくまった男達はそう毒づくと、床で気を失っている男を抱え上げ村人を殴り倒しながら部屋から飛び出した。

「いいかジルギア!すぐに軍警察が貴様を捕まえに来るからな!」

「小娘!てめぇの親父は人殺しだ!」

「ちがうもん!」

 捨て台詞と少女の叫びを残して男達は走り去って行った。

 大歓声に沸き返る村人達。そもそも訳ありの者達ばかりだ。都者には良いイメージが無い。

 また貸りができてしまった。

 苦笑し、礼を言う為身を起こしかけたジルの脚に軽い衝撃。

 見るとシュミラが抱き付いていて、ズボンに顔を埋めていた。

「ちがうよね?とうちゃまはひとごろしじゃないよね?」

 涙目で自分を見上げる愛娘に軽く微笑みかけ、その頭をくしゃりと撫でた。

 三年前は目も開いて無かった赤ん坊が今では弱いながらも魔法が使えるまでになった。

 一つ…自分の役目は終ったのかも知れない。

「皆に話しておきたい事がある」

 尚も騒いでいる村人達に向かい、ジルは静かな口調で語りかけた。

 不思議と良く通るその声に院内は水を打った様に静まり返った。

 もう一度娘の頭を撫でてから

「シュミラにも残したい話がある。私が居なくなっても必ず伝えてくれ。不器用な…魔法使いの話を」

 ジルはとつとつと語り始めた。




―Crystalline-Cell "SAGA"―

【いつか観た蒼月】




■第一話


『襲撃の月夜』




 大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す。

 閉じたまぶたの先に敵が猛烈な殺気を放って立っている。

 もう自分には後が無いのは分かっていた。

 だから―

 ベルは瞳を開いた。

 一撃で決める。

 その決心の元、戦闘開始直後にベルが突っ込んで来た事に敵は明らかに動揺していた。

 ベルの頬から腕にかけた皮膚の下を赤い呪文の光が走る。

 光は突き出された掌の先まで達すると絶ち消え、呪文が溶けた空間が流れに合わせ脈動する様に圧縮され歪む。

「いけ!」

 圧縮された空間は解き放たれた瞬間に復元され、生み出された強力な衝撃波が目前の敵を襲う…はずだった。

 しかし敵はあっさり衝撃波を擦り抜けると手にした魔杖を回転させた。

 敵のウェーブした金色の髪が衝撃波にあおられてきらめく。

「うわわ!」

 ベルの魔法は単発で避けられたらもう為す術がない。逃げようと思った時にはとうに間合いは詰まっていた。

 敵の魔杖が円弧を描く。首筋の結晶体が赤く光る呪文を流し、呼応して杖に埋め込まれた二つの結晶体が光を宿す。

 次の瞬間、杖の先端が駆け抜けた空間が音もなく歪んだ。

 複数の結晶体によるハイリンク魔法。

 魔杖に埋め込まれた一つ目の結晶体の魔法で熱量を奪われた空間中の水分は一瞬で凝固し氷の固まりとなって宙に散らばる。

 返す力で杖が氷塊の表面を掠める様に振り上げられる。

