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着いた

俺は二十日かかるって言われた。

それがどうだ?二日で付いた。馬が飛ばしに飛ばしてくれたおかげなのだろう。馬が人間の十倍の速度で移動する恐怖。

ローンワーズに付いてすぐに女騎士さんの案内で赤レンガ造りの豪邸へと向かわされる。

冷静に考えたら騎士、聖職者×3ってなかなかバランスの悪いパーティーだな、これでデュラハンを倒せと?ワンチャン行けるか?


明るい茶の髪と髭のおっさんが出迎えた。あの、髪は短いんだけど髭が首元まで長いのは一体どういうセンスなんだろうか。


「聖女を目指す者よ。貴方には負傷した兵の回復を頼みたい」

「承りました」

「聖騎士を目指す者よ。貴方には呪われた兵の浄化を頼みたい」

「お任せください領主様」


威厳たっぷりな声で二人にお願いしていく。戦力が分断されたな、俺が考えてたイベントとは違うのか。


「聖職を極めんとする者よ。貴様にはデュラハンの討伐に向かって貰う」


え、俺だけレベル違いすぎない?なんで貴様呼び?なに?領主様プレイヤー嫌いなの?まあそりゃ嫌いだよな、どこからともなく見知らぬ奴がフラっと現れて荒らすだけ荒らしていくんだから。

果たしてイベント後にどれくらい状況がリセットされるんだろうか。皆無、なわけないよな。だったらデュラハンどれだけ発生してるんだよ。局地的時限式にデュラハンが発生する土地とかなんで住んでるんだよって話になるからな。


「臆したか旅人よ」

「いや別に。それがお仕事なら」

「無論、一人でなど言わぬ。フィロル、手伝ってやれ」


後ろの方で「かしこまりました」と女騎士さんの声が響く。フィロルさんって言うんですね。


「では皆の者、早急に取り掛かり収めよ」


言うだけ言って偉そうなおっさんどっか行った。怪我の一つでもしてれば素直にわーいデュラハン狩りだーってなるけど、なんかムカつくからテンション上がらない。


「では向かおうさむらい」

「あっ、ノーマルハンドって言います」

「そ、そうだったか。私はフィロル、好きに呼んでくれ」

「んじゃフィーさん、デュラハンの面拝みに行きましょうか」

「デュラハンに頭は無いのだが」


えっ、そうなの?





「マジだ、頭ねぇ」


小高い丘から森の中にある広場にいるデュラハン君を貰った棒のような遠眼鏡で眺める。

普通デュラハンって頭を小脇に抱えてるんじゃ無いの?乗ってる馬も首無いし、きっと愛馬なんだろうな。

待ってな、すぐに相棒共々浄化してやるから。


「どうするつもりだ?」

「無論、正面突破よ」

「それでどれだけの被害が出たと思っているんだ」

「アンデッドなら浄化が良く通る。この凡百の聖剣の前にはただの雑魚よ」


聖剣抜いて真っ直ぐ空に掲げ、そして勢い良く振り下ろしデュラハンへ切っ先を向ける。今からお前を殴りに行くぞ。


「凡百の聖剣で何ができる」


ん?フィーさんの声色が変わった?気のせい?


「そんな、弱い武器でデュラハンを倒せると本当に思っているのか?」

「思ってる」


ノータイムで答えてやるよ。出来る。例え浄化が通らなくてもダメージが1でも入れば倒せる。倒すのだ。


「なんでそんなものを使う。もっと強い武器があるだろう」

「好きだから」

「それで死ぬぞ」


散々スケルトンに殺されてるよ俺、普通にリスポーンするけど。NPCはリポップしないのか、なんか言ってる事妙だと思った。


「凡百の聖剣が好きだから、コイツが最高の聖剣だって知らしめるまで死ねないな」


好きな事をして、好きな事で生きていきたい。そう思うのは考え無しで欲張りだって分かってる。ならゲームの中でくらいそんな人生選んでいいだろ。

俺は好きな物の価値を周りに教えたいだけなんだ。


「好きだから」


フィーさんが溢れるように呟いた。


「だってそっちの方が楽しいでしょ?」


振り返って笑顔を見せつける。あっ、俺円柱被ってたわ。


「付き合ってあげますよ。私も、好きな物を見つけたい」


これ、NPCにAIインストールされてるなら変な影響与えちゃったかな?別にいっか、楽しいし!


