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死神と呼ばれる者と世界を滅ぼす黒き翼  作者: 蒼聖石
第2章 人の心は百色の如く
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国内、人に囲まれた少年

「先生はもともとあんな丁寧な話し方じゃなかったんですね」

「そう。ファウストへの恨みを忘れないためにわざわざ変えてたの。能力のあの炎も恨みからきたもの」


―じゃあ先生があのときあんな顔をしたのは…

『そんな理由があったからだな』


「で、ファウストに会った後何があったんですか?」

「ちょっと我を忘れちゃってね……気づいたら腕を斬られてた。それから冬馬に傷口焼かれて、ユウを地下室に運んだ後はわからないの」


 痛かったな、あれ。とそのときの痛みを思い出したのか、春は肩を手を置く。ロイはまだ不満そうな顔をしていたが、それ以上の追及をしようとはせず運転に集中していた。

 車での移動は歩きより遥かに早く、歩いて二日くらいと見積もっていた国には夕刻に辿り着いた。


「ん~~~~、疲れたあ」

「開門申請をしてくるので少し待っててください」


 車を降りてロイは国壁につけられた大門、その横の扉に入っていった。ユウも荷台から降りて遥か上空までそびえる国壁を見上げた。


―国に来るのは初めてだね

『ああ。それにしてもでかいな』

―魔獣は大きいからねえ

『お、開くぞ』


 石と石が擦れる鈍い音を立てながら大門が徐々に開かれていく。戻ってきたロイはすぐに2人を車に乗せてエンジンをかけた。


「極力、開く時間を縮めたいので、急ぎますよ」

「わかってるわよ」


 大門が車一台が通れるほどに開かれるとロイはすぐにアクセルを踏み、国内へと入っていく。車が通りきるとすぐさま大門は閉じられた。

 大門近くの駐車場に車は停められ、3人は降りたが、ユウはその場に座り込んでしまった。


―なんだろう…頭がズキズキする…

『人にあてられたんだろ。国に入るのも初めてで、これだけ多くの人間が近くにいるのも初めてだしな』


「大丈夫?酔ったの?」

「い、いえ…国に入ったのは初めてなので……」

「運んでもらう?」

「大丈夫です…治まってきました」


 頭を押さえながらもユウは立ち上がった。春は心配だったが本人がいいと言っているのに手を出すのは余計なお世話だと思って手を貸すことはなかった。その間にロイは荷台からバイクを降ろしていた。


「ふう……それじゃあ、これを修理屋に運ぶ途中で俺の家に案内しますよ」

「あ、病院ある?一応、この腕診てもらわないと」

「ありますよ。修理屋に運んでから案内します」


 大通りを三人で歩いていき、路地に入ってすぐの家に案内された。バイクからトランクを降ろすと、だいぶ軽くなったのか、ロイが安堵の表情を浮かべる。適当に寛いでて、と言い残し、ロイと春は出かけていった。

 家に一人取り残され、どっと疲れが出てきたユウはソファに倒れこんだ。


―まだ痛い……

『どんな風に痛いんだ?』

―なんか、頭の中に流れ込んでくるような感じでそれが溢れ出しそうな感じ……

『ふむ……。まあ、とりあえず寝とけ。それだけでもだいぶ変わるだろ』

―うん………そうだね


 一言だけ返すと、ユウはすぐに眠りについた。

 ユウが目を覚ますとすでに外は真っ暗になっていた。


「起きたか。だいぶ疲れてたみたいだな」

「すみません…」

「気にすんな。旅ってのは疲れるもんだからな」


 ロイの笑った顔は不思議とユウの心を安心させ、頭の痛みも引いていった。そのとき、扉が開き、春が入ってきた。


「ただいま~。いやぁ、わかってはいたけどドヤされたわぁ」

「そりゃそうでしょうよ。腕を切られた応急処置が焼くだなんて」

「ユウのおかげで化膿止めは出来てたし、ちゃんとした薬もらって終わりだったけどね」

「薬作れんのか?器用だなあ」

「傷薬と化膿止めくらいですよ」

「いやいや、十分だろ」


 よしよしとロイが頭を撫でるとユウは照れて手を払いのける。それが面白いのか、ロイは無理やり撫で続ける。

 その様子を笑いながら見ていた春はソファに倒れこむと、ご飯まだあ、とだらけていた。


「できてますよ。食事にしましょう」


 奥の部屋に通されるとテーブルの上にはすでに食事が並べられていた。ろくなものを食べていなかったユウと春はそれを見た瞬間に腹がなり、すぐに食べ始めた。


「これからどうするんですか?」

「わたしは一回本部に戻って義手でも作ってもらうわ。ユウは聖都に行ってもらう」

「聖都……俺苦手なんですよね、あそこ」

「わたしもよ。でも死神の長を継ぐにはあそこに行くしかないし」

「まあ、各国に部隊員はいますし、順繰りに案内していけば……」


 春の様子を伺うように横目で見たロイは小さく溜息を吐いた。


「ダメ……ですよね」

「そうしたいならわたしを本部まで送る役になるけど?」

「あ~……そっちで。給料が減るより嫌ですよ、あそこは」

「じゃ、そうゆうことで」

「……そんなところに行かなくちゃいけないんですか?」


 不安そうなユウを見て、二人は苦笑いを浮かべ、隣の春が頭を撫でた。


「危ない場所って訳じゃないのよ。ただね……」

「あそこの人間はなんと言うか…おかしい、ですよね」

「そうなのよ。……こればかりは実際に見ないとわからないわ」

「とりあえず危険なことは一切ない。異常にね」


 食事が終わると、ロイはさっさと食器を片付けてリビングへと戻った。それに続けて春とユウも食事を終えて、リビングへと戻った。


「ロイ。あんた、仕事はちゃんとしてんの?」

「してますよ。今現在しっかりと」


 ソファに寝転がりながら本を読んでいるロイに春が怪訝そうな目を向ける。そのとき、窓がガタガタと揺れた。


「ん。本業務開始の時間か」

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