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死神と呼ばれる者と世界を滅ぼす黒き翼  作者: 蒼聖石
第2章 人の心は百色の如く
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車中、己の罪を語る女

「冬馬があなたを気絶させる少し前から話すわね」

「はい」

「と言っても、わたしもほとんど分からないんだけどね……」


 再び走り出した車内で春がまず語ったのは、あの魔獣の襲撃が冬馬の差し金であること。そして付近に悪魔の気配を察していたこととユウの安全を最優先するために気絶させたことだった。


「わざとですか……」

「やめたほうがいいってわたしは言ったけどね」

「気配については覚えがあります。怖い顔をしてる時がありましたから」

「それで、その後何があったんですか?春さんほどの人が悪魔程度に簡単に腕をとられるとは思えませんね」

「ファウストが……いたのよ」


 ファウストの名前が出た瞬間、ロイはハンドルを叩いた。その目はさっきまでの明るい雰囲気はなくして深い恨みを湛えている。


「誰ですか?」

「裏切り者だっ……隊長のっ、冬馬さんの家族を奪った張本人だ!」

「ロイ、ちょっと違う。直接手にかけたのはわたしよ」

「それはあいつのせいでしょうっ」

「どうゆうことですか」


 春にとってはあまり思い出したくない記憶であると同時にあまりはっきりしていない記憶で、冬馬にもしっかりとした説明をしたことがなかった。


「8年前、わたしはファウストに呼ばれたわ……」




 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *




「わたしあいつ嫌いなのになぁ……でも断る理由もないし」


 ファウストの部屋の前まで来たとき、わたしはこれまで感じたこともないくらいに最悪な気分だったけど、理由もなく断るというのは仁義に外れる。と、意を決して扉をノックしたの。


「来たわよ」

「ああ、どうぞ。入ってください」


 扉を開くとファウストはソファが座って、お茶を用意して待ってたわ。


「さあ、どうぞ。なかなかに長話になると思いますから、まずは紅茶を一杯どうぞ」

「……ありがとう」


 ファウストと対面に座って、紅茶を飲むとなかなかに美味しかったの。だからわたしはすぐに飲み干したわ。

 それからファウストと話したのは部隊運営に関すること。2人とも部隊内でも要職についているからこういった話をするのはさして珍しいことでもなかったわ。でも、こんなことを今更話す必要があるのかしらと疑問に思った時、目の前が霞み始めたの。


