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第6話 何故そこにいる

 かりんと別れた日から一週間が経った。


「今日も来てないらしいな」


 マサの言っているのはかりんのことだろう。

 かりんはあの日から学校を休み続けている。


 もう少しで中間テストがあるからそろそろ戻ってくるとは思うが、さすがにこのまま不登校になってしまったら俺のせいになってしまうような気がする。

 それだけは気持ち的に嫌だな。


 とは言え、俺から何か行動を起こすつもりがあるわけではないので、かりんが自分の意志で戻ってきてくれることに期待するしかない。


「まあ、中間テストが始まるまでには戻ってくるだろ」

「それもそうだな」

「それよりもマサ。お前、中間テストは大丈夫そうなのか?」

「うっ」

「その様子じゃ、ヤバそうだな」

「俺のことは良いから。真司は唯華さんと勉強会とかしないのか?」

「勉強会か……。確かにいいなそれ」


 今日の帰りにでも唯華を誘ってみるか。

 一緒に勉強会か。きっと楽しいだろうな。


*****


 学校終えた俺は唯華を勉強会に誘う。


「なあ、唯華」

「うん?」

「もうすぐ中間テストの時期に入るけど、一緒に勉強会しない?」

「勉強会!? いいねそれ! 絶対楽しいやつじゃん!」


 唯華もどうやら勉強会に乗り気のようだ。


「どっちの家でする?」

「私の家でもいいけど、もしかして真司くんの家でも良かったりする?」

「あー、俺の家でもいいんだけど、俺の家族がいるかもしれないけど大丈夫?」

「うん、全然大丈夫だよっ」

「そっか、それなら俺の家にするか。日程とかはまた今度決めよう」

「そうだね」


 勉強会について盛り上がっているうちに、いつの間にか唯華の家付近まで来ており、唯華は家に帰っていった。


 帰る直前まで寂しそうにしていたのだが、そんな姿も可愛かった。


「よし、俺も帰るか」


 勉強会を誘うことに成功したことにより、俺はスキップしたくなるほど上機嫌になっていた。


 そこから五分もしないうちに家に着いたのだが、家の前に予想していなかった人物の姿があった。


「……かりん?」

「…………」


 そこには、一週間ずっと学校を休んでいるはずのかりんの姿があった。


「何か用か?」

「…………」


 かりんは何も言わずにただこくりと頷くだけだった。


 どうすればいいんだ。

 とりあえず話だけでも聞くべきか。でも、そうなると、家の中に入れるべきか?


 いや、どうすればいいんだ!?


「少し待ってね」

「…………」


 俺は急いで唯華にかりんが来ていることと、家の中で話を聞いても良いかを聞くためのメッセージを送った。

 すると、爆速で返信がきた。


『いいけど、その代わり今度アイス奢ってよね! 高いやつ!』


 というような返信だった。


 これは高いアイスを何個か用意することになりそうだ。


 唯華からの許可も貰うことができたのでかりんを家に入れる。


「入っていいよ」


 幸運なことに俺の家族はまだ帰ってきていないようだった。

 まだ、かりんと別れたことも唯華と付き合い始めたことも伝えていないので今鉢合わせていたら正直気まづかった。


 俺はリビングにかりんを連れ、ソファに座るよう伝え、自分も座った。


「それで、用って何? 話なら聞くから」


 しばらく黙っていたが、俺はかりんが話し始めるまで何もせずに待った。

 沈黙の時間が五分ほど続いたとき、ついにかりんが話し始める。


「あの……あのね……」

「うん。時間はあるから急いで話さなくても大丈夫だから」

「うん……」


 かりんは目の下にクマができていたり、やつれていて体調があまり良くないように見える。俺が何かしたというわけではないが原因は俺なのだろう。

 だから、俺はかりんの話をちゃんと聞くべきだと思う。


「最近寝れてない?」

「え、うん」

「そっか」

「真司に言わなきゃいけないことがあるの」

「うん」


 かりんは一度、ゆっくりと深呼吸をしてから真っすぐ俺の目を見ながら言う。


「本当にごめんなさい」

「……え?」

「私は本当に考えなしだったと思う。真司の気持ちも考えずに真司に対して酷いことをしてしまった。私は本当にどうしようもないほど最低だと思う」

「…………」


 かりんは反省しているようだった。

 どういう心境の変化だ。一週間前は自分がしたことを隠そうとしたり、反省なんてしなさそうだと思っていたのに。


 一体、この一週間でかりんに何があったというのだ。


「絶対にやってはいけないことを()()()()()()に対してやってしまった。本当にごめんなさい」


 え、愛している人?

 かりんは俺のことは全く好きじゃなくて、唯華から俺を奪うためだけに俺に告白して付き合ったんじゃなかったのか?


 かりんの一言によって俺は混乱していた。


「ちょっと待って!」

「うん」

「え、かりんは俺のことが全く好きじゃないと思っていたんだけど。唯華から俺を奪うためだけに付き合ったんじゃ……」

「それは違う!!!」

「!?」


 かりんは真剣な表情ではっきりと違う、と言った。

 本当に分からなくなってきた。


 かりんが嘘をついていると思いたいがかりんの表情は噓をついているようには見えない。

 だが、そうなると唯華が嘘をついているということになってしまう。


 俺は、どうすればいいんだ……!



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