 二つ目の結晶体の魔法で一点にだけ熱量を戻された氷塊は、水蒸気の尾を引きながら爆発的に加速し、氷の弾丸となってベルを襲った。

「くぅ!」

 ベルは手にしていた魔杖をでたらめに振り回し奇跡的に氷を弾いた。

 意外なベルの健闘に驚いて敵が目を見開く。

「今しかない!」

 ベルは右半身を突き出し杖を右手に構え、衝撃に備えるように腰を落とした。

 一際強く呪文が体を駆け巡り、激しい光の奔流が突き出した杖に流れ込んでいく。

 圧倒的な魔法を受けた小さな結晶体の中を幾重にも重なった呪文の文字列が目まぐるしく奔り、もはや真っ赤に染まった結晶体をパリパリと紫電が取り巻いていく。

 強力な魔法を察知して敵が魔法学フィールドを展開する。細身のその身体の周囲を淡い揺らぎが包む。

 臨界に達した結晶体がびりびりと震えながら空間に呪文を吐き出し、魔法文字で編まれた文法が、現実の事象を歪め始める。

「今度こそ行けぇー!」

 結晶体の輝きが一層増し増した次の瞬間、凄まじい衝撃と猛烈な熱と強烈な破砕音を伴って―


 杖が爆発した。



 持ち手の十センチから先が跡形も無くなる、それは見事な暴発だった。

「……は?」

 唖然とするベルの体に粉々になった杖の破片がパラパラと降り注ぐ。

 柄だけになった杖を握り締めて一瞬の自失。

 やばい!と気付いた時には敵はとうに動きだしていた。

 魔杖を棒術の要領で回転させながら体の周りを一周、空間に小粒の氷塊が無数に発生する。

「あー!ちょ…ちょっとタンマ!」

 ベルの叫びも虚しく次の一周で熱量を与えられた氷が散弾のごとくベルに打ち出される。

「おわぁぁ!」

 もはや見栄もへったくれも無く背中を向け全力でその…つまり逃げ出した。敵前逃亡だ。

 周囲から落胆の溜め息が聞こえて来る。

 その頬を手足を氷弾が浅く掠める。

「だあぁぁぁ!」

 背後で敵がさらに杖を振るう気配がした。

 あっと言う間にベルを追い越した弾丸の群れが、空中で一瞬揺れた気がした。

 その瞬間、遥か十数メートルの距離を経て敵が氷の弾丸に一気に熱量を叩き込んだのだ。

 ベルの視界が、そして頭が一瞬で真っ白に染まる。

 辛うじて魔法学フィールドを展開したベルを強力な水蒸気爆発が弾き飛ばした。

「うわああ!」

 空が見えて、校舎が見えて、地面が見えて、また空が見えた。

 不様に地面に転がったベルが気が付いた時は、既に敵の魔杖が目前に迫っていた。

 思わず目をつむった彼の肩に軽い衝撃があり結ばれていたリボンが千切れ…

「それまで!」

 試験官の声が響く。

 ベルは力尽きた様に芝生に頭を落とした。

 王立魔法使学園中等部二年、ベルトラル・リシェールの中間試験はこうして終わった。




     ◆    




 生まれ落ちる以前に体に宿り、目をつむって触れればその継ぎ目も分からず温もりも柔らかさも持ったそれは、決して傷つかず、体から切り離されれば世界のどんな鉱物より硬く、そして柔軟であった。

