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第4話 本当の評判

「真司くんの言う通りだよ。あり得ないのはかりんの方だよ」


 唯華は俺の言葉に同意した。


「だから! 私が何をしたか聞いてるでしょ!」

「はあ……、本当に自分が真司くんに対して何をしたか分からないの? あんな酷いことしておいて」

「酷いこと? そんなことした覚えないよ!」


 かりんは全く反省していないようだった。

 恐らくかりんは自分が浮気をしていたことがバレていないと思い込んでいるのだろう。


 だが、唯華が俺の代わりに言う。


「かりん、真司くんがなんでかりんと別れたのか本当にわからない?」

「当り前よ! 私は真司を愛しているんだから!」

「よく言うよ。私から真司くんを奪った上に、真司くんと付き合っていながらほかの男子生徒と浮気していたくせに」

「!?」


 ようやくかりんは自分の浮気がバレていることに気が付いたようで、段々と顔が青ざめていく。

 かりんは恐る恐る俺の方を向く。


 俺は頷いてかりんに伝える。


「最近、かりんの様子がおかしいと思って尾行したんだ」

「え……」

「そこで、かりんが他の男子生徒と恋人繋ぎで歩いているところを見てしまったんだよ」

「…………」

「浮気だよね?」

「そ、それは……」


 先ほどまで俺や唯華に対して怒鳴り声を上げていたのに、自分の浮気がバレていたことを知って黙り込んでしまった。

 本当にバレていないと思っていたのか。


 周りで俺たちの会話を聞いているほかの生徒のみんなもかりんに呆れているようで、少しため息をつくような声が聞こえた。


「俺がかりんと別れたいと思った理由がこれでわかったでしょ?」

「ち、違うの! あ、あ、あれは弟なの!」

「弟と恋人繋ぎするの?」

「そ、そうなの!」


 かりんはここにきて悪足搔(わるあが)きし始める。

 もうどんな言い訳をしても俺がかりんと再び付き合うということは絶対にないというのに。


 かりんも分かってはいるのかもしれないが、どうしても受け入れられないのだろう。


 そこに、唯華がとどめを刺すかのように言い放つ。


「でも、かりん弟いないじゃん。というか、一人っ子じゃん」

「ちょっと、唯華!」

「だって、本当じゃん」

「だからって、今言わなくてもいいでしょ!!!」


 そうか。唯華は中学時代まではかりんと親友だったからかりんに弟などいないということを知っていたのか。

 唯華の一言でもうどんな言い訳もすることができなくなってしまったかりんはばつの悪そうな顔をしていた。


 もうすぐ担任も教室に来る頃だろうし、そろそろこの話は終わらせるべきかな。


「かりん、弟はいないってことはつまり昨日一緒にいた男子生徒とはそういう関係だったってことでしょ?」

「…………」

「かりん?」

「…………」


 かりんは何も言わずに突然教室から出て行った。

 恐らくこの場に居づらかったのだろう。この場の空気に耐えられなかったのだ。


 唯華を見てみると、さっきまでは無表情で淡々と話していたが、今は笑顔を見せてくれている。


「唯華、さっき怒ってた?」

「うん、かりんにね。だって、真司くんに酷いことしておいてバレてないと思ってたんだもん。それにバレた後も隠そうとしてたから」

「ありがとう。でも、俺は良いんだけど、唯華も被害者なんだよ?」

「それはそうだけど、今、真司くんと付き合っているのが私だからいいのっ」

「そ、そっか」


 唯華が嬉しいことを言ってくれたので俺は顔が熱くなっている気がする。

 

 マサが隣でニヤニヤしているが、無視することにする。

 

「ん?」


 かりんが教室を出て行ったのにまだ視線を感じるなと思い、周りを見ると、ほかの生徒たちがいつの間にか俺たちのところに集まってきていた。

 みんな何故か目をキラキラさせながらこちらを見ている。


「え、どうしたのみんな」


 俺が困惑していると、一斉に同じことを聞いてくる。


「「「かりんさんと別れて唯華さんと付き合い始めたの?」」」

「え、うん、そうだけど」

「「「キャー!!!」」」


 何故か女子生徒たちは楽しそうに歓声を上げている。

 たしかに女の人たちは恋バナが好きだとよく言われているが、クラス全員がこんなにも盛り上がるものなのか。

 そして、男子生徒は何故か羨ましそうに俺のことを見つめている。でも、何かに納得しているのか頷いている。


 あまりの盛り上がりに俺が余計に困惑していると、一人の女子生徒が驚きの言葉を口にする。


「かりんさんはめちゃくちゃ遊んでるって噂流れてたし、森谷君は別れて正解だったね」

「え、そんな噂があったの?」

「もしかして、知らなかった?」

「うん」


 マジかよ。

 めちゃくちゃ遊んでたってことは相手は俺が見たあのイケメンな男子生徒だけじゃないかもしれないってことか。さすがに知らなかった。


 マサの方を見ると、マサは首を横に振った。


 どうやら、マサも知らなかったようだ。

 でも、それならやはり別れて正解だったと思う。


「それで何があって唯華さんと付き合うことになったの?」

「え、あ、それは……」

「教えて教えて!!!」


 俺が困っていると、担任が教室に入ってきた。

 もうホームルームが始まる時間のようだ。


「はーい、全員早く席につけー」


 担任のおかげでみんな自分の席に戻っていった。

 助かったぁ。


「あれ、唯華は?」


 いつの間にか唯華は自分の教室に戻っていたらしい。



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