日常 Ⅱ
「イヤー。あそこまで怒るとは思わなかったな。」
「当たり前ですよまったく。」
屋上で眠っていた二人はあの後探しに来た担任と思われる教師から指導室に呼ばれそのまま説教をくらっており話が終わった今話をしながら教室に向かっていた。
「それにしても、何であのとき僕が強制的に寝かせたって言わなかったの?そしたら朱音が怒られることは無かったんじゃないかな。」
「どんな理由があろうとも私も海斗さんと一緒に眠っていたのには変わりないですから。私も怒られることに文句を言う資格はありませんよ。」
「そっか。」
朱音は笑顔で海斗の質問に答える。
普通なら誰かのせいにしても文句は言われない筈なのだが彼女は誰かのせいにせず、自分も怒られて当然だと言う。
海斗は彼女のそういう性格を知ってはいるのだがもう少し自分に甘くてもいいのではないかと思うのだが、本人がそれを変える気もないこともわかっているので何も言わずただ返事をするだけだった。
「それよりもそろそろ進級の試験が始まりますね。」
「そういえばそうだな。」
「私達も今回が初めての試験になりますので緊張しますね。」
そう言いながら朱音は自分の手を見て少し笑っていた。
その手は少し震えており緊張しているのが誰が見てもわかるくらいだ。
「まあ、緊張するなって言うのは無理な話だから緊張しても問題無いと思うよ。」
「そういう海斗さんもやっぱり緊張してますか?」
「良くわかったね。」
「長い付き合いですから。でも海斗さんなら絶対に受かりますよ!」
「朱音、絶対受かるなんてそんなのはわからないよ。」
「え?」
「受かる可能性はあるかもしれない。でもそれは可能性の話であって確定された話なんかじゃないよ。受かるか受からないかは結局自分の実力になるからね。」
そう答えながら海斗は笑った。
朱音も海斗の言葉を聞き少し驚いた顔をしたが直ぐに笑顔に変わり海斗に言葉を返した。
「そうでしたね。ではお互いに受かるように頑張りましょう。」
そう言いながら朱音は自分の腕を胸の前に持っていきまるで何時でも戦えますよといっているかのようなポーズをとる。
海斗もその姿を見て優しく朱音の頭を撫でるのだった。
「そうだね。一緒に頑張ろうか。」
その後も二人は色々なことを話をしながら歩いているといつの間にか教室の前に到着した。
海斗は教室のドアに手をかけそのまま教室に入っていき、朱音も後を追うように入るのだった。