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老人だらけの村で貰ったぬくもり  作者: かねおり


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老人だらけの村で貰ったぬくもり

旅人シリーズ13話目冬だからこそ読んでいただきたい。


ぐはぁ間違えて連載にしちゃってたー。すみません短編です。

僕はこの旅を始めてからきっとここが初めての僕と同じ人間が暮らす場所。




だけどどうしたものか、ここに来るなり僕のポケットは色んなものでパンパンに膨らんでいる。




この村は老人たちだけが暮らす村のようで村に入った途端お婆さんが僕に気づいて向かってきては、




「おお、よく来たねぇ寒かったろうに飴ちゃんあげるわ」とポケット一杯に飴玉を詰め込まれ、次から次へとお婆さんたちが来てはオブラートのついたゼリーや最中、金色や銀色の包み紙で包まれた四角いあまじょっぱいものなどを荷物の中にもどんどん詰め込んでくる。




これは新手の親切なのだろうか?と思いながらも笑顔溢れるお婆さんたちにお礼とご挨拶をした。




「こんにちは、僕は旅をしていてあなたたちは旅人でしょうか?こんなにたくさんのおやつをありがとうございます」




「旅人だったこともあったわねぇ」


「あら、ユキさんも旅人だったことあったのねぇ」


「そりゃそうよあの時お爺さんと出会って恋をして・・・・・・ってウメさん何言わせるのよ~」とキャッキャウフフと盛り上がっていた。




どうやらここにいるのは旅を終えた老人たちが暮らしている小さな村のようだ。




「外は寒いのに本当によく来たよく来た、しばらくうちに泊まりなさいな」とユキさんというお婆さんが言ってくれたのでお言葉に甘えてお世話になることにした。




ユキさんのおうちにつくと木造の一軒家で雪が積もらないように屋根は尖っていた。




「お爺さんや~孫が遊びに来ましたよ~」とユキさんが言う。




僕は孫になってしまったんだな。とフフフと少しくすぐったい感じがした。




玄関を上がると、まるで冬とは思えないほど暖かい部屋に僕はビックリしていた。




「どれどれ、孫が来てくれるなんざ、いつ以来だったかのう?」とお爺さんが出迎えてくれた。




「やぁねぇお爺さんたら、ちょっと前にも孫が来たじゃないのすぐ忘れちゃうんだからフフフ」とユキお婆さんが言う。




お爺さんとお婆さんに促されて入った部屋には畳の匂いがして、大きなコタツがあった。




「自分の家だと思ってゆっくりくつろいでってね」とお茶を出されて身体の中からもポカポカに温められた。




「お爺さんとお婆さんも昔は旅人だったんですか?」と聞くとお爺さんがお婆さんに耳打ちするように何かを言っている。まずい質問をしてしまったか?と心配していた僕にお婆さんは、




「この家に居る間は『おじいちゃん』て呼んでほしいみたいなのよあたしも『おばあちゃん』でいいわよ」と可愛い内緒話だった。




「あ、えっとおじいちゃんもおばあちゃんも昔は旅人だったんですか?」と言い直すとおじいちゃんはまたおばあちゃんに耳打ちしていた。




「孫は甘えてくるものだから敬語はいらないんだそうよ。そのまま言えばいいのにねぇ」と微笑んだおばあちゃんは楽しそうだった。




「おじいちゃんとおばあちゃんの出会いは旅人の時だったんだよね?」と三回も同じこと言いたくなかったので少しニュアンスを変えてみた。




するとおじいちゃんは小さな封筒を僕に渡してこう言った。




「出会いの話は婆さんと二人だけの秘密だからこれで我慢しといとくれ」と。




封筒を開けると金貨が1枚入っていた。何故?と思いながらも、ありがたいことに違いはないので、




「ありがとうおじいちゃん、これは?」と聞くと、




「孫が遊びに来たんじゃお小遣いくらい渡さにゃカッコつかんじゃろ」ととても可愛い照れ顔をしていた。




旅の話は聞けなかったけど、おじいちゃんは昔木こりの仕事をしていたのだとか、子供は10人も居るんだとか、一時はおばあちゃんを怒らせて出ていかれたこともあったとか。




それでも子供たちをおじいちゃんが懸命に育てていたら帰ってきてくれて仲良い老後を送れているとか。




ほぼ惚気を聞かされている間にお婆さんが沢山のご馳走を作って持ってきてくれた。




「こんなにやせ細っちゃってたーんと食べてしっかり肉をつけないとこの国から生きて出られないわよ」と目の前に何人前だろうという煮物や山盛りのご飯に温かい汁もの、お漬物や立派な塩焼きの魚などが並べられ三人で手を合わせ、




「いただきます」と言って食べた食事はどれもちょっと濃い目の味付けだけど美味しかった。



おばあちゃんは夕食が終わるとお風呂に入るといいと言って案内してくれた。




「いきなり入ったら体がびっくりするから掛け湯は必ずするのよ」とだけ言って洗い物に向かって行った。




お風呂はヒノキの香りと柚子の香りがして湯けむりが少し薄くなった時に沢山の柚子がお湯に浮かんでいるのが見えた。




掛け湯を十分にしてからゆっくり湯舟に足から入るとジンジンとしびれるように温かさを感じた。




お湯に浸かるのがこんなに気持ちいいなんて思っていなかった僕は肩までしっかりと浸かってボーっとすることができた。




「湯加減はどうだい?」とおばあちゃんが扉越しに声をかけてくれたので、




「とっても気持ちいいよ」と言うとガラっと扉を開けて風呂場に入ってきた。




「おばあちゃん?一緒に入るの?」と身体を柚子が隠してくれているのにギュっと両腕で身体を隠してしまった。




「おやおや、背中を流してあげようかと思ったんだけどそうねお年頃だものね」と残念そうに言うので、背中を流してくれるようにお願いしたらとても嬉しそうに身体を洗ってくれた。




