表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

第1話 彼女が浮気していた

 高校に入学してから約半年が経過し、俺――森谷真司(もりたにしんじ)にはそれなりに友達もでき、充実した高校生活を送っていた。

 だが、もし彼女――新田(にった)かりんが同じクラスにいなければ友達を作ることすらできていなかったかもしれない。


 入学したばかりのころ、俺が緊張してほかの生徒に声をかけることができずにいると、かりんがほかの生徒に俺のことを紹介してくれたのだ。


 そんなかりんと俺が付き合い始めたのは中学の卒業式の日だった。


 かりんは元気な女の子で学校でもかなり人気のある生徒だった。

 だからこそ俺は驚いたのだ。


 卒業式が終わった後、俺はかりんに告白されたからだ。

 まさか俺が誰かから告白されるような日が来るとは夢にも思っていなかったから。しかも、それが新田かりんという人気者である。


 もちろん俺は告白を即承諾した。

 そして、今も順調に交際を続けている。


 これからも俺たちの良好な関係はずっと続いていく。そう思っていたんだけどなぁ。


*****


「よっ! どうしたんだ真司? そんな浮かない顔しちゃって」


 窓の外を見ながらボーっとしていると声をかけてきたのは田中将司(たなかまさし)だった。俺が高校で一番仲の良い友達だ。

 俺はマサと呼んでいる。


「ああ、マサか。なんか最近おかしい気がするんだよな」

「おかしいって何が?」

「いやぁ、その……」

「もしかして、彼女となんかあったのか?」


 マサは俺が何を言いたいのか察してくれた。

 そう。マサが言う通り最近おかしいというのは、かりんのことだ。


 高校に入学したばかりのときはずっと一緒にいて、登校も下校も常に一緒にしていた。なんなら、ほんの一か月前までそんな感じだった。

 だけど、最近は登校も下校も一緒にしてくれなくなってしまった。


 いつも、「今日は用事があるから」とか言って俺と一緒にいるのを避けている気がする。


 俺はそのことを何も隠さずにマサに伝えることにした。


「実はこういうことがあって――」


 俺がすべてを伝えるとマサはかなり驚いたようだった。


「俺の知らないうちにそんなことになってたのか。たしかに一か月も避け続けてるのはおかしいな」

「やっぱり、そうだよな?」

「ああ、何かを隠しているようにしか思えないな」

「俺はどうすればいいんだろう……」


 マサは眉間にしわを寄せながら数秒考えこみ、俺の方を見て言った。


「よし、尾行しよう」

「は!? び、尾行!? 本気か?」

「俺は本気だ。まあ、真司が避けられている理由を知りたくないっていうなら別にいいんだけど、どうする?」

「うーん、たしかに尾行でもしなきゃ理由は分からないよな。なんか尾行って罪悪感すごいけど、仕方ない。やるよ」

「よし、決まりだ! そしたら、今日の放課後に早速実行するぞ」

「そんなすぐ!?」

「ああ、知りたいんだろ?」

「う、分かったよ」


 俺とマサは今日の放課後、かりんのことを尾行することにした。


*****


「真司、心の準備はいいか?」

「ああ、大丈夫」

「よし、それじゃ行くか」


 俺たちは校門を出て、喋っているふりをしながらかりんが出てくるのを待った。


 待つこと約五分。

 かりんが一人でスマホをいじりながら出てきた。スマホの画面を見ながら時折ニコリと笑みを浮かべているような気がした。


 この一か月、俺の前ではそんな楽しそうな顔してなかったのに。

 そんな悲しみに満ちた感情ばかりが溢れてくる。


 バレないようにかりんから少し離れたところを歩く。

 時間が経てば経つほど俺の心拍数は上がっていく。


「ちょっとストップ」

「うおぁっ、急に止まるなよ」

「真司、本当に心の準備はいいんだよな?」

「え? うん」

「わかった。あっちを見てみろ」


 マサが指さす方に視線を向けた。

 俺は後悔した。そこに視線を向けるべきじゃなかったと思った。


「え……? 嘘……だろ……」


 俺が目にしたのは楽しそうに笑いながら恋人繋ぎをしているかりんとイケメンな男子生徒の姿だった。

 かりんが俺を避け続けていた理由はこれか。


 楽しそうに笑うかりんを見た瞬間、涙が俺の頬を流れた。


 そんな俺を見たマサは申し訳なさそうに謝ってきた。


「真司、ごめんな。まさかこんなことになるとは思ってなくて」

「いや、マサは悪くないよ。今日尾行しなかったとしても、そのうち知ることになっていたはずだから」

「そっか。とりあえず、今日は帰ろう」

「ありがとう。俺は大丈夫だから」

「本当に大丈夫か?」

「ああ、大丈夫。ただ、今日は一人になりたいかも」

「そうだよな。わかった。それじゃあ、俺は帰るよ。真司、自分を責めるなよ?」

「ああ、ありがとう」


 マサは本当に優しい。

 どんな状況になっても俺のことを心配してくれる。


 マサが帰っていくのを確認した俺はスマホを取り出し、メッセージアプリを開いて、かりんにメッセージを送った。


『今まで楽しかった。ありがとう。これからは俺よりも良い人と仲良くね』


 別れのメッセージだ。


 そのメッセージを送った俺は家にも帰る気は起きず、近くの公園に寄ることにしたのだった。




読んでいただきありがとうございます!


・面白い!


・続きが読みたい!


と思ってくださった方は、ブックマークと下の☆☆☆☆☆から評価をしていただけると嬉しいです!


執筆のモチベーションに繋がりますので、何卒、よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