プロローグ 祝福
暗く荒れた道の中一人の少女が走っていた。
宛もなく何を目指しているのかそれとも何かから逃れるために走っているのか、それはその少女にしかわからない。
だが少女は走り続けた。
己の体が息耐えるまでただやみくもに。
その時青白い光と共に大きな音が鳴り響いた。
少女は驚き思わず躓いてしまった。
何とか体を起き上がろうとしても少女の体力は限界だった。
もう走ることも歩くことも出来ない状態だった。
そんな状態の少女に追い討ちをかけるように雨も降り始め雷は先ほどよりも大きくなり、辺りはまるで絶望を少女にあじわわせるかのようにひどい状態になっていた。
そんな中少女は涙を流した。
この絶望的な状態に涙を流したのか、あるいは別の理由で流したのかはわからないが少女は流したのだ。
そんな時、少女の近くから足音が聞こえた。
その足は軽くそして小さい足音だった。
足音は少女の近くについたときに止まりそして少女を呼ぶかのように少女の顔の少し近くで爪先を地面で軽く叩いた。
だが少女の耳には届いていないのか、少女泣き続けていた。
足音を放っていたものはその場にしゃがみ少女の頭に手を置いた。
少女もそれに気付いたのか顔を上げたのだった。
「君、名前は?」
「……え?」
頭に手を置いたものは少女に名前を聞いた。
その声はまだ幼さが残っているようなまだまだ若い少年の声だった。
少女もいきなりのことで驚き疑問の声を上げた。
「名前は?」
「……わからない。」
「そう。」
そういい少年は少女の体に触れた。
「君はここで涙を流すだけの人生でいるの?」
少女の上半身を起こしながら少年は少女に質問をした。
「……何で?」
「そう見えたから。君はこのままただ何もせずに涙を流しそしていなくなってしまおうとしているように。」
「……。」
「もう一度聞くよ。君はここで涙を流すだけの人生でいるの?」
少年はもう一度少女に質問をした。
まっすぐ少女の目をしっかりと見つめ少女の言葉を待っていた。
少女はそんな視線から目を背けるように一度視線を地面に落とした。
だが、それも一瞬の出来事で自分の今まで涙で濡れていた目には強い意思を宿し。
「このままで……終わりたくない!」
「……うん。なら一緒に行こう。」
少女の意思を読み取ったのか少年は少女の前に手を差し伸べ少女にそう言った。
少女は差し伸べられた手を一度見てその後少年の顔を見ながらその手に自信の手を重ねた。
周りの天気は今の少女に祝福をもたらそうとしているのか、雨は止み雷も消え分厚い雲の間から一筋の暖かな光が宿っていた。