京都伏見の彼岸花
北野亜紀は亡き父の跡を継ぐことで精一杯の私立探偵見習い。そんな彼女はひとりのシリアルキラーと対峙することになる。犯罪心理にも疎くいつまでも現場には慣れないが、自分の思う善悪を貫き通そうとする彼女の成長物語。
鮮やかな紅に染め上げられた斜面は、広く澄み渡る青空とは対照的に陰鬱とした雰囲気を醸し出していた。
神社の境内にて、鳥居と同化して朱一色となった風景は私の「何か」を奪い、不思議な世界へと誘う。
まるで、茜色に染まる坂が私の「人としての新たな道」を敷き直してくれたかのように――
私の人生は、最低最悪のものだった。
幼稚園の頃、人の輪に入れさせてもらえなかった。
小学校の頃、一人でいることを馬鹿にされ、教師にも意識され避けられた。
中学校の頃、よく話しかけてくれた子は実は私のことを裏で嘲笑っていた。
そして今――
私は、とてつもない快感を感じている。
幼稚園の頃に私を見るだけで笑っていた男共。
小学校の頃に私のプライドをボロボロにしてきた女共。
中学校の頃に私を嘲笑いSNSで個人情報を世界中にばらまいた集団。
私の身体目当てで付き合って、ハメ撮りをネットに拡散した彼。
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな。
この手で闇へ葬り去った。
ハハッ、今の気持ちはどうだって? そんなの嬉しいに決まってる。
幼い頃から私は孤独だったけど。
神は、神様だけは、私のそばにいてくれてたんだって。
そう、心から感じられた。