 人の細胞が…いや、『ヒト』そのものが結晶化したと言う仮説もあるそれは、いつしか結晶化した細胞=『Crystalline-Cell』と呼ばれる様になった。

 『ヒト』の結晶体たるクリスタライン-セルは人の持つ能力を最大限に宿していると言われている。

 それが『魔法学フィールド』であり『呪文』であり、そして『魔法』である。

 魔法学フィールドは自己防衛本能の具現化であり、魔法文字や呪文は思考であり、文字が流れるのは気の流れだと言われているが全ては仮説の域を出ない。

 分かっているのは魔法学フィールドは通常のあらゆる攻撃を無効化する障壁となり、魔法はそれに対抗し得る唯一のものである事だ。

 魔法学フィールドの鉄壁の盾に守られ、クリスタライン-セルを介して世界の事象を操作し奇跡を起こす『魔法』の力を操る彼らを人は魔法使と呼んだ。

 有史に初めて魔法使が登場した時、すでに魔法は完璧な理論として確立していたと言われる。

 何故人の体にのみ奇跡が宿るのか。何故呪文が赤い光となって流れるのか。

 そして、何者が『魔法』なる物を生み出したのか。

 それはいくつもの仮説と議論を経て、誰一人結論に至ってはいない。

 その長い歴史の中にあってベルの特性は極めて特異なものだった。

 全身の骨格が全て一つの結晶体である事。

 それは魔法学会を揺るがす余りに異常な特性だった。

 通常一つの結晶体が扱える魔法は一種類。

 どう応用しても基本的にこの特性は変えられない。

 結晶体に記憶した呪文を用いて世界を改変する。

 その記憶能力は先天的な結晶体の保有量に大きく左右された。

 乱暴な言い方をすれば小さな結晶体しか持たない者は弱い魔法しか扱えず応用も効かないし、大きな結晶体を持つ者は強力で多彩な魔法を繰り出せると言う事だ。

 全身が結晶体と言う圧倒的な保有量を持つベルがどれだけ強力な魔法使に育つのか。

 学会と軍の興味はその一点に絞られた。

 しかし…

 普通に生まれれば良かったのに、とベルはいつも思う。

 そうすれば身体と供に成長し続ける結晶体に押し潰されずに済んだのに…。

 ベルの強大すぎる可能性は、すでに通常の呪文を一切受け付けない。

 美しい歌声に優れた詩が乗る様に、強力な結晶体にはそれに見合った呪文を与えてやる必要がある。

 しかし『空間を圧縮する』などと言う異常な能力を機能させる呪文などどこにも無かった。

 中等部に上がってからの七回の実技試験で七連敗。

 優秀と言うには勇気がいる。

 かつて絶対兵器と言われ、初等部では首席だった彼が心を閉ざすには十分すぎる数字だった。

「…空が高いや」

 芝生に寝転び呆然と空を見上げる。

 吸い込まれる様に青い空に綿雲がふわふわと流れていく。

 尚も続く試験の騒音がどこか遠くで聞こえる様だ。

 吹き抜ける風が汗ばんだ体に心地良い。

 その時、芝生を踏み締めて一つの足音が近付いて来た。

 ベルが身を起こすより早く人影が暖かい日差しを遮る。

「ほらっ!いつまでも落ち込んでるんじゃないの!」

 そう言って見下ろすのはベルに劣らず特異な結晶体を持つ少女だった。

 腰まである髪が全て結晶体。

 その青く透き通る髪が逆光の中でキラキラと輝いている。

「うん…」


 力なく頷くベルの頭が音が出る程強く叩かれた。

「もうっ!それがダメなんだってば!最初は押してたじゃない。次はうまくできるでしょ?シャキっとしなさいシャキっと!」

 怒っているのか励ましているのかまったく分からない口調で彼女がまくしたてる。

「…分かったよシルフィー」

 少しだけ元気を取り戻したベルを見てシルフィーは安心した様に微笑んだ。

 ベルが落ち込んだ時はいつもそう、彼女が支えてくれた。

 いつか彼女を守れるくらい強くなりたい。

 誰にも言えない想いをベルは心に秘めていた。

「どうしたの?」

 見つめられていた事に気付いた彼女が小首を傾げる。

「何でもない」

 ベルは少し笑ってそう答えた。


―今では思い出の中でのみ色鮮やかでうららかな、春の陽気だった―




     ◆     



 王立魔法使学園は王都アインツの首都アルストロメリアの郊外に位置している。

 その広大な敷地内には学舎と訓練場、そして一部軍の研究機関も併設され、初中高等部合わせて千二百名からの学生を有している。

 各地から集められた学生は敷地内で全寮制にて管理され、研究所から直に試作兵器も供給される。軍属の魔法使を生み出す学園でありながら、そこは潜在的には王軍の戦闘能力をも凌ぐと言われる。

