ある冬の朝の会話
ただひたすら甘ったるい話。寒気注意!
最近めっきり寒くなって来た。
いくら関東と言えど、あんまり寒かったら雪が降るし。降ったら降ったで、電車は止まるし渋滞はすごいし。
雪は好きだけど、寒いのは嫌い。
肩口が寒い…。
半分眠りながら、もそもそと肩口にかかっていなかった布団を手繰り寄せ、枕に顔を埋めて私は再び超軽量・ふわっふわの高級羽毛布団に包まれながら眠りの世界へ誘われようとしていた。
どうせ今日は日曜日。ナイトもいないことだし、もう少しだけ寝てても文句は言われないはず。
だって、隣の人も起きる気配ないし。
「…寒いか?」
「んーん、もうあったかい。」
布団ほとんど私の方に持って来ちゃってるしね。
って、あれ…先生、起きてたんだ。
ギシッと隣で寝ていた先生が寝返りをうつのがわかった。
ごめんね、先生。寒いでしょ。と言う前に、がっちり背後から抱きつかれた。あー…背中があったかい…。
「冷えてるな。」
「今日寒いよね…。雪降ってたりして。」
「雪が降るまでは寒くないだろ。だけど、お前寒いの苦手だよな。冬になったらすげぇ寒いシカゴにいたくせに寒いの苦手って…」
シカゴ育ちでも寒いの苦手なんですー。それにシカゴに居た期間ってほとんど覚えてないくらい小さかったし。ほぼ日本育ちだって言っても過言じゃないの、よくわかってるくせに。
それより、耳元で喋るのやめてよ。くすぐったいし、何か嫌な予感が…。
私の嫌な予感が当たったのか、先生が私の首筋に顔を埋めながら囁いた。
「あっためてやろうか。俺が。」
「ケッコウデス。」
「遠慮すんなよ。」
「してないーーー!!や、やだ、ちょっ…!やっ…ひぅっ!……さ、寒い!バカバカ!!」
なんで私の所だけ布団剥ぐのーー!
エアコン付けてない室内は寒いんだよ?雪国と違って建物の防寒対策が違うから、北国より寒かったりするんだよ!?
むー!!と威嚇するように先生に剥がれた布団に突進する。もふっと顔から突っ込むことになったけど、そこは超高級品。突っ込んだ先からあったかい。
何かついでに先生に抱き付いてる形になってるけど、布団挟んでるからセーフ?
私の体内時計で十秒ぐらい。そしたら先生が布団を再び剥いで、自分が仰向けになってるのに私が覆いかぶさるような形になるように私を移動させると、剥いだ布団を背後に掛けてくれたので安心してべたっと先生にくっ付いた。
ああ、あったかいー…。
朝から布団に突っ込んだりしているせいで乱れた髪をちょいちょいっと直しつつ、先生に撫でられる。それが気持ちよくて、目を閉じた。
再び訪れようとしている眠気を感じつつ、先生が言う言葉を聞いていた。
「今度温泉でも行くか?」
「おんせん…?どこの?」
「うちがよく使ってる温泉旅館。そこの露天風呂が有名でな、飯もうまいんだ。」
「…ごはん……いいなぁ。たべたい。」
「露天風呂より飯かよ。」
先生にくくくっと笑われたけれど、だって旅のメインは美味しいご飯が基本でしょう?
お刺身とか。地元で採れた美味しい野菜とか。鍋とか。地元牛のステーキとかね?
むくっと顔を上げると、私を見ている優しい茶色い目とばっちりと視線が合った。
「私、船盛りって食べてみたいなーってずーっと思ってたの。でもね?お兄ちゃん達があまり生魚得意じゃないから、ずっと我慢してて。」
「ああ、確かに桐生さんも美奈も生モノあまり食わないもんな。」
「お寿司は大丈夫なんだけどね。お造りが駄目らしいの。だから、皆で温泉旅行に行っても、お造り余っちゃって…。そんなんじゃ船盛り頼めないでしょ?」
「船盛りねぇ…。結構量あるぞ、あれって。もしも食えなくて余ったらどうする…って心配するだけ無駄か…」
「…なんか含みある言い方…。まぁいいけどさ。」
ぶーっと頬を膨らませて顔を下げる。
寒い寒いと思っていても、やっぱり先生はあったかい。ビバ人間毛布。
またしてもくっついた私に対して、何も言わずに黙って髪を梳いている感触を感じながら私は再び眼を閉じた。
身体全体に伝わってくるぬくぬくとした温かさが、一番安心する。
ああ、護られてるなーって実感する。
私が一番無防備になれるのは、亨の側だけ。
エロだけど。
年上だけど。
口うるさいけど。
大好きなのは、亨。
ふふっと笑いながら私は身体の力を抜いた。
すっかり眠ってしまった唯を見ながら微笑んだ亨は、彼女の唇に軽く己のそれを重ねた後に遠藤家御用達の温泉旅館の事を思い浮かべた。
「有名なのは、離れの客室露天風呂なんだが……まぁ…いいか」
ぼそっと呟いた亨が唯の身体を抱き締めながら眠りに付いたのは、愛しい彼女が眠ったのとそう時間は離れていなかった。
本当はもっと甘ったるくする予定が…。甘味が少し足りなかったか…!!




