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誘拐


王都に着いた。



大変巨大な街壁が目前に広がりその内部が都になっているのだが、あまりのスケールのデカさにテツは感動した。


入門検査をジーノはギルドマスターの証を以てパスしテツはその付き人としてパスした。


門から街道が中央の王城まで真っ直ぐに伸びており、これは空から見れば王城から放射線状に伸びる道の一つであることが分かる。


大勢の人間が路上を行き交い、街道の石畳の上をやんごとなき人が乗った馬車が走る。

端には出店が軒先を合わせて出店が並び、

大変な活気で客を呼び込む。



門をくぐったばかりのテツは正面に遠く小さく見えるのが王城だと聞いて王都の規模の大きさを知った。


さぁ今から王様の所へ行ってなんだかんだ褒美や爵位なんか貰ったりするのかと思うと、ジーノは王城に向かうのは申請が通ってからだと言う。

それまでは宿で待機するそうだ。

申請が通るまでは2日ほど時間を要するそうでそれまでは自由にしていいそうだ。


ジーノはマウリス出身だが王都にある学校で学生時代を過ごし、少し紆余曲折あって冒険者になったそうだ。

まぁ深い所までは聞かないでおこう。


いざ自由にしてくれと言われてもどうすればいいか分からない。

以前ジーノからグリーンドラゴン討伐の手付金として貰った金貨の余りを持ってぶらぶらと都を歩く。


宿の夕食の時刻までは大分余裕があるのでとりあえず出店の食べ物を片っ端から購入していくのだった。


テツは元々食べて太ったタイプで大食いの早食い。この異世界に来てからはあまり良い食事にありつけず少し痩せてきていた。

これ幸いとテツは少食で我慢してきたのだが、都の出店に並ぶ食品の食指刺激たるや辛抱ならないもので、

金はあるもんだからバクバク食べてしまう。


美味いもの不味いもの口に合う合わない一通り食べて大満足のテツは悲しいかな宿に戻って寝ようと歩きだした。


すると人混みからずっとテツの食いっぷりを見ていた背の高く背中に大剣を背負った大男が後ろからテツの肩を掴んだ。


「おい待て!」


強く肩を掴まれテツは驚いた。


「なんですか!?」


「少し話があるから着いてこい」


大男はテツの腕を掴み強引に歩き出す。


テツはこれはヤバイのに絡まれた。こいつに連れてかれたら確実になにかロクでもない目に遭う。


「離してくれ!!」


テツは大声を出して手を振りほどこうとするがほどけない。通行人たちはテツの大声に反応するが、大男の危険な雰囲気に次第に目を反らして知らないフリを決めこむ。


かーっ!都会人って奴は異世界でも我関せずってか?


テツは仕方ないと諦め大男に引っ張られていく。


こんな分かりやすい悪党なんかいるか?

案外こういう奴がなんかのキーマンだったりするよな?

ま、最悪魔法を使って倒せばいいや!


テツは案外楽観視していた。


しばらく着いていくと街道脇の路地に入り、表通りとは真逆のスラムな香りのする薄暗い町並みの袋小路まで連れてこられた。

そこには大男の仲間と思われる武装した男共が複数人おり、

退路を断つように取り囲む。



げえーっ!本当に悪人みたい。こんな白昼堂々と人拐いなんかする?都の治安やばいだろ?



「おい!お前の名前はなんだ?」


大男が睨みを効かせて言う。


「テツだ。なぜ俺をこんなところに連れてきた」


テツは堂々として答えた。


「テツ?そんな奴名簿にあったか?」


「いや、ないな」


「まーたドズルの人間違いか?」


「こいつどうするよ?殺すか?」



大男の仲間と思われる奴等が口々に喋り出す。


ははーん。大方どこかのお偉いさんを拐おうと企てたが間違えてしまったみたいだな。

とんだ間抜けな誘拐犯もいたもんだ。

さてこいつらをさっさと一掃してしまうか?

いや、も少し様子みよう。


「おい!嘘をつくな!お前はデシュバルト公爵家の者だろ!!」


大男は声を胸ぐらを掴み声を荒らげる。


「離せよ!知らねーよ公爵なんて!そもそも公爵の関係者が一人で街をフラフラするわけねぇーだろ!」


「そりゃそーだ!」



取り巻きの男達が笑う。



「くっそー!人相書き通りだったのによー!!なら死ね!」


大男ドズルはテツの顔面にパンチを入れて吹き飛ばした。テツは反応出来ず気絶した。大男は背中の大剣を引き抜きテツを斬り捨てた。


「あーぁ、殺しちまった。」


「賭けは俺の勝ちだな!ドズルにゃこういう仕事はできねーよ」


「ドズル、お前は目立ちすぎだから次は俺の番な!その遺体片付けてとけよ」


「うるせー!勝手にしやがれ!」



テツの身体は身ぐるみを剥がされた後、布袋に何重にも包み木箱に入れられ都のゴミ焼却場の敷地に捨てられた。

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