弱小ギルドの会議
「スレ確認した?」
翌日、三人が集まっている中級者ホーム。
開口一番に俺は言った。
「え?なんかあったのか?」
「今から見るわ」
「お久しぶりですノーマルさん!」
三者三様の返事。そしてノルーさんはなんか元気だ。
「ハイドーン!刮目せよ」
「なんだこれ?地図?」
「見つけようと思ってたのに」
「所々光ってますね、なんですかこれ」
スクリーンショットをドーン。
「恐らくイベント地点。昨日の掲示板はそこそこ祭りで、俺は叩かれてたらしい」
あの後スレを確認したベルッサさんから「自分、メッチャ殺害予告されとるで」と言われた。
そりゃ誰にも知られずに密かに探してようやく手掛かりを見つけたイベントの情報が突然ばら撒かれたら誰だってキレるわな。怖いよぉ。
「いや自業自得でしょ」
「向こうからやって来るイベントが悪いんだよぉ」
「貴方が歩けばイベントに当たるのよ。自覚しなさい」
「もっと平等にプレイヤーを愛してやれよぉ」
多分唯の泣き言に聞こえてる事だろう。お前に言ってるんだぞフィーさん、聞いてるかその向こうのお前だよファイス。
「そんで、俺たちに何させたいんだよ」
「そりゃお前、世はまさに大イベント攻略大会!一緒に混ざって遊ぼうぜ!」
「マジかよ。強豪ギルドが出張ってるはずだろ、正気か?」
「いいわね、やりましょうよ。どうせ暇でしょ?」
「そうですよっ、ギルドの名前を挙げるチャンスですよ!」
「決めろギルマス。気軽のままで良いのか?」
「なんなら私、リアフレに何度か間違えて気楽、って紹介してるわよ?」
「私は、たまに、奇妙、と間違えてしまします」
「俺、気楽と間違えるなー」
「お前ら酷いぞ!俺がつけた名前なのに間違えるなんて!」
「だってダサいもの」
「お前の考えたギルド名言ってみろ!」
「ナマルと愉快な下僕達」
「前と違わない?」
「ダッセ!ダッセ!」
「こっちの方がキャッチーかと思って」
「欲望が悪化してるんだよなぁ」
「え?ノーマルお前知ってたの?」
「拙者の案、極東島国の集い」
「乗っ取る気マンマンじゃねーか!」
「メンツに極東島国要素ないし、貴方だって侍要素ほぼないじゃない」
「そうなったら私は和装着ますよ!」
「案外ノリノリなのねノルー」
「拙者、ナマルさんのだったら首輪付けてたよ。あればだけど」
「そうだったらリードでも付けてあげるわ」
「ナマルゥ?」
「冗談よノルー」
いや怖いよノルーさん。突然背後から肩掴んで顔を覗き込むとか、完全にホラーだったよ今の。アレやられたら俺泣くよ?
「この中じゃ、普通に良かったのはノルーのよね」
「なんとか四世とかゴミだわ」
「アルメダス四世ィ!」
「ギルド名に何で人名付けてんだよ」
「おまけにいないからね、アルメダス」
「実際にナマルさんがいる愉快な下僕達は良ギルド名だった?」
「ギルドの言い出しっぺじゃねぇのにそれはねぇよ!」
「じゃあどうすればいいのよ」
「盟主アイナスと有能な部下達なら気に入るかよ」
「俺が無能みたいじゃねぇかよそれじゃあよ!」
「倒置法まで使って強調することかしら?」
「ウェーイ、全体回復出来なくて、火力も低くて、速くも無いのだーれだ」
「もういいだろこの話は!ノルーさんの聞かせてくれよ!」
「そうね。聞かせてあげなさいよ、このセンスのない男に」
「倒置法がよっぽど気に障ったんだろうなぁ」
「私のは、その、あの」
「ほら、男どもじっと見るの止めなさいよ」
「メッチャ近寄ってるナマルさんこそ離れようぜ」
「知ってるお前らは別にどうでもいいだろ!あっち行けあっち!」
「ム、ムーブオンワールド、です」
「言えたじゃねぇか」
「言えたじゃねぇか、じゃねぇよ!なんで!お前は!さっきより近づいてんだよ!」
「そうよノーマル、離れなさいよ」
「そういうなナマルはさっきからガン見すんのやめろよ!」
「さっきナマルさんがやってた事してるだけ」
「さっきノーマルがしてたことよ」
「入れ替えるならまだしもお互いの行動を取り入れんな!」
ナマルさんとお互いに無言で顔を見合い、そして二人で一緒にアイナスに向けて肩をすくめる。
結果?ノルーさんに右肩掴まれたよ。顔ちょっと右に傾けると目に光のない顔が3センチの所にあって正直泣きかけた。
「ってかなんだっけ?ムーブ?」
「聞いてねぇのかよ、頭アイナスかよ」
「俺がッアイナスだよ!人の名前罵倒に使うんじゃねぇよ!」
「自分の名前を使われて罵倒されてるって思おうのね、貴方」
「計ったなッ、計ったな!」
「正解はムーブオンワールドでした」
「え、なにそれカッコいい」
「意味は分かるかしら?
