優しい光
これは、部活中に書いたものです。
優しい気持ちになっていただけたら嬉しいです。
秋なのに外はもう真っ暗だなぁ、なんて思ったので、書いてみました。
楽しんでください。
お題『虫 烏龍茶 咳』 (30分)
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冬が近づいてくると、あたりはすぐに暗くなる。
ここは都会から遠く離れた田舎町。
毎日歩いているせいで見えなくても歩く事ができるこの道は、人口の光があまり無いせいで5時でも真っ
暗だ。
乾燥した空気は寒々としていて、私の体温をどんどん奪う。
暗さと寒さで、すごく心細くなる。
私は両手をこすって温めながら、近くのスーパーマーケットに向かっててくてく歩いていた。
近くといっても、歩いて30分近くはかかる。なにかと田舎は不便だ。
「寒い……」
ぼそりとつぶやく声が、真っ暗な景色に吸い込まれてしまう。
立ち止まり、高い空を見上げると、空一面にきらきらとしたたくさん星が輝いていた。
――都会では見られないのかなぁ
なんて思うと、こんな何も無い田舎でも良かった、なんて思えてくる。
周囲からは何の音も聞こえてこない。
ぼーっと大きな空を眺める。
時がゆっくりと流れていく。
すると、自分の存在がすごく小さなもののように思えてきて、少し不思議な感覚にとらわれた。
―-闇に吸い込まれて、ここからいなくなってしまわないかな?
そんな気さえしてくる。
ずっとこのまま空を見ていたい。
……
時が止まったように動かなくなる。
……
そんな動かなくなった時計の針を動かしてくれたのは、私よりも小さな『虫』だった。
目の前を横切る小さな虫。
それによって、はっと目的を思い出す。
「早くお店に行かないと」
再び、私は黒い世界の中を歩き出す。
今、家には風邪をひいたお母さんが一人、寝室で眠っている。
私が小学校から帰ってくると、お母さんは咳をしてつらそうにしていた。
でも、私が帰ってくるのを見ると、無理をしてすぐに元気な顔になって笑顔で迎えてくれる。
早く病院へ行くように言っても、お母さんは別にいいのよ、と言う。
ちゃんとお医者さんに見てもらわないとダメだよといっても、全く聞かない。
お母さんは病院が嫌いだ。だから、いつも病院に行くのが嫌だと駄々をこねる。
まったく、大人のくせに子供みたいだ。
仕方なく、病院にいかせることはあきらめ、ゆっくり家で寝ているようにいった。
お母さんはわかったと頷き、ゆっくりと眠りに落ちていった。
そして今、私は薬を買いに、スーパーマーケットへ向かっている。
早く帰らないと、頑張りやで世話好きのお母さんは晩御飯を作ろうとするかもしれない。
――こんな時ぐらい頼ってくれてもいいんだけどなあ。
少し、足を速める。
少したって、低いところに大きな光が見えてくる。
畑に囲まれて建っている、この辺で一番大きなスーパーマーケットだ。
綺麗な光。
そう思った。
光に近づくにつれて、空の星たちがいなくなっていく。
店に入ると、そこにはすごく暖かくて明るい空間が広がっていた。
薬を手に取る。
――そうだ、お母さんの大好きな烏龍茶も買って帰ろう!!
お母さんの喜ぶ顔を想像すると、なんだか少しくすぐったくなって、嬉しくなった。
そして、せかせかと早足で烏龍茶のところへ行き、かごに入れる。
精算を済ませると、すぐに暗い外へ飛び出した。
やっぱり、外は寒かった。
でも、来た時とは違う。
暗いけど、怖くない。
寒いけど、心細くもない。
気づいたら私は家に向かって走っていた。
空の星たちが、だんだん帰ってきた。
――やっぱり、星の光ほうが綺麗だなぁ。
どんどん走る。
暖かい気持ちが私の中からあふれていた。
ようやく、家が見えてきた。
玄関には明かりが灯っている。
――お母さん!!
私は家の扉を勢いよくあける。
すると、お母さんがにっこりと笑って、おかえりと、言ってくれた。
「ただいま!!」
そういって、私はお母さんに抱きついた。
お母さんは、外が怖かったの?なんて聞いてきた。
そうじゃないよ。
そう答えると、お母さんは不思議そうな顔をしている。
――やっぱり、この家が一番明るいな。
ふと、そんなことを思った。
そして、抱きついた体から伝わってくる体温はすごく暖かかった。
読んでいただき、ありがとうございました。
感想など、どんどん受け付けます。
それと、いろんな人と交流したいので、皆さん、メッセージなど、よろしければおくってください。
ではでは。