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復讐


矢を一身に受けたテツではあったが、幸い投石は直撃せず僅かに意識はあった。


「う、、、ぐぐ、、ぅぅ、、」


どういうこと?何があったの?俺は狙われたのか?あぁもう痛みも感じない…………。


落ち行く意識の中でテツはすがるような思いでまだ試していない回復魔法に期待を込めて念じる。


回復しろ回復しろ回復しろ回復しろ回復しろ回復しろ回復しろ……………………



全身に刺さっている矢が押し返されるように抜けていく。意識が明確になり痛覚とともに回復する高揚感がテツを包み込む。

うつ伏せのままではあるがひたすら回復を念じ続ける。


しかし矢の雨は止まず回復しては射られている。が、徐々にテツの回復が押し始める。



「撃ち方止め!!!」


うつ伏せのまま動かないテツを仕留めたと思い込んだ王国警備隊の隊長は、矢の一斉射撃を止め様子を伺う。

投石は命中しなかったがあれだけ矢を射られたのならば魔王といえど致命傷にはなるだろう。


しかし勇者デンシュウを倒した魔王だと聞くがこうもあっけないものか?

隊長は疑問に感じ、不用意に近づかない。

数百メートル先の魔王の様子はうつ伏せに倒れて動かないただの人間である。


見たところ普通の人間であるからといって油断してはならない。

魔族の見た目は人と近いところがあり、人間に擬態する魔物だっている。


しばらく様子を見ているとテツは立ち上がり森へ向かい走り出す。


突然の魔王復活と森への全力逃走で王国警備隊は面食らい行動が遅れる。

慌てて隊長は追撃の命令を出すが、森の中へ入られてしまえば追う手立てはない。

王国警備隊はあくまで王国の領土であるヒルバニアを守ることが役割なのだ。

それゆえ魔王を追い返したので王国警備隊としては十分な勝利といえる。


「再び魔王の接近を許すわけにはいかない!王国警備隊権限により、無期限でガルネリ森林への進入を禁止する!

森林内部のいくらかの集落にもこの通達を出し、強制的にヒルバニアの街へと避難してもらう!魔王の討伐、森林の安全が確認されるまではこの禁は解かれない!」


すぐさま命令を街へ出し森林内の集落へ伝令を走らせた。街門近くにある警備隊の本部へ隊長は戻り王都への増援の嘆願書をしたためていた。


そこにギルドマスターバンクスがやって来る。


「隊長さん、助かったよ。感謝する。でもあの魔王は不死身だ。俺は首を刈られ燃やされ灰になったあいつを見た。

それでも生きていてデンシュウを真っ二つにしちまった。デンシュウの惨い死体を見て動揺しているところをグリーンドラゴンに襲われてボロボロになって逃げてきたんだ」


バンクスは王国警備隊に街を救われた安堵、

魔王がまだ生きている不安、魔王と対峙する以前にグリーンドラゴンに襲われて逃げ帰ってきた屈辱。

そして失った仲間達への自責の念でバンクスは発狂しそうになる心を鎮め隊長へ森で起きたことを話す。


王国警備隊とギルドは良好な関係であり冒険者から王国警備隊へ、又は王国警備隊から冒険者へ等と見知った顔も多くいた。


隊長はバンクスの心中を察し、


「気に病むのはよしてくれよギルドマスター。冒険者の軍勢が壊滅したのはあなたのせいではない。

一重に不運であっただけのこと。冒険者のあなたには運の重要さが分かるでしょう」


「運か、、、そうだな」


「何も成果がなかった訳ではない、信じがたいがあの勇者デンシュウの屍を確認された。これは非常に重要なことだ。

加えて魔王の生命力の高さも今回の迎撃で知ることが出来た」


「だがよ、一流の冒険者達が半分も行方知らずだ。恐らくもう生きてはいまい。これに加えてガルネリ森林は立ち入り禁止だ、ギルドの維持も難しい」


「確かにヒルバニアのクエストはガルネリ森林由来のものが多いが、立ち入り禁止はこの街の防衛の為だ。それは恨まないでほしい。

あと余計な世話かもしれないが、ギルドを立て直せるのはマスター、あなたしかいない」


「けっ、隊長から世辞を貰うなんて耄碌したな俺も。分かった、すぐにギルドにおいての使命を全うしよう!」


「それは重畳。引き続き警備隊は森林側への警備と迎撃体勢を継続する。王都には魔術師と勇者の派遣を要請する。しばらくの辛抱だ」


「別の勇者か…デンシュウ以上に人徳のある勇者なんざ知らねぇが魔王討伐の為には仕方ないな。

ギルドも最上のバックアップを約束する!」



その時だった。



「て、敵襲!!!再び魔王が襲来!!」


「なんだと!?すぐさま弓兵の準備を…



言いかけた所で警備隊本部は業火に包まれた。

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