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第9話 勉強会

 マサに相談した日、俺は唯華からメッセージが送られてきて土曜日に勉強会をすることになり、今日――土曜日に至る。


「唯華には何も勘づかれないように頑張ろう」


 俺の家族は今日休みだと思っていたのだが、何やら友人と会ってくるとかで家には今、俺だけしかいない。

 唯華との勉強会は二人っきりでやることになる。


 もちろん楽しみではあるのだが、それ以上に緊張している。

 かりんと唯華のどちらが真実を話しているのかがまだ分かっていないからな。


 そんなことを考えていると、インターホンが鳴った。

 急いで玄関へと向かい、ドアを開ける。


「いらっしゃい」

「今日はよろしくね真司くんっ!」

「こちらこそよろしく。それじゃ、入っていいよ」

「お邪魔します」


 唯華は俺の家の中に入ると、不思議そうに辺りを見回した。


「どうかした?」

「いや、真司くんの家族がいるかもって聞いてたから」

「あー、なんか友達に会いに行ってるらしくて今日は俺だけなんだ」

「そうなんだね。真司くんの家族に挨拶したかったから少し残念」

「そ、そうだな。また次の機会だな」


 俺は唯華を自分の部屋まで案内する。

 唯華が来る前に部屋の掃除をしておいたので俺の部屋はいつもより綺麗な状態になっている。


「ここが真司くんの部屋かぁ。結構綺麗にしてあるんだね」

「ま、まあね」

「もしかして、私が来る前に掃除した?」


 唯華はニヤニヤしながら俺の顔を覗き込む。

 俺のことなら分かっているよ、と言いたげな表情をしている。


「あはは、唯華には何でもお見通しだな」

「真司くんのことなら何でも知ってるよ! ずっと好きだったんだから」

「流石だね」

「だから、真司くんにも私のことを色々知ってほしいなぁ」

「これから知っていくつもりだよ」

「それなら良かった」

「少し待ってて。飲み物取ってくるよ」

「うん、ありがとう。私は勉強の準備しておくね」


 キッチンに行き、冷蔵庫から何本かジュースを取り出す。


「お菓子もあった方がいいかな」


 冷蔵庫の中には、クッキーが入っていたのでそれも取り出し、ジュースと一緒に部屋に持っていく。


「真司くん、ありがとう」

「適当に選んだんだけど、これでよかったかな?」

「真司くんが選んだものだったら何でも嬉しいよ」

「そ、そっか。それは良かった」

「それじゃ、早速だけど勉強会始める?」

「そうだね、始めよう」


 勉強道具を机の上に出し、勉強を始めることにする。

 まあ、俺は勉強以外のことにも気を付けないといけないのだが。


「真司くんはどの教科が苦手とかある?」

「うーん、数学とか少し複雑な公式とか多くて苦手かも」

「それなら分からないのがあったら私が教えるよ」

「数学得意なの?」

「得意ってほどではないけど、それなりに出来るって感じかな」

「そうだったんだ。それなら俺が分からない問題とか公式が出てきたら頼もうかな。逆に唯華は苦手な教科ないの?」

「そうだなー、私は英語かな」

「英語なら少しは教えられるかも」

「真司くん、英語得意なの?!」

「あれ、俺のことなら何でも知ってるんじゃなかった?」

「あ、真司くんの意地悪……」

「あはは、ごめんごめん」


 俺たちはお互いの苦手な教科を教えあうことにして、勉強を始めた。

 これが、勉強会のいいところだろう。


 一人で勉強して分からないことがあっても自分で調べるしかないが、今回のように誰かと一緒に勉強すると調べるより前に教えてもらうことができる。


 俺は楽しんでいるように振舞いながら勉強を進めていく。

 いや、実際に楽しんでいる部分もあるかもしれない。だけど、それと同時に少し怯えている自分もいる。

 そんなことを考えながら勉強をしていると、突然唯華が俺に聞いてくる。


「そういえば、この前、かりんが家に来てたって言ってたよね?」

「うん」


 何故、今それを聞いてきたんだ。

 もしかすると、勘づかれたのではないかと思い、俺は焦ったがここで焦る様子を見せてしまっては余計に怪しまれてしまう。


 なので、俺はあえて自然に対応することにした。


「何を話したの?」

「自分が酷いことをしたって理解したらしくて、謝りに来てたよ」

「そうなんだ。それ以外には何も話してない?」

「うん、他には何も話してないよ」

「そっか。それなら良かったよ」

「良かった?」

「うん。また真司くんに酷いことしてくる可能性もあったじゃん? だから、謝りに来ただけで良かった」

「そ、そうだね」


 その後は唯華がかりんのことを話題に出すことはなく、無事に勉強会を終えた。


「今日はありがとう。また一緒に勉強会しようねっ」

「そうだね。俺もまだ完璧にテスト対策を出来ているわけじゃないからな」

「また、よろしくね。次は私の家で勉強会する?」

「もし、唯華がいいならそうしようか」

「私はもちろん大歓迎だよ!」

「あるがとう」

「うんっ! それじゃ、帰るね」

「気を付けて帰ってね」


 唯華を見送った俺は自分の部屋に戻ると、緊張の糸が切れたように急に疲労を感じ始め、ベッドの上で横になった。

 気づかないうちに精神的な負担が掛かっていたようだ。


 まあ、当たり前と言えば当たり前か。


 勘づかれないようにずっと気を張っていたのだから。



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