日常 Ⅳ
「先生、もう質問は宜しいでしょうか?」
薫はもう一度手を上げ教師に質問を始めたのだった。
教師はあまり興味が無いのか気の無い返事をし薫の質問に許可を出した。
「では二つほどありまして、まず一つ目ですが今プリントを配られていない方は進級試験を受けることが出来ないということで宜しいでしょうか?」
そう教師はプリントを一人一人の机の上に配っていない生徒もいたのだった。
配られていない生徒達も同じ事を思っていたのだろう抗議の目で教師を見ていたのだが教師は気にしていないのだろう、その視線を受けても淡々と語り始めた。
「プリントを配られていない生徒から質問が来ると思っていたんだが、一条から質問が来るとはな。一条が言った通りプリントを配られていない生徒は今のままでは進級試験を受けることは出来ない。」
その一言に生徒達は口々と声を上げた。
主に配られなかった生徒が大半ではあるがそれでもクラス全体に響くほどの抗議の声であったが、その時に朱音が声を発した。
「皆さん落ち着いてください。まだ先生の話は終わって無いですよ。最後までちゃんと聞きましょう。」
その言葉に生徒達は渋々ではあるが声を上げるのをやめ教師の言葉に耳を傾けることしたのだった。
「……今この場で騒いで人の話を聞かないものは二度と進級のチャンスを無くそうと思っていたんだが、今回は大目に見てやろう。だが次同じように騒ぐようなら、説明も進級試験に関する質問も一切受け付けないからそのつもりでいろよ。」
教師はそう言いながら鋭い目付きで騒いでいた生徒達を睨み付けた。
睨み付けられた生徒達は少し縮こまりながら教師の話を聞く体制に入る。
「先程の続きだが言った通り今のままでは進級試験を受けることは出来ない。今までのテストや授業態度から我々教師陣から受ける価値が無いと判断したためだ。」
生徒達の中で思い当たる節があるものは皆目をそらし冷や汗を流していた。
「だが、俺達もそこまで鬼じゃないからな救済処置は用意している。それは二週間後に行われる筆記試験に五教科八十点以上取れたものは進級試験を受ける事が出きるようになる。もし連絡試験を受けたいのならば必ず筆記試験を受けにこい。でないと進級は出来ないからな。」
その言葉にやる気になる生徒もいれば反対に絶望した顔をした生徒もいる。
その様子を見て教師はため息吐き更に続けた。
「後、プリントをもらっている生徒は筆記試験に参加しなくて良いからな。この試験はあくまで進級試験を受けられない生徒の救済処置であって強制にやらなければいけない試験では無いからな。一条これで大丈夫か?」
「はい。ではもう一つの質問ですが。試験前にギフトの本契約が済んでいる生徒がいた場合はどうなるのでしょうか?」
その質問をした時、教室の空気が一瞬にして変わった。
理由は教師の目がやる気の無いものから背筋を凍らせるほどの威圧的な目をしていたのだ。
生徒達はその目で見られたとき誰一人として言葉を発せられなくなってしまい、ただただ教師からの言葉を待つだけになってしまった。
「……その質問は、受け付けることが出来ないな。」
「ど、どうしてでしょうか……?」
「此方としても答えかねる問題だからな。………質問は以上でいいな?俺はこの後予定があるからここで失礼する。後、藤宮お前も一緒にこい。」
教師は話は終わりだと言うかのように藤宮と呼ばれた生徒=海斗を連れて出ていった。
その様子を生徒達はただ見ることしか出来ず先程まで声が聞こえていた教室とは同じとは思えないほど静寂とした教室になってしまった。