「じゃあ一直線で行こう、神速を貴ぶってやつだ!」

「本来なら長期戦より短期戦の方が勝ちやすいって意味ですがね」


そうなん?物知りだなー。





「首、私の、首」


盾と長剣持って馬に跨ったままデュラハンさんなんか言ってる。首探してるの?ごめんね、倒すよ。レベル見えないけど二人いるし勝てるでしょ。


「我等が神の名において、汝の敵を浄化せん。ピュリフィケイション!」


一番槍は誉れ!これまで真っ当に見てなかったけどヒールだろうと浄化まろうとエンチャントすると元々弱々しい白だった聖剣の剣身が青白に強く光るんだね。

高い位置のデュラハン本体ではなくデュラハン馬の側面を攻撃する。

HPバーの四割吹っ飛んだ。スゲェぜ凡百の聖剣、お前今最高に輝いてるよ!


「将を射んと欲すればまず馬を射よ!」

「分かった!」


続けて俺の後ろから体勢の崩れた馬の腹部を貫いた。ダメージ二割。マジかよ、エンチャント凡百の聖剣強すぎない?もしかして信仰ステって神聖スキルのダメージに直結してんの?スケルトンに使ってた時の約三倍になってるから跳ね上がってる?今なら信仰ダンジョンも踏破できる気がする!


デュラハンさんが剣を振りかざし、俺は後ろに跳んで逃げ、フィーさんは防ぐも弾かれて俺の所まで転がってきた。

起き上がるのを手伝っていると馬を走らせ広場を駆け回り、こちらへと向かって来る。

やっべ、まだこっち体勢整ってねぇ。ならやるべき事は一つ。

タイミングを合わせ、跳び上がりながら浄化をエンチャント、そのまま剣を馬の首断面へと突き刺す!

馬が暴れ出し左右に体が揺さぶられるがピュリフィケイションを唱える。

すると俺は聖剣から手を離していないのに吹き飛ばされて空中を回転しながら飛んでいく。なに?なにが起こったの?


倒れた馬の側で片膝をついているデュラハン。剣も盾も地面に落としたまま動かない。

やがて首から黒い靄が溢れ出し、馬の体も靄へと変わっていく。

靄が剣と盾に集まり、太く長い形になったソレを彼が掴み立ち上がる。

靄を振り払うように勢い良く構えると巨大な両手剣へと姿を変えた。


「気を付けろノーマルハンド、これからが本番だ」


フィーさんが何か言って来るが、そんな事より覚醒シーンカッコいい!デュラハンさん主人公やん!


振られる大剣を屈んで避けたフィーさんが胸板へと剣を突き立てるが鎧に弾かれ、振り回され一周して戻ってきた大剣が脇腹へと叩きつけられる。

肺から息を叩き出される様な声を上げて崩れ落ちるフィーさんへ、介錯をするようにデュラハンが大剣を掲げる。

なんか眺めてたけどすぐに走り出す。だめだな間に合わない。


「我等が神の名において、汝の痛みを取り除かん。ヒール」


ならやれる事をやるだけだとヒールを唱え、フィーさんへ聖剣を投げつける。

飛んでってる聖剣も青白く光ってるしいけるやろ。問題は間に合うかどうか。

聖剣がフィーさんに当たるのと同時に大剣が彼女をすり抜けた。


ど、どうだ?間に合った?


「私は、今、切られたはず」

「しゃあ!大成功!」


走り続けたまま落ちた聖剣を拾い、浄化を唱えデュラハンさんに切りかかる。

大剣で防がれるが、HPバーが五分ほど減った。弱点属性だと貫通入るのか、浄化様々お世話になっております!


腰を据えての殴り合い。

どれだけヒールで回復しただろう。

どれだけ浄化を掛けて殴っただろう。

やがて地面に膝をつき大剣を支えにしているデュラハンと、青白く輝く聖剣を高く掲げる俺。


「介錯しもす」

「首、無いよ」


フィーさんがなんか言ったけど気にしない。

本来首がある場所へ向けて剣を振る。

大剣が黒い靄になり、首へと向かい球状に変化して地面へと落ちる。

その靄をデュラハンが両手でゆっくりと拾い上げて胸に抱き、そして地面へと倒れる。

やがて全身が白い光の粒子になって空へ登って行った。


「首、あったな」

「首、って言えるのか?」


首だよ。切ったら落ちたし抱えてたし、やっぱり首だよ。

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