「あら……なにこれ…」

「やっと効きましたか。なんであなたはそう頑丈に出来てるんですかね」

「あんた…なにして……」


 ファウストが一本の指揮棒を懐から取り出し、意識が混濁し始めたわたしの前で一振りした。そこまでは覚えた。

 わたしはそれからずっと眠っているように夢を見続けていたの。幼い頃の記憶を思い返すような夢。そしてその夢から覚めると、目の前で一軒の家が燃えていたわ。


「え……なに、これ…?」

「おいっ!こっちだ!早く水を持って来いっ!」

「お、おい…あの女、松明持ってやがるぞ!」

「へ……?」

「捕まえろっ!そいつがやったに違ぇねえ!」

「やっ!何!?なんなの!?なんなのよっ!」


 わけの分からなくて抵抗したけど、男4人にかかられちゃって、なす術もなく捕まって牢へと入れられてしまったわ。

 牢の中で考え続けたわ。自分が何をしたのか。してしまったのか。でも考えても考えても出てこなかった。


「春」

「あ、冬馬……。ねえ、わたし…なにをしたの?」

「覚えて………ないのか?」


 冬馬は何かを考えるように思い詰めた様子だったけど、何かに気がついたのかわたしに質問してきたの。


「春、お前ファウストに呼ばれてたな?」

「え、そうだっけ?」


 そのとき、わたしはファウストと一緒にいた記憶がなかった。きっとあいつの能力で消されたのね。でもそれが冬馬の推測の決め手になったみたい。


「春、お前の無実を証明してやる。だから…何をしたかを知っても、けして折れるな」

「どうゆうこと?」


 数日してわたしは牢から出されて副隊長の前に引き出されたわ。本来なら警察に捕まってるはずだけど手を回してくれたの。

 そこには現地にいたほぼ全部隊員がいて、わたしを白い目で見てた。今考えても体が震えるわ。


「春、お前がなぜここにいるのか。わかっているか?」

「………わかりません」

「白々しいっ!お前は隊長、或馬(あるま)殿の家を焼き払い、隊長だけでなく奥方まで亡き者したのだぞ!」


 或馬、冬馬のお父さん。前任の死神部隊の長だった人。わたしはその人に手をかけた。きっと顔見知りのわたしなら警戒されることはないの踏んだのでしょうね。


「そんなっ!わたしはそのようなこと……!」

「黙れっ!目撃したものは多数おるのだぞ!」

「副隊長」

「……どうした、冬馬」


 他の隊員に混じっていた冬馬が一歩に前に出て副隊長に進言したの。その横にはファウストもいたわ。


「調査役筆頭のお力をお借りしたいのですが」

「なにゆえか」

「怪しき人物を心得ております」

「ならぬ。あの方はご老体で、能力は使わせられぬ」

「ちっ…御託並べてんじゃねえっ!とっとと出しやがれ爺!春に意思はなかったつってんだよ、俺は!………逃げんじゃねえぞファウスト!」


 そのときファウストは逃げ出そうとしてたみたいだけど、冬馬に名指しされて注目を浴びたから逃げれなくなったの。

 副隊長も冬馬の気迫に押されて調査役筆頭を呼びに行ったわ。調査役筆頭の能力は真偽眼。問いに対する答えの真偽を見定める能力だったわ。


「筆頭、お辛いとは思いますが、どうか力を貸していただけますか」

「ほっほっ、構わぬよ。或馬の息子の頼みとあっては断れぬし、断らんよ。して、誰の真偽を確かめる?おそらく2人程度までしか見定められんよ」

「十分です。ではまず、春から」

「ふむ……春よ、お主は己のしたことについて一部始終を覚えておるか?」

「いいえ、全く」


 筆頭の問いに正直に答えたわ。筆頭はわたしの顔をじっと見つめると、驚いた顔をしてから笑ったわ。


「おかしいのう。この子は本当に何も覚えておらぬ」

「そんなまさかっ」

「筆頭の目をお疑いになるのですか副隊長」

「くっ…」

「さて、冬馬よ。次は誰に問いをかけようかの」


 冬馬は一回頷いて、衆人環視の状態で逃げられなくなっていたファウストをわたしの隣に引きずり出してきたわ。表面上は涼しい顔してたけど内心は焦ってたでしょうね。


「ふむふむ、なるほど。つまり冬馬よ、お主はこう言いたいのだな。

 ファウストは素質がありながら能力を会得していなかった。しかし、実は皆の知らぬうちに能力は会得しており、それは他者を自在に操る能力なのではないか、と」

「その通りでございます。変わらぬご慧眼、心服いたします」

「世辞は良い。それでファウスト、どうなのかね?」

「………いいえ、そのようなことはありません。事実無根です」


 今度はファウストが見つめられた。そして真偽が見定め終わったのか、筆頭は今度はわたしを見てきたの。最初は怖かったけど、目を良く見たら優しいけど、悲しそうな目だった。いずれにしろ手をかけた事実は変わらないことに悲しんでくれたのかもしれない。


「己の心はそう簡単に偽れぬぞ、ファウスト……こやつは嘘を吐いておるっ」

「ちっ!」

「捕まえろ!」


 追い込まれたファウストは懐から小瓶を取り出して地面に叩きつけたわ。そしたら煙が立ち込めて、目が痛くて涙が止まらないの。そうして足止めされてるうちにファウストは姿を消したわ。

 


 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *



「それから、わたしは釈放された。皆は能力で操られていたのでは仕方ない、って言ってくれたけどわたしはそんなに切り替えられなかったわ。

 これがわたしが冬馬の両親を手にかけたという話とファウストと言う人物のことについて」

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