冒頭に何を持ってくるか。
読者を惹きつける冒頭とは、いったいどういうものか?
大半の素人は、思いついたアイデアをただ「時系列」順に書く。アイデアを活かすことだけを考え、ダラダラと前提条件である説明から、冒頭を始める。
これでは「しばらく読んでもらえば、面白くなるので」と、冷たい水やおしぼりも出さず、いきなり「仕込みの風景」をドヤって見せてくる店と同じ。店員との気まずさのない閲覧では、そこで店を出る客も少なくはない。
しかも、小説は「読者からはオーダーの出来ない料理店」と同じ。「店長のおすすめ」のワンメニューだけを読者に食べさせるのだから、おすすめに対する読者の想像力を刺激する必要がある。だとすれば、冒頭に持ってくるべきは、そのシーンを期待させる「鼻腔を刺激する匂い」とするのが定跡。いきなり料理の説明文だけが書かれた、メニューですらない案内書を手渡されても「なんだ、この店?」となるからだ。
では、ここでいう「匂い」とは何か?
無難なのは、いきなりそのシーンの熱を感じさせるセリフや、このあと起こることの回想から始めること。まず読者に「いったい何が起こってるんだ?」とアテンションのスイッチを入れさせる。そうなると必然的に、その状況を把握したくもなる。そこでようやく説明を始める。ただし、少しずつ。
冒頭のセリフなどが「回想」であった場合、その過去から物語が始まる。冒頭のシーンに戻るまでには、「登場人物たちと共に」、徐々に冒頭の混乱へと向かっていかなければならない。しかし、ここで我々はやらかしてしまう。早く「自慢のアイデア」を披露したくて、ショートカットを試み、過去のダイジェストを企てる。
「前戯もおざなりな本番」への突入は、大半の読者を萎えさせる。何なら前戯こそがメインディッシュという読者もいるくらいだからだ。
前戯(まだこの喩えでイクつもりか?)は、読者に「本番を期待させるもの」でなければならず、その興奮が高いほど、必然的に本番の感度も上がる。
冒頭は、耳元でささやく甘い言葉(あるいはわざと不安を持たせる暴力性の匂わせ)。前戯では、相手にその後の本番を想像させる、できるだけ繊細な「準備運動」を展開し、そのエピソードのメインディッシュへと向かうというのが、最も王道と言えるスタイル。
―― なんてことを最近、ようやく気付きだしてきたり。
この気付きが「正解」かどうかは知らんけど。
連載中のショートエッセイ集に載せようと書き始めたが、文字数が増えたので単発枠で。連載『ゲブラ的 書きの種 』(n7209mf)の方もよろしくね。




