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会社辞めた作家志望の半生を書き殴る

作者: 社会不適合者のワナビ

小さい頃から、物語を作るのが好きだった。

それは誰かに見せようとするために書くものじゃない、褒められたくて書くものじゃない、ただ書きたかったから書いていた。

今見返すとまあ酷い。それでも書いてて楽しいんだろうなとは伝わってくる。

自分はこれが好きで、これが書きたくて、だから書いた。

それ以下でもそれ以上でもなかった。

中学生とか、高校生とか、そのくらいになるとインターネットを覚えた。

その頃はTwitterやpixivなんてものはなくて個人サイトの時代で、各々自分がやりたいことをやりたいようにやっていた。サイトに好きな素材を使って、好きなデザインで、一生懸命作ったであろう理想の箱庭の中で自分の好きの詰まった小説のお裾分けする。

あの数多の箱庭で、本気で小説家になる為に書いてた人ってどれくらいいたんだろう。私にはわからないけど、少なくとも私の好きなサイトの管理人さんは書きたいものを書いていた。

そこには好きしかなかった。

私も真似をしてサイトの運営をした。長編小説はもちろん未完で、一年も続かなかった。それでも楽しいから書いていた。

高校生になってpixivを覚えた。

二次創作で物語を作った。完結させる事を学んだ。未完の長編より完結済みの短編を書く事を選んだ。私の小説を好きになってくれる人がいた。とても満たされて、好きの赴くままたくさん書いた。文芸部にも1年の時は勇気が無くて入れなかったけど、3年になって入らなきゃ絶対後悔すると思って廃部寸前の文芸部に入って部誌を出した。無配なのに全く捌けなかったけど、やりきった。一部だけ持って帰った。

大学生になって外部の文芸サークルに入る事を決めた。高校に比べれば人数がとても多く、ここにいれば小説がいっぱい書けると思った。部誌を持って体験入部して、その時副部長の先輩に声をかけられた。先輩は小説家になりたいらしかった。部誌を見せてもらったけど上手で憧れた。先輩はどこの出版社に出すんですか!?と私は先輩の小説を見てすぐに問いかけた。先輩はまだ出した事がないと言った。じゃあどこのサイトで書いてるんですか!?と私は畳み掛けた。先輩はサイトなんかでは書かないと言った。じゃあどうやって小説家になるんですか?と私は聞いた。先輩はいつか大作が書けたらスカウトされるから待つ!と自信満々に言った。先輩は部誌が初めて書いた小説で、一作も長編を作ったことがないらしかった。

私は結局、サークルには入らなかった。意味がないと思った。

短大生なのでそれからすぐ就活することになった。小説家になりたいとは少し思ったが、才能がある先輩だって投稿すらしていない。ああいうのは多分大人がするもんなんだろうなと思った。

でもずっと物語が描きたかった。

1秒だって書かない時間があることが耐えきれなかった。

だからシナリオライターになろうと思ったけれど、私のいた短大は小さいからみんな銀行、公務員、小売、そんな感じしか前例がなくって、普通の人は夢なんか見ないんだ、現実的などこに入って普通の人生を生きるんだ、物語を仕事にするのは無理なんだと思った。

私は創作も何も関係ない一般企業に就職した。

仕事は忙しく、ろくに創作もできない。

ああ、私は先輩だと思った。

うっすら小説家になりたいと思っているけど、言ってるだけ。本当は無理だってわかってる。だって現実は普通に生きていくのが正解だ。

何があったかは割愛するが、社会不適合者だったので統合失調症になって休職ののち、退職。一応経歴上では3年在籍したことになっているが、1年もろくに働いていない。この時に不眠症になり、数年たった今も私は薬10錠を毎日飲まないと眠れない。

死のうと思った。

障害者2級の判定が降りた。

普通の人生からその時点で外れた。

ただ勇気がなかった。

死ぬ前に長編小説を書いて全力出してから死のうと思った。10万字の小説を書いた。実質処女作なので、もうそれは酷く、今は読み返せない。それでも、今書ける全力を出せたので後悔はなかった。スッキリした。

レビューは星3だったがブログやサイトで感想がついた。

それで初めて、書くために生きたいと思った。自己満で書くのでよかった。感想なんて期待してなかった。それでも誰かの心を一瞬でも動かせたのであれば、まだ書きたいことがあると。

