いざ王都
夕暮れ時、テツはマウリスのギルドに帰ってきた。
「ジーノさん!戻りましたよ!」
「お?グリーンドラゴンはどうなった?」
「それが、グリーンドラゴンは見つからなかったんですがこんなものを仕留めて来ました!」
テーブルに魔王デルガの遺体を置いた。
ん??なんだこりゃ??
ジーノはグリーンドラゴンを見つけられなかったのは仕方ないとしてテツの持ってきた物体を見つめる。
「これは、もしかして魔族?」
「いや、魔王デルガって言ってましたよ」
「は!?ま、魔王デルガだとっ!!?」
ジーノは驚き腰を抜かした。
テツはガルネリ森林で魔王デルガを倒した経緯を説明した。ジーノは頭が混乱する。
いやいやいや、そもそも人間の使える魔法の属性は一つだけなんだが?こいつは水魔法も土魔法も火魔法すらも使いこなすのか?
しかも新興魔王のデルガを軽く屠って来やがった。見たところセンターギルドからの調査書と特徴は間違いなく魔王デルガだ………。
テツこそ桁外れの人外だ……。
翌朝
ジーノは慌ただしく荷物を揃え、略礼服に着替えギルドの全予算を使いマウリスでは上等の馬車と馭者を用意し、
テツにもフォーマルな服を用意し携帯食糧の調達に走る。
昼前には旅支度を整えたジーノはギルドを閉めてテツを連れて馬車に乗り込み王都へと出発した。
ジーノはテツの討伐した魔王デルガを直接王都に運び、報告に上げることとした。
本来ならばセンターギルドから王都へと報告を上げるのが筋であるが、
今回討伐したのは新興魔王の中では最もポピュラーで人間に敵対する魔王であり、そもそも一冒険者が単独で魔王討伐と言うのは前例がない。
センターギルドに報告を上げていたら確認やら事情聴取の類いで時間を取られ、なんだかんだで手柄まで奪われてしまいそうだ。
今回はこのマウリスギルドの冒険者が討伐したのだと、偉業を成し遂げた新しき勇者はマウリスギルドの冒険者なのだと誰にも邪魔されず喧伝したかったのだ。
マウリスから王都までは北東に馬車で一週間程を要する。馬車でテツはジーノからこの異世界の情報を把握していく。
一年は365日であるし、一日は24時間。
ガルネリ森林というのは大陸の西の果てであり、中央より更に西は魔領域であってそこで誕生した魔族や魔王は時折人間領に攻めてきたりする。
魔領域というのはガルネリ森林の西側の世界や、トッピログ砂漠、アウデアン荒原、ルールベイ地方など世界各地に点在する領域で、人間と魔族が争ったり或いは友好関係があったり、無関心であったりまちまちである。
大陸には80もの国と20もの魔領域があり王国は大陸でも4番目に大きく強い国である。
王国は基本的に魔領域とは敵対しており、特にガルネリ森林の新興魔王デルガは過去に王都に表れ、都民を拐っては殺害したりして大変損害をあたえていたのだ。
道中は平和なものであった。
しかしテツは乗り心地が悪く、元の世界で乗っていた愛車のサスペンションの形状や仕組み等を思いだし、暇があれば改善してやろうと考えていた。
そうこうしているうちに王都についたのだった。