 アインツが世界最強と言われる所以がそこにあった。


 これからこの学園は消滅する。



 深夜四時。

 当直の警備員が手持ちの外灯で周囲を照らしながら巡回している。

 高い外壁に守られた学園は、一度忍び込めば学生とは言え千二百人を越す魔法使が待っている事から、通常侵入する者などは居ない。

「…ん?」

 ほとんど自動的な動作で見回りを続ける彼の視界の片隅にふと、何かが映った気がした。

 外壁に沿って植えられた街路樹と外壁の間。

 その影に半分溶け込む様にして立ちすくむ人影があった。

「誰だ!そこで何をしている!?」

 彼は警杖を握りながら慎重に男を照らした。

 身の丈は二メートル程か、妙に歪に盛り上がった筋肉を枯れ葉色のマントが包んでいる。

 顔は目深に被ったフードに隠れ口元しか見えない。

 その口元の両端が突然、きゅうっと吊り上がった様に見えた。

「え?」

 呆然とする彼の前で身体を覆ったマントの隙間から赤い光が染み出していく。

 それが彼が見た最期の光景だった。




 凄まじい爆音と衝撃が学園全体を激しく揺さぶった。

 壁は軋み、窓ガラスが振動で次々に砕け散る。

「な…なんだ!?」

 飛び起きたベルはベッドから転げ落ちる様にして窓に飛び付いた。

 学園の敷地を一直線に貫くメインストリートに面したベルの部屋からは、途中から分岐して中庭に続く至道も良く見えた。

 その中庭の辺りから炎と煙が立ち上ぼっている。

 火事!?そう思った矢先、その炎を背に受けて一つの人影が中庭から現れた。妙にゆっくりとした動きでメインストリートをベルの寮の方に向かって歩いている。

 逆光に浮かぶその姿は黒く塗り潰された様で顔をはっきり確認する事が出来ない。

 それでも目を凝らした時、ベルはようやくその人影が何かを腕に抱えている事に気が付いた。

 ちょうど人間程の大きさのそれは…

「ひっ!?」

 違う、人間『程』の何かでは無い。人間その物だ。

「な…何が…」

 呆然とするベルの眼下を死体の様に脱力した人間を抱えた人影が悠然と歩みを進める。

 その時、各寮から数人の魔法使が飛び出した。

 教官達だ。ベルと同じ様に飛び起きたのか、寝間着姿のままの者も居た。

 教官達は人影を素早く取り囲み何事か警告している様子だったが、次の瞬間一斉に人影に攻撃を加えた。

 放たれる魔法弾が人影を覆い尽くす。

「くっ!」

 顔を覆ったベルのその頬を熱気がちりちりと焼いた。

 数十秒間の一斉攻撃が止み、人影を隠していた煙が晴れていく。

 至近距離からの魔法弾の直撃。

 普通なら跡形も残らず消滅している筈だ。


 しかし―

「そんな馬鹿な…」

 立ち込める煙の中から、人影は何事も無かったかの様に歩み出た。

 教官達は恐れる様に人影の動きに合わせて後退して行く。

 人影が腕に抱えた人間を投げ捨てたのを合図にした様に、教官の一人が直接切り込もうと飛び掛かった。

 魔杖の先端が赤く輝き魔法が発動するその瞬間、人影の口元が歪むのが見えた気がした。

 破れたマントの隙間から赤い光が線の様に染み出して来て…

 視界が真っ白に染まった。


 先程とは比べ物にならない衝撃と爆風が、ベルの身体を襲った。

「うわぁぁぁ!」

 窓枠にしがみついたベルの髪を爆風が激しく掻き乱す。

 ようやく目を開けた時、そこに居た筈の教官の姿は無く、地面には一直線に深い溝が刻まれていて、そして、その溝の先に建っていた筈の西寮は完全に倒壊しその形を失っていた。

