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第3話 翌日の朝

 翌日の朝。

 俺は付き合い始めた唯華と一緒に登校していた。


 昨日は色々なことが起き過ぎて疲れていたのか帰宅した後はすぐに眠りについてしまっていた。そのせいで、唯華からのモーニングコールがなかったら確実に学校に遅刻していた。

 唯華には感謝している。


「もうすぐ着いちゃう」

「早いね」

「はぁ、真司くんと同じクラスだったら良かったのになぁ」


 唯華は本当に俺のことを好きになってくれているんだな。

 俺は心の中で喜びを嚙み締めた。


「さすがに授業中は会えないけど、学校が終わったら一緒に下校しようか」

「うんっ! ありがとう真司くん!」


 そう言うと、唯華は突然俺に抱きついてきた。


 俺は予想していなかったため、心臓の鼓動がとてつもなく早くなってしまう。

 いや、予想していても早くなってしまっただろう。


「急に抱きついてきたらビックリしちゃうでしょ!」

「えへへ。嬉しすぎて」

「そ、そっか。それならいいよ。俺もうれしいし……」

「本当? よかった!」

「それじゃあ、教室に行こうか」

「うん!」


 俺は顔を赤くしながら教室に向かう。

 恐らく耳まで真っ赤になっていると思う。


 付き合う前まで唯華がこんな可愛い言動をする人だとは知らなかった。

 これから、俺はこの可愛さに耐えられるのだろうか?


*****


 教室に入ると、マサがニヤニヤしながらこちらを見ていた。

 え、どうしたんだあいつ。


 もしかして、頭でも打ったのか?


「何ニヤニヤしてんだ」

「いやぁ、昨日俺といるときは落ち込んでたのに今日はやけに上機嫌だと思ってな」

「そうかな?」

「ああ、めっちゃ笑顔だし。一体何があったんだよ」


 顔に出ちゃってたか。


 マサに唯華と付き合い始めたことを言うべきか悩んだが、別に隠す理由もないので教えることにした。


「実は昨日、帰りに公園のベンチで座ってたら偶然、唯華と会ってな」

「うん、それで?」

「付き合うことになった」

「……どうしてそうなったんだよ! 面白過ぎるだろ!」


 マサは腹を抱えながら大爆笑している。


「実は唯華は中学の時から俺のことが好きだったらしくて」

「あれ、でもそれって」

「そう。かりんと時期が被ってると思うだろ?」

「うん」

「実は唯華がかりんに恋愛相談したら次の日に何故かかりんが俺に告ったんだってさ」

「え、やばくね? 友達の好きな人をわざと奪ったってことか?」

「そうなんだよ。俺も唯華から聞くまで知らなかった」

「恋愛感情がなかったから浮気とかできたんだろうな」

「そういうことだな」


 俺たちが話していると、急に教室のドアが勢いよく開く音が聞こえてきた。

 教室にいた全員がその音の方向を向くと、そこには一人の女子生徒がいた。


「え、なんで」


 その女子生徒は、昨日別れたかりんだった。

 どうやら、怒っているようだった。


 かりんは真っすぐ俺の方へと向かってくる。


「昨日のメッセージはどういうこと!!!」

「え……?」

「今まで楽しかった。ありがとう。これからは俺よりも良い人と仲良くねって送ってきたでしょ!」

「うん」

「何よあのメッセージ! まるでお別れのメッセージみたいじゃない! それにいくらメッセージ送っても既読すらつかないし!」


 俺は自分のスマホを取り出し、メッセージアプリを開く。

 そこには、かりんから異常な数のメッセージと不在着信が届いていた。

 昨日は帰宅後すぐに寝ちゃったから気づかなかったな。


 だけど、かりんは何を言っているんだ。

 まるでお別れのメッセージ? 自分が何をしたかわかっているのか?


「かりん」

「何よ」

「まるでお別れのメッセージって言った?」

「そうよ! だって、誰が見たってあんなのそういうメッセージみたいじゃん!」

「まるで、じゃないよ。あれはかりんに対してのお別れのメッセージだよ」

「はあ!? 自分で何言ってるか分かってる?」


 かりんは周りが全く見えていないようだった。

 怒鳴り声を上げているから教室中の視線は俺たちに向いていた。


 今まで完璧な美少女として振舞っていたはずなのでこんな風に怒鳴り声を上げている姿をほかの生徒の前で見せたことがないはずだ。

 だが、今は怒りで周りが見えておらず、ずっと怒鳴り声をあげている。


 かりんには何を言っても落ち着きそうになく、どうしようかと思っていると、教室にとある女子生徒が入ってくる。


「あ、唯華……」


 そう。教室に入ってきたのは唯華だった。

 かりんが怒鳴り声が他の教室まで聞こえていたのだろう。


 唯華はかりんの前で立ち止まった。


「ねえ、かりん」

「何よ唯華」

「今、自分で何をしているか分かってる?」

「あんたには関係ないでしょ! どっか行ってよ!」

「関係あるんだよ」

「は?」


 唯華は表情を変えずに淡々と話していたが、少し怒っているような気がする。


「私、真司くんと付き合うことになったの」

「はあ? 唯華、こんな時にそんな冗談言っても面白くないよ」

「本当なんだけど」


 数秒、かりんは無言になったが、すぐにかりんは真偽を確認するかのように俺を睨みつけた。


 俺は頷きながら真実を答える。


「本当だよ。唯華と付き合うことになったんだ」

「は? あり得ないんだけど!!!」

「あり得ないのはかりんの方だよ」

「私が一体何したって言うの?」


 かりんは本当に自分で何を言っているのか理解しているのだろうか。


 俺は(あき)れて、大きなため息をついた。



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