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大会に向けて(1)

卒業まであと1年もない。

この期間を悔いのないように過ごすための1つ目の壁、いや、楽しみがこの陸上大会。

この夏休みの大会を全力でやりきって、そこからは受験モードに切り替えて、一気に高校だ!

......というプランだが、現実はそううまくはいかないかも知れない。

僕は、黒板に書かれた意味不明の数式を機械のようにノートに書き写す。

そろそろ、授業にも苦手な部分が増えてきた。

駿介に劣りを取らないようにと頑張ったが、終わりが見えてきた。

教科書を閉じて、僕はため息をついた。

すっかり、自信を失ってしまった。


「やっと終わったー。ようやく、部活の時間だ」

隣の席の雅紀が立ち上がった。

「おい、翔悟。ため息なんかついてどうした?

今は、部活に集中するんだろ?」

「......そうだな!お前の言う通りだ」

頭の良くない雅紀に言われるのも気に食わないが、確かにそうだと思えた。


今は、部活に打ち込もう。

僕は、ジャージに着替えてグラウンドに向かった。


グラウンドでは、雅紀が一人でストレッチをしていた。

今日は早めにグラウンドに来たつもりだったが、雅紀はさらに早かった。


「ヤル気満々だな。雅紀」

「当たり前だろ。最後の大会も近いんだ。全力で練習しなきゃな」


雅紀も僕と同じだ。

彼が高校、受験のことまで考えているかはわからないが、最後の大会にかける思いは同じだということがわかった。


二人でストレッチを始めていると、少しずつ部員が集まってきた。

「あれ、今日は二人、すごく早いね」

麗奈が、小走りでグラウンドにやって来た。


「そろそろ、みんな集まったかな。

...あれ、駿介がまだ来てねーな」

「まあ、まだ時間じゃないしな...体、温めとこうぜ」

「そうだな」



「ごめん、みんな。

遅くなっちゃった」


部活は4時から。いつもは10分前にはグランドに来る駿介が今日はギリギリだった。

「おいおい、みんなヤル気満々なのに、キャプテンがそれじゃあ困るッスよ」

「ごめんな。じゃあ、早速練習始めるぞ」

「おう!」

やはり、キャプテンの駿介が来ると気が引き締まる。

駿介を中心に、毎日練習をしてきた。

そんな部活も夏の大会が最後かと思うと、少し寂しく感じた。

でも、悔いが残る形では終わりたくない。

練習は必死で取り組んだ。

すると、その分だけ記録も伸びてきた。


今日の100メートルの記録は11秒15。

「よし、自己ベスト更新だ!!」

僕はストップウォッチを見て思わずガッツポーズをとった。


すると、向こうが何やら騒がしい。

「おお!!よっしゃー!」

向こうで拳を上げているのは雅紀だ。

どうやら、雅紀も自己ベスト更新。

周りで見ていた部員も感心するほどの良いフォームで新記録。

雅紀もかなり嬉しそうだ。


「へへ、どうだ翔悟」

「ふん、俺だって、100メートル新記録だぜ」

「俺はフォームも完璧。お前とは比べ物にならないな」


雅紀は記録を自慢しはじめた。

その気持ちもよくわかる。

こうして、お互いに高め合ってきたのだ。


駿介もこっちに来た。

「おお、二人とも新記録か。

雅紀の幅跳びの記録には俺でも勝てないな」

「へへ、そうだろ」

「翔悟の100メートルのタイムもすごいな」


......でも、駿介の自己ベストは11秒06。

まだ僕のタイムじゃ勝てない。

でも、へこむようなことではない。

また駿介の記録に近づくことができた。

「明日はきっと抜かすから」

心の中でそう呟いた。

今日の練習はここで終わり。

みんなは明日に備えた。



次の日、そして次の練習でも、みんなの気持ちは変わらず、僕も少しずつ、コンディションを上げていった。

日がのびてきて、7時近くまで練習に励んでいた。


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼


少しずつ暑い日が続くようになってきた。

中学最後の大会に向けて、僕たちは精一杯部活に励んだ。

毎日額から汗を流しながら練習していた。


少しずつ記録が伸てきた。

僕だけじゃない雅紀や麗奈も記録は伸びていた。


そんな中、一人記録が伸び悩んでいる人がいた。

キャプテンの駿介だ。気づいたのはボクだけかも知れない。

駿介の様子がいつもと違う。



「おー。またタイムが伸びたな翔悟」

駿介はストップウォッチを片時も離さずにみんなの記録とコンディションを把握していた。


しかし、ある日の部活の終わりに自分のタイムも計りたいと僕に記録を頼んできたので、100メートルのタイムを計った。

記録は12秒01。

いつもの駿介なら11秒台は安定だった。

珍しい記録に少し驚いた。

「部活のみんなは記録が伸びてんのに、肝心のキャプテンはどうした?」

「はは、今日はちょっと足の調子が良くねーから......」


駿介は笑ってごまかしていた。

僕にはわかる。足の調子が悪いのにわざわざ記録を計ってほしいなんて言わないはずだ。


あのときの僕にはそれしかわからなかった。

でも、今の駿介を見ていたら少しわかったきた気がする。

駿介はキャプテンとしての責任を感じて...

そして、みんなの記録を見て焦りをも感じているのかもしれない。

一人で何かを抱え込んでいる。そんな気がするんだ。


ちなみに、雅紀は3ミリの坊主頭です(笑)

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