「そ…そんな…」

 後は言葉にならなかった。

 教官や寮生がどうなったのか。考えたくなかった。

 この時になって思い出したかの様に膝が震え始めた。

 立っている事もできずベルは頭を抱えて座り込む。

「何で…何でこんな」

 涙を浮かべたベルの視界にふと、何か光るものが掠った。

 はっ、として顔を上げると、先程の爆風で部屋のドアが外れ廊下の壁が見えた。

 恐る恐る顔を出すと廊下の端に小さく、走っていく人影が見える。

 キラキラと輝く長い髪を振り乱して。

「シルフィー!行っちゃダメだ!」

 しかしすでに彼女は声の届かない距離まで行ってしまっていた。

 ベルは慌てて部屋を飛び出した。

 その一瞬だけ恐怖を忘れていた。




 玄関から飛び出した勢いもそのままに、シルフィーは男に向かって走った。

 予想通り完全に男の背後を奪っている。

「いける!」

 シルフィーは束ねていたリボンを解く。

 長い髪が風に舞い空中に広がる。その髪に赤い呪文の光が流れていく。

 結晶体とはある意味呪文の記憶媒体だ。

 一つの結晶体には一種類の系統の魔法しか記憶できない。

 ベルの様に化け物じみた特性を持つ者でもその原則は変わらない。

 シルフィーは違う。

 数万本の頭髪にそれぞれ別種の呪文を記憶し、それを組み合わせる事で多種多様な魔法を魔杖の補助無しに単独で扱える世界でただ一人の魔法使。

 側頭の髪は安定翼の様に水平に伸び、後頭の髪は細く捩じれ合って集まり、筒状に丸まって内側に取り込んだ空気を圧縮する。

 限界まで圧縮した空気に小さな発火点を与えると、空気は爆発的に膨張し噴き出す。

 ジェットエンジンの原理で加速したシルフィーの体は地面を飛ぶ様に駆け抜けた。

 その間髪は眩しい程の光りを流し続け、青く透き通った美しい髪が赤く染まっていた。

 血の赤。

 『紅の戦乙女』と彼女を呼ぶ人は呼ぶ。


 死角を突いているはずの男の背中の一部が突然光り、次の瞬間発生した火球がシルフィーを襲った。

「!」

 真横にローリングし、間一髪でそれをかわした。

 地面を蹴って体勢を強引に整える。

 背後で地面に触れた火球が爆発する。

「後ろに目があると言うの!?」

 冷や汗が背中を伝う。だが立ち止まってはいけない。

 もう間合いは詰まっていた。

 炎を噴き出していた髪が解け、再び寄り集まって形成した銃口が三つ、シルフィーの頭上から男をぴたりと照準した。

 振り向き様に男が左腕を振るう。

 腕が抜けた空間が揺らぎ次の瞬間シルフィーの眼前に炎の壁が立ち塞がった。

「無駄な事を!」

 形成した銃口から速射砲の様に撃ち出された氷弾が炎の壁にぶつかり、一気に気化して人一人分の穴を穿った。

 その穴を抜けてシルフィーは男に肉薄する。

「食らえ!」

 右側頭の安定翼が上下に三枚に分離し、髪を覆った荷電粒子の光りの軌跡が男の影を三つに切り裂いた。

「!?」

 シルフィーの顔が驚愕に歪む。

 切り裂いたと思ったのは男の残像だった。

 どう考えても人間が避けられるタイミングじゃなかったのに…

「人間じゃない!?」

 動揺しながらも彼女の反応は迅速だった。

 翼も銃口もバラバラに解き放ち、髪を空中に広げる。

「当たれ!」

 背後の男の壮絶な気配に向かって氷の段幕を張り、荷電粒子砲で十字になぎ払いながら距離を置く為に地面を蹴った。

 身を捻りながらもう一度翼を広げ男に相対した時、シルフィーは息を飲んだ。

 地面にも校舎の壁にも氷弾と荷電粒子砲の跡が深々と残っているのに、男の周りの空間だけ円形に切り取った様に無傷で…

 その全身が真っ赤に染まっていた。

「くぅっ!」

 とっさに結晶体を総動員して体を髪で覆い、魔法学フィールドに意識を集中した。

 シルフィーの周りを猛烈な熱が舐める。

 辛うじて魔法は無力化したが、その衝撃が彼女の小柄な体を弾き飛ばした。

 壁に叩き付けられたシルフィーは遠のく意識の中で一人の少年の姿を捉えていた。

「…ベル…来ちゃだめよ…」


 シルフィーを見失ったのはほんの数十秒だったと思う。

 その僅かな間に勝負は決してしまっていた。

 魔法が突き抜けた建物は、断面がガラス質に変質しそれが超高温度だった事を物語っている。

「ね…熱束砲だ…」

 ブラスターとも呼ばれる最高位魔法の一つだが複雑で膨大な呪文が必要なそれは、専用の設備と一部の魔法使が揃って始めて発動可能と言われている。

 少なくとも魔杖も持たない人間一人に扱える代物では無い。

