乳兄弟の公爵子息が女関係のトラブルを相談しにきたけど、いや知らんがな。
なんでもあり
「──っていうわけで、いい案ないかな?」
「あなたね、それを乳兄弟に相談してくる時点でどうかしているわ…」
目の前には乳兄弟であり幼馴染の公爵家嫡男エリン、とその婚約者である伯爵令嬢。
で、私、第四王女…、このメンツの時点でおかしいと思わないから、私の乳兄弟は間抜けなんだと思う。
そのくせ仕事はできるし、嫡男としては何も問題ないし、こうして今でも交流があるのだから、悪い奴ではないのだ。
それはわかっている。
だからってねえ、婚約者が女性同士で揉めている話を私のところに持ってくるのは、本当にいただけないわ…。
この憎めない性格と天性の仕事の才だけでどうにかなっているというのは、もっと本人が自覚すべきだ…、あーあ、頭痛い…。
「そんなこと言ったって、公爵家と伯爵家との婚約なら、周りにピーチクパーチク言われることは想像ついていたでしょ?何を今更…」
ガシガシ頭を掻くと、エリンが苦笑いしてきた。
どの立場でそんな顔できているわけ、この男…、ほっんと腹立つ…!
顔がいいのが余計にムカつくわね。
「王女殿下、僕が言うのもなんだけど、その喋り方は僕の婚約者がびっくりするからやめておいた方がいいと思うよ」
「何よ、あなた。わざわざ私の懐に自分の婚約者を入れてきたんだから、説明くらいしておきなさいよ」
「こんな感じであけすけだから、身構えなくて大丈夫だよ」
「えっ、あの、その…」
「あとね、エリン。いくら私たちが気安い仲だからって、婚約者にこんな形で紹介しちゃダメだと思うわ。男に親しい女友達なんて、いなければいないほどいいんだから」
「…?」
「その小動物みたいな顔やめなさい。…はああ、エリンの婚約者なんて、あなた苦労させられてそうね」
私が特大のため息を吐くと、婚約者の彼女の方がビクリと体を縮こめた。
立場があれとはいえ、そんなに怯えないでほしい…。
この構図、婚約者の間に入り込んでいるいらん女な訳で、完全に私が悪者だし。
「だいたい、公爵令嬢にずけずけ言われているって何?あの人、エリンのことなんか眼中にもなかったじゃないの」
「わからない、彼女と婚約してから急に言い寄られるようになって」
「あー、人のものが輝いて見えるタイプか…。あなたは心当たりないの?」
私が婚約者の彼女の方に話を振ると、怯えながらも口を開いた。
「私の身分が低いことが気に食わないようで…」
「でも、あなたのお家は長く続いている歴史もある家だし、領地や仕事ぶりだけ見たら、別に釣り合っていないわけでもないじゃないの。どうせ、伯爵家の治水事業の技術を当てにした婚約なんでしょう?だったら、十分な対価じゃないの」
「ははっ、やっぱりお見通し?」
「あんたね、お飾りの第四王女だってそれくらい知らないとやっていけないのよ」
やれやれと首を振ると、婚約者の彼女の方が目をパチクリしている。
「身分が気に入らないって、それこそ私との婚約ぐらいじゃないと誰でも文句言い放題じゃないの。どうせ、私だとしても陰で何かしら言われるんだから、気にすることないと思うんだけど」
「何か言われているぐらいなら、僕たちもここまで困っていないんだよ」
「何、まだあるの?」
「……色んなお茶会や社交の場から出禁を言い渡されていまして」
「はあ…!?」
「公爵令嬢がいろんな令嬢に命令しているっぽくって」
「また面倒な女に目をつけられたわねえぇ…」
「むしろ、子爵家や男爵家からのお誘いは増えたのですが」
「あー、上位貴族のみってことか。こすいわねえぇ。未来の公爵夫人相手にそれって、現実が見えてなくて余計に頭が痛いわね」
額に手を当てて、侍女にお茶を淹れるように頼む。
あー、侍女か。
「ねえ、あなた。自分に箔をつける気はない?」
「へっ、私ですか?」
「とりあえず、私の侍女でもするのはどう?みそっかすの王女相手で申し訳ないけど、ないよりいいでしょう」
まあ、第四王女の侍女なんて、大した肩書きにはならないだろうけど、ただの伯爵令嬢よりはいくらかマシだ。
乳母である、エリンの母上の顔も立てられそうだし。
何より、お姉様方の侍女になりたい人間ばっかりで、私のところはどう頑張っても手薄だし。
「私でよろしいのでしょうか…?」
「いいんじゃない?エリンを相手にできているなら、大抵の人間ともなんとかなるでしょ?」
「それ、どういう意味?」
「そのままの意味。公爵家として、何か問題ありそう?」
「いや、特には…。母上が喜びそうくらい、かな」
「じゃあ、私としても恩返しになっていい感じね。ついでにエリンのお母様をお呼びして、三人でエリンの悪口大会でもしましょう?」
「ひどくないかな!?」
「仕事以外ポンコツなあなたの方が酷いわ。ね、どう?」
エリンの抗議を無視して彼女の方に訊くと、目を丸くしたあと、花が咲くように笑った。
あら、そんな顔もできるんじゃないの。
「私でよければぜひお願いいたしますわ」
「決まりね。ここで働いていれば、つまんないお茶会や夜会にもお断りできるし一石二鳥じゃない」
「それはとても助かりますね」
「あら、あなたもいい性格していそうね。私そっちの方が好きよ」
「エリン様との婚約にと、公爵夫人が選んでくださったものですから」
その言い方に、公爵令嬢なんかにやられる人材には思えなくて、可笑しくて笑いそうになる。
これはエリンが踊らされているだけね。
私と顔見知りなりたかったってところかしら、いいわね気概のある人間は好きよ。
「ふふふっ、さすがおばさまだわ。ねえ、お名前、改めて教えてくれる?」
「サフィーナと申します」
「これからよろしくね、サフィーナ」
「はいっ!」
「ええぇ…、なんか仲良くなるの早くないかなぁ、二人とも…」
「エリンに苦労させられているもの同士だから、そりゃあ意気投合も早いわよ。ねえ、サフィーナ」
「そうですね」
「えええぇ!?」
エリンは不服そうだったけど、私としては満足な結果になったのでよしとしよう。
さーて、明日から社交界がどう荒れるか、楽しみね。
了
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253日目。