「拙者、外来語は良く分からぬに御座る」
「おう古代人ロールプレイ挟んで逃げるな」
「古代人じゃねーし、侍だし」
「しいて言うなら中世かしらね?」
古代よりは近くなった。なったけどなんか違う。
「ええと、ムーブって動くだろ?世界だろ?オン、オン?乗る?え?どういうこと?」
「一応単語に出来た拙者より酷ない?」
「ええ、貴方よりかなりひどいわ」
「あの、あんまり差はないと思います」
まさかノルーさんからツッコミが入るとは思わなかった。
背後から味方に刺された感じだよ。だがそれでいい。そっちの方が気が楽。
「で、どういう意味?」
「世界を進む、って感じの意味よ」
「意味もカッケェ」
「やーいクソダサネーミングマン」
「センスアイナスマン」
「だから俺の名前を罵倒に使うんじゃねぇ!」
「罵倒自覚マン」
「ボソッと言うんじゃねぇこのヤロウ!」
完全に油断してる所に飛び掛かってくるんじゃねぇ!やるかテメェこの野郎!
ポリューションして、ボッコボッコにしてヒールして、またボコす。悲しいけど、俺に喧嘩売るってこう言う事なのよね。
「それで、どこから手を出すのかしら?」
「互助会から話が来れば全員でそっちに合流しに行くけど、俺達で動く場合どこだろうな」
「そうなの?」
「向こうには一応話してる。こっちとしては高レベルプレイヤーと足並み揃えられるからイベントクリアに近くなる、向こうは少ない人材が多少増える。これでウィンウィンの関係よ」
「それはいいけど、私たちはどうしようかしらね」
「俺の知ってる所とか愚連隊以外全部信仰系だから特には」
あっ、そういや砂漠の連中。別に良いか。人数少ないし。
「私の方は魔法使いだらけだからここは歓迎されないわね」
「私の方は、そういった知人はいません」
「アイナスは、駄目だ。死んでやがる」
「しんでねぇょ、くそ、こいつつよぃ」
語尾が貧弱だ。まあ、リスキル紛いな事されたらそうなるわな。
「で、なんか伝手あったりする?」
「街中探検隊、街中っつっても、あちこちにある村とかも含めて細かいクエスト達成して回ってる連中だな」
なにそれ楽しそう。いやホント、ほのぼのしてて楽しそう。
「倒れてる間にチャット来た」
「来た、じゃないがな。内容を話せ!」
「なんで来た段階で話しないのよ!これだからアイナスなのよ貴方は!」
「やめっ!踏むな!蹴るな!」
ナマルさんと一緒に踏みつぶしてやるよお前なんて!オラッ!ギルマスオラァ!
少しするとナマルさんが先に満足したから俺も止める。
アイナスが弱弱しく、机の縁を掴んでようやく体を起こす。
「そ、それでだな。村クエで面倒事貰ったらしくて、手の空いてる知り合いに声かけまくってるらしい」
「それで、どんなのよ」
「イノシシ大量発生」
農家激怒案件じゃねーか。
「そんな私たちを猟師みたいな扱いで」
「害獣駆除の業者扱いだな」
「で、どうする?どうせ暇だろ?」
「腑に落ちないわね」
「そっすね」
「いったい何がふに落ちないんだよ」
「貴方に主導権握られっぱなしなのが」
言うと思った。絶対言うと思った。