 辛うじて直撃を避けたシルフィーがぐったりと壁にもたれているのが見える。

 シルフィーとの戦いでマントの剥げた男は今やその異形を余す事無くさらしていた。

 手足の長さ形は微妙に事なり、歪に盛り上がった筋肉の所々にいくつもの結晶体が埋め込まれている。

「ぅ…人間じゃない」

 ダメだ、僕にかなう訳ない。

 恐怖で無意識に後ずさったその時『パキッ』

 はっとして足下を見るとベルの脚が小枝を踏み抜いていた。

 ごく小さなその音は、学園が燃える炎の音の中で、妙にはっきりと、絶望的に鳴り響いた。

 しまった!そう思った時にはもう男の顔が目の前まで迫っていた。

 その死体の様に蒼白な顔に埋まった濁った瞳と一瞬目が合い―

 次の瞬間身を沈めた男の蹴りがベルの胸を直撃した。

 痛みより先に衝撃が身を貫く。

 一瞬で吹き飛ばされそうになった意識が地面に落下した瞬間、思い出したかの様に訪れた激痛と衝撃で強引に引き戻された。

「がはぁ…ぁ…ぅぁ」

 蹴られたのが肋骨の上でなかったら即死だった。ダメージで呼吸困難に陥り、喘ぎながらも何とか男から離れようとベルは地面を這いずる。

 口角が耳まで裂ける様な残虐な笑みを浮かべた男の全身を、まだらに埋め込まれた無数の結晶体の呪文の光が禍々しく、何十人もの命を吸い取っていくその炎の照り返しよりもなお紅く男の異形を浮かび上がらせる。

「うわぁぁぁぁ!」

 ベルの悲鳴を男の咆哮が掻き消す。

 男の呪文の光が一際強く輝きその周囲の空間が揺らぎ、熱束砲の魔法が放たれるその直前。

 頭を抱えてうずくまった自らの身体を呪文が駆け巡った事に、そして自分と男との間に一つの人影が割り込んで来た事に―

 ベルは最後まで気が付かなかった。

 それは全て遅かった。

 割り込んで来た人物の周りに張られた魔法学フィールドが空間を奇妙に歪めていて、そのフィールドのど真ん中…

 キラキラと輝く結晶体の髪を持つ、その髪と両腕を自分を守る様に広げた少女の身体と、今まさに魔法を放とうとしていた男の身体を一直線に貫くその光は。

 何故か自分の身体から伸びていた。

「――!!」

 伸ばした腕の先で少女の身体が力無く崩れ落ちて行く。

 取り残される様に広がった髪の向こうで男も倒れて行くのが見えた。

 何が起きたのか。何をしてしまったのか分からない。

 ただ…何もかもが手遅れだった。

「っ…シルフィー!」

 慟哭がベルの喉を突いた。




 シルフィー・ノーマ・サラムディーネはベルトラル・リシェールの事が好きだった。

 だから熱束砲の射線に身をさらした事に後悔は無かったし、身を貫かれた今もそれは変わらなかった。

 ただ…ベルが泣いてしまうだろう事がとても悲しい。

 景色が揺らぐ。

 それにしても驚くべきはベルの能力だ。

 直撃で無かったとは言え熱束砲を退けた程のシルフィーのフィールドを表裏二枚貫いてなお男のフィールドを突破する程の威力を持っていた。

 大丈夫。あなたはすごい魔法使になれるわ。

 地面がぐらりと揺いだ。頭が…重い。

 斜めになった景色の中で燃え落ちる校舎が見えた。

 大変だ…皆で直さなきゃ。

 そう皆…ベルあなたは良くやったわ。

 私の大好きな皆を守ったんだから。

 地面が急速に近付いて来る。

 どこか遠くから泣き声が聞こえる。

 あぁ…ベル。泣かないで。

 どうしたの?

 またいじめられたのかな?

 大丈夫あなたは私が守ってあげる。

 ずっと…ずっと…

 獣の唸り声の様な声が聞こえる。

 ベル…奴が逃げるわ。私の大好きな皆を沢山殺した奴が…

 奴…?

 奴っ…て何だっけ?

 どさ、と言う自分が倒れた音がどこか遠くで聞こえた。

 何の音?

 源を探そうと動かした瞳に夜空が映った。

 月が蒼いわ…

 シルフィーの意識は漆黒の闇に飲まれ、そして永遠に途切れた。




 こうして死傷者50名以上と言う未曾有の大惨事となった学園襲撃事件は幕を下ろした。

 犯人の男は学生の一人に瀕死の重傷を負わされながらも逃走。

 アインツは事件を秘匿とし、関係者にも箝口令が引かれた。極秘裏に緊急警戒網が引かれたが犯人の行方はようとして知れなかった。

 司法局は組織的なテロ行為の可能性を示唆。捜査を進めている。


 『シルフィー・ノーマ・サラムディーネ』含め数名の遺体は研究の為、同敷地内の研究機関に収容された。




 そしてベルトラル・リシェールはその日以来学園から姿を消した。


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