(あれ?これ僕太らされて洗われて喰われたりしないよね?)と疑念が沸いたけど、おばあちゃんに聞かれたのは、おじいちゃんがおばあちゃんとの出会いの話をしたかどうかだった。




「僕は尋ねたけど、おじいちゃんは教えてくれなかった代わりにお小遣いをもらっちゃったよ」と答えると、




「そうかいそうかい、お小遣い大事に遣うのよ」と嬉しそうに僕を洗い終わって扉の外から




「ここに身体を拭くものと、替えの下着と寝巻を置いておくからね」と至れり尽くせりであった。




お風呂上りで用意された寝巻などに着替えて出ると、おじいちゃんが半纏をかけてくれて、おばあちゃんが布団を敷いてくれた。




おじいちゃんがお風呂から上がると僕にはホットミルクおじいちゃんには熱燗が出されて、僕の旅の話を今度は聞いてもらいたくなっていっぱい話をした。




いつもは訊かれてから話すのに、おじいちゃんとおばあちゃんと居ると不思議とあれもこれも聞いてほしくなってしまう。




おじいちゃんとおばあちゃんは、ただ頷くように聴いていてくれる。




「まだまだ話足りないだろうけど子供はもう寝る時間だわ。わたしらも一緒に寝ましょう」と川の字に敷かれた布団の真ん中に僕は寝る事になった。




とってもくすぐったい気持ちになった。そしてすぐに眠りに落ちてしまった。




朝になるとおばあちゃんが起こしに来て、朝食の準備が出来ているから顔をあらっておいでと言われ冷たい水で一気に目が覚めた。




それにしてもこんなにフカフカな布団で人に挟まれて寝るなんて家族みたいだなと思いながら朝食を食べると、おじいちゃんが木の切り方を教えてくれると言って外に出る事になった。




おばあちゃんがいっぱい着こませてくれたからぶくぶくに着ぶくれた僕はおじいちゃんと近くに奇跡的に生えている木々を目にして驚いた。




ここは氷と雪の国なのに植物が生えるんだ。




おじいちゃんに斧を持たせてもらって木に向かって叩きつけたけども、斧が刺さっただけで抜けなくなってしまった。




「ちと太い木を選びすぎたか」とおじいちゃんが言う。




「僕あんまり力強くないから」と言うとおじいちゃんが代わりに枝を切ってくれた。




「婆さんに渡して薪として使う事にでもするか」とそこそこの量の枝を二人で運んでおうちに帰ってきた。




「あら、重かったでしょうにお爺さんたら孫にかっこいいところ見せたかっただけなのよ」とフフフと笑ってお婆さんが手のひらより少し大きい位の枝をいくつか僕にくれた。




「あなたはその木を使って好きなものを作るといいと思うわ」と言うので、荷物からナイフを出して好きな物かぁと思いながら、おじいちゃんとおばあちゃんの家に居る間少しずつ削って形を作ってみた。




「あら、上手可愛いじゃない。やっぱりあなたは物を作る才能があるんじゃないかと思ってたのよ」ととっても褒めてもらえる。




おじいちゃんが紙やすりをくれて滑らかに仕上げていくとしっぽを立てた猫の形になった。




ここにいると幸せでぬくぬくする。でも、ここは僕が住み着くにはまだまだ早いんだろうな。




「僕そろそろ次の場所に向かおうと思うんだ。いっぱい優しくしてくれてどうお礼をしたらいいか分からないんだけど」と言うと、




「じゃあ、旅の準備をしないとね」と言っておばあちゃんは新しい服を、おじいちゃんは村中の人たちを集めてソリを持ってきてくれた。




「もういっちゃうのかい」


「本当におユキさんは孫を引き留めるのが上手だから今度来た時はうちにも来ておくれよ」とみかんをどっさりソリに乗せてくれた。


「この後色々と必要になるだろうから」と色々入っていそうな大きな袋もソリに乗せてくれた。




こんなに沢山貰っちゃったらどう恩返ししていいのかわからない僕の心を察したおばあちゃんが、




「あたしらにもし恩返しをしたいと思ってるなら元気でいることと、あなたより年下の子たちにその分良くしてあげてくれたら嬉しいわ」と言ってくれて、




僕は次の旅に進むことにした。それにしてもこれは大荷物だ。ありがたいけど。



「巳之吉っちゃんそんな奥の方で隠れてないで孫の旅立ち見送ってやんな」と周りのお爺さんたちがおじいちゃんを呼ぶ。




寂しそうで恥ずかしそうなおじいちゃんの姿に僕は駆け出して抱きついて




「ありがとうおじいちゃん」と言った。おじいちゃんは頭をしっかり撫でてくれた。




「おじいちゃんもおばあちゃんも皆さんも長生きしてね~また来るから」そう言って手を振って、ソリの紐をしっかり握って僕は先に進む。いつかここの老夫婦みたいな家族になって戻ってくる。




いっぱいぬくぬくで優しくていい村だったなぁ。それにしてもおばあちゃんが作ってくれた服ちょっと僕には派手だな。フフフ。


おしまい

日本人の方の何人かは隠れた有名なお話に気づいたかな?


いつも読んでくださって本当にありがとうございます。


冬物はまだまだ続くのでしばらく更新増えます。

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