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第8話 相談

 翌日の朝。


 俺はマサに相談することにした。

 かりんも唯華も違うクラスなので正直助かる。同じクラスだったら、相談内容を聞かれてしまうかもしれないからな。


 まだ、どちらが正しいのか分かっていない以上、話を聞かれるわけにはいかないのだ。


「なあ、マサ。相談したいことがあるんだけど」

「ん? 別にいいけどどうしたんだ? なんか顔色があんまり良くないけど」

「その相談内容のせいだな」

「そっか。俺で力になれるかは分からないけど、聞かせてくれ」


 俺は今、顔色が良くないのか。

 この問題が解決するまではこの状態が続いてしまうんだろうな。


 普段はふざけたりするマサだが、俺が悩んでいるのを知ると、すぐに話を聞いてくれる。

 やっぱり相談相手はマサにしてよかったのかもしれないな。


「昨日の出来事なんだけどさ」

「昨日? 唯華さんを勉強会に誘うって言ってた話か?」

「いや、その後の出来事なんだ」

「家に帰ってからってことか」

「そう。昨日、家に帰ったら家の前にかりんがいたんだよ」

「それマジか!?」

「俺も最初はかなりビックリしたよ」


 マサもそういう反応になるよな。

 あの日から一週間ずっと俺が原因で学校を休んでいた人が、俺の家の前にいたって聞いたら誰だって驚くはずだ。


「それで、どうしたんだ」

「話したいことがあるって言うから家の中に入れた。もちろん、唯華には確認を取ったよ?」

「唯華さんに許可をもらったならいいと思うけど、何を話したんだ? 多分、その話のせいで真司は悩んでいるんだろ?」

「ああ、その通りだよ。かりんは俺に対して酷いことをしてしまったって謝ってくれたんだ」

「ちゃんと反省していたんだな」

「そうなんだけど、かりんはその時に、愛している人に酷いことをしてしまったって言ったんだ。俺のことを愛している人だって……」


 俺の言葉を聞いたマサは最初は意味を理解できていないようだったが、すぐにかりんが俺に全く好意がないのに付き合ったという話を思い出したらしく、ハッとしたような表情になった。

 俺も最初聞いたときは混乱したよ。今のマサと同じようにね。


「本当にそう言われたのか?!」

「ああ、俺も最初は意味が分からなかったよ。俺に対して全く好意がないと思っていたからな。唯華からそう聞かされてたしな」

「かりんさんが嘘をついている可能性はないのか?」

「それもまだ分からないんだ。俺もその可能性もまだあるとは思っているんだけど、そのことを話していた時のかりんが嘘をついているようにはどうしても見えなかった。俺がチョロいだけかもしれないけどな」

「でも、かりんさんが本当のことを言ってて、唯華さんが嘘をついている可能性もあるかもしれないのか」

「そうなんだよ」


 マサも俺と同じようにどっちが本当のことを言っているのか分からないようだった。

 ほかの生徒なら、ほぼ確実に唯華を信じるだろう。


 今、この学校でかりんは信頼を失ってしまっていると言えるだろう。かりんは遊びまくっているという噂もあるくらいだしな。それが、勘違いという可能性があるとしても。


 だが、マサはその噂だけに惑わされず公平に自分の判断をしてくれている。


「それで、真司はどうするつもりなんだ?」

「かりんが自分の真実を証明するために唯華とこのことについて話しているところを俺に聞かせてくれるってさ」

「どうやって? 録音とかするのか?」

「最初はそう言われたけど、録音内容を編集することも可能だから、俺と通話を繋ぎながら話すって」

「なるほどな。それならかりんさんも嘘の内容は話せないな」

「そういうことだ」

「それじゃ、その時までは真司にとって辛いかもな」

「まあ、そうだな。でも、真実は知るべきだと思うから」

「そうだな。俺は話を聞いてあげることしかできなくてごめんな」

「なんで謝るんだよ。俺は話を聞いてもらえただけで、心がだいぶ楽になったよ」

「そうか? それなら、よかった」


 マサは本当に優しいやつだ。

 俺は解決策が欲しくて相談したわけではない。ただ、この話を聞いてもらいたかっただけなのだ。

 本当に話しただけで、かなり心が楽になった。


 マサは話を聞いてあげることしかできなくてごめんと言ったが、聞いてくれるだけで俺の助けになっている。


「話を聞いてくれてありがとう」

「ああ、俺たち友達だろ? いつでも、話してくれて構わないからな」

「ありがとう」


 とりあえず、かりんが唯華と話す日までは何も行動に移すことができないな。

 でも、その前に唯華との勉強会があるんだった。


 誘ったときは楽しみだったんだけど、かりんから話を聞いてしまってからは楽しみが緊張に変わってしまった。

 もちろん、急に勉強会の予定をなくすことはできない。


 勉強会では唯華に勘づかれないようにしなくては。

 勘づかれてしまっては、かりんの提案が台無しになってしまうかもしれない。何があっても真実を知るチャンスを逃すわけにはいかないのだ。


 真実を知らない方が良い場合もあると言うが、今回の件は俺が知らなくてはならないと思う。

 だから、俺がしくじらないようにしなくてはならない。



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