壊滅
一瞬赤く染まる空を目撃した冒険者達は何事かとざわめく。
「これは魔王の仕業なんじゃねーのか!?」
「馬鹿を言うな!ちょっと空が明るくなっただけだろ?流れ星だよ」
「でもなんか不気味だぜ」
「しかしこんなときに一体なんだというんだ」
その時高見台から見張っていた兵士からの伝言が届く。
「ここから北東5㎞先で森林火災を確認!その際空高く火柱が昇ったもの!!原因は不明!!」
疑念が魔王の仕業だと確信に変わる。
「空を染め上げるほどの魔法だと!?」
「あの燃えにくいガルネリ森林の木々で火災だぁ!?」
「お、おいやっぱりデンシュウはやられちまったんじゃ、、、」
「この野郎!滅多なことを言うんじゃねぇ!デンシュウは一瞬であの魔王を切り捨てたんだぞ!!」
「俺らにゃ荷が重いよ」
冒険者達の士気がみるみる下がり、逃げる準備を始める者さえいる。これではガルネリ森林に踏み入る所か、ヒルバニアの街だって危ない。その時だった。
「黙れ!!!!お前ぇらはそんな腑抜けだったかぁ!?この勇敢なる冒険者の街、ヒルバニアの冒険者は魔王如きに恐れをなし背を向けるか!?魔王はいずれにせよヒルバニアを呑み込み王都、果ては王国、世界全てを蹂躙する!今逃げて恥を抱えたまま死ぬか、ここで戦い勇敢なるヒルバニア冒険者として死ぬか、それとも皆で力を合わせ勝つのか!賢明で勇敢なるお前ぇらならどうするべきか分かるだろう!!」
耳をつんざく大声量を発するのはあのギルド受付にいた髭面である。
この男はヒルバニアのギルドマスター、バンクスと名乗る。元々B級の冒険者であったが、40歳で一線から身を引きギルドマスターをしている。実力は健在でヒルバニアの冒険者達からも篤い信頼を得ている。
「そして俺はこの目玉であの魔王を間近で見てんだが、大したことはねぇ。デンシュウのが一枚も二枚も三枚も上手だ!!勇者デンシュウ、あいつが万に一つも遅れを取ることは無い!」
髭面のギルドマスター、バンクスの発破に冒険者達の士気は持ち直す。
「いざ!進め!!」
号令と共に松明を持った冒険者の軍団が行進を始める。100人にも及ぶ一流冒険者は高見台からの伝言通り北東に進路を取り進み出す。
途中幾度かゴブリンやウルフ等と遭遇するも一流の冒険者達は軽く蹴散らしその歩みを止めない。
それでも夜の森林で100人の所帯だと進行速度は遅く目的の火災地点に到着したのは出発してから2時間掛かってしまった。
すでに火災は鎮火しており、猛烈な炎に晒された大木は消し炭となり強烈な炎の魔法を行使されたのだと悟る。
ここは地獄だったのだろう。
「まだこの近くに魔王はいるかもしれない!手分けして探し出すのはやめだ!こんな魔法を少人数で受けたら全滅だ!全員横一列で歩幅を合わせしらみ潰しに進む!先ずはこの地点より南に直進するぞ!」
髭面バンクスが号令を飛ばし冒険者達は横一列で2m以上の間隔を取りながら進む。
夜を徹して広大なガルネリ森林で捜索、索敵が行われたが遂に夜が明け始めた。
時間にして6時間は森林を浚ったが結局魔王を見つけることは出来ず、途中で現れる魔物の攻撃を受けてしまい負傷する者もおり体力の限界も近かった。
「仕方ねぇな」
バンクスは号令を出し、一度街へ戻り休息をとることにした。もう空が白んでいるなと空を見上げた時だった。
「おい、、、嘘だろ、、、」
そこには無惨で凄惨な英雄の死体が枝に引っ掛かっており、小鳥がその肉を啄んでいる所だった。
「ぐあぁぁぁぁぁ!!」
少し離れた所で悲鳴が聞こえる。
「グリーンドラゴンだぁぁ!!」
なんかグリーンドラゴン無双になっちまったな