身寄りが終わっているので生活保護を受けながら障害年金をもらい、施設で暮らしながら、初めて出版社に小説を投稿した。三次通過した。これがいけなかった。この出版社の評価は割と甘く(デビュー者はなかなか出さないが小説になっていれば誰でも三次にはいく)自分の本当の実力に気づくのに4年かかるのだが、とにかくその時に私には才能があると勘違いしたので4年間毎月欠かさず何らかの賞に応募して落ちることになる。でも私には才能があると思った。運だと思うがシナリオライターとして商業デビューした。だけど、そのデビューで自分は作画のおまけだと気がついて、余計に「1人で」デビューしなきゃと思った。

できなかった。

26歳だった。

その時にはもう、薄々小説家にはなれないと気がついていた。

周りは結婚していたり子供がいたり、夢なんて追ってる人は誰もいなくて、つまりはもう気がついていた。

痛い。

私のやってることは痛い。

それでも夢は諦めなければ、努力すれば、書き続ければ。私が書きたいものはいつか認められる。

商業の経験から、気がついていたのに見ないふりをしていた。

「売れ線」「流行り」

プロであるということは、自分のこだわりを極限まで捨てることだ。

幸い私の担当も作画担当もかなりいい人だったから私のやりたい事を尊重してかなり自由にさせてくれて、連載は無事終わったが、その裏で別の出版社の持ち込みでブラックリストに入っていた。「売れ線無視して自分の書きたいことを推してくるけどめちゃくちゃ才能がない人」のハンコを押されていた。評価シートが軒並み高評価なのに落選。7回目の投稿で本名が認知されたんだなと思った。そりゃ3ヶ月に欠かさず1回駄作毎回送ってくるんだから覚えられるわ。これ書いたのが「(本名)」じゃなければデビューできてたかもな、と思った時になんかもう疲れてしまった。しばらく書くのをやめようと思い障害者枠で社会復帰した。

下読みしてくれた人に読者の為に書きたいんですか?自分の為に書きたいんですか?と質問されたことがある。もし後者ならブロックしますと言われたので慌てて前者です!と答えたが、今日までそれがわからずにいた。ちなみにその後色々ありブロックされた。

職場を先日辞めた。

生きている気がしなかったのだ。

在職中、書こうと思っても小説を書く時間が取れなくなり(そりゃ調子乗ってダブルワークしてたらそうなんだけど)在職している間、出版社に送る原稿が書けなかった。というか毎日が手一杯で創作自体から離れていてなんだか毎日がつまらない。気づけばこの夏一度もwordを開いていなかった。

退職に覚悟や躊躇などなく、1年半特に不満もなく在職していた会社を「趣味に時間割きたいので辞めます」というクソみたいな理由で辞めた。

趣味、趣味でいいのだ。

趣味で終わらせればいい。

なんか適当に堅実なところで正社員として働いて、社内結婚なんかしちゃったりして、それでいいはずだ。

なのに、気づいてしまった。

働きたくない。

創作を24時間していたい。

そうでないと生きている気がしない。

仕事は生きるためのお金を稼ぐ為にやるものだ。私は別に仕事が嫌いなわけじゃない。やれって言われたらやるし、国家資格も沢山持ってて食いっぱぐれないし、普通に仕事にやりがいを感じる。

でも、その仕事では息ができない。

生きるために、呼吸をするために、死なないためには一般職では無理だった。

好きなことしかできない社会不適合者なのだ。限りなく。一番最初に物語を作った時から決まっていたのだ。

私は文章を書いていなければ、物語を作らなければ息ができない。

だが、それでは生きていけない。だからプロにならなければいけない。生きていく為にはお金が必要だから。

私は読者の為じゃなく自分が息をする為に物語を書く。小説家になりたい大層な理由を今まで作って並べていたが、結論、自分の為だ。

私が生きる為に、呼吸をする為に物語を書く。お金が必要だから必然的にプロにならなければいけなくなったけれど、自分の為に物語を世に出す。

それを手に取った人が何か心を動かすことがあれば、それは私が生まれた価値や意味になる。生きていていいと太鼓判を押されたのと同意義だ。

それに今日、久しぶりにwordと向き合って気がついた。

痛い。

異端。

普通じゃない。

私はどこかで普通の人生に軌道修正するタイミングがあるんじゃないかと思っていたけれど、生きていく限りないらしい。

私は今日、息をするために夢と心中する覚悟を決めた。

普通の人生にはもう戻れない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分の書きたいものを書くのが1番だなと自分もそう思います。 [気になる点] シナリオライターをしていた時、どんな事をしていたのか気になりました。
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