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遭遇

ステータスって難しいんですね

教会の長椅子に腰掛けて聖書を開く。


我等が神の名において、汝の痛みを取り除かん。ヒール。

我等が神の名において、暫しの間我が痛みを取り除かん。リジェネ。

我等が神の名において、汝の不調を取り除かん。キュア。

我等が神の名において、汝の敵を浄化せん。ピュリフィケイション。


我等が神の名を教えてくれよ。どんな存在を信仰してんだよノーマルハンド君は!俺?俺は勿論凡百の聖剣。

そうだよ、そんな事より聖剣だ!ステータスが2足りない!まだ割り振ってないから4足りない!

このゲーム酷いよ、装備は出来るけどステータス不足だと超キツい。

剣と鞘が超強力接着されてる様に固いし、ようやく抜けたと思ったら両手で持っても超重くて持ち上げられない。

これは非戦闘クエスト消化してレベル上げなきゃ。

聖書を閉じ、おもむろに椅子から立ち上がり教会から出て行く。

去り際に「貴方の道に我等が神のご加護のあらん事を。その道に信仰のあらん事を」って声が聞こえたけど、修道女さん結構話すんですね。




聖職者ロールプレイってのも、有りだな。

クエストを終え満足感に浸る俺は思わずそう思った。

あるクエストは街のそばの森にある薬草を取ってきてくれ。と言うものだった。

森までの道で地面から湧いて出たスライムと猪、森に入ってからはゴブリンに殺されかけたがなんとか逃げ切り薬草を持って帰りクエストを完遂した。報酬50円はともかく経験値はありがてぇ、ありがてぇ。

あるクエストは雑貨屋の倉庫整理。

店の裏にある倉庫の中で木箱を開け、入っているものを対応した倉庫の棚に置く。報酬はHPとMPの回復薬数個。経験値がありがてぇ。

あるクエストは噴水のある広場で老人の話を聞く。

特に意味のない話だった。報酬は経験値だけだった。ありがてぇ。

あるクエストは酒場の新メニューの試食。

報酬は酒場の会計一割引きの権利。と経験値。ありがてぇ。

このゲーム、神ゲーかな?NPCが会話してくれる。噛み合わなかったり矛盾があったりしない、普通に人間とする会話の様な、素晴らしい世界。

この辺AIがやってるのか?凄いな最近の技術。小学生の頃はフルダイブ型VRだけでも夢のまた夢だったのに凄いなぁ。

あと少し、あと少しでレベルが上がるんだ。とクエスト一覧を眺めてるが、非戦闘系が見当たらない。

別に初期装備のメイスでモンスター倒してもいいんだけど、なんかそんな気分じゃない。俺は凡百の聖剣を使いたいだけなんだ。

なんか、なんかないか!あっ、良い事を思いついた。


そして俺はフィールドの草原に立っていた。

ふふふ、誰もいねぇ。チクショウ作戦倒れだ!ゲリラ回復でもすれば経験値稼げるかな?と思ったけどゲーム販売から二週間経ってるんだよ!休日とは言え夕方だよ!今更初心者とかいねぇわ!

あっ、良い事思い付いた。

ふらっと歩いてスライムと遭遇。すかさず聖書を取り出す俺。


「我等が神の名においてグボァ!」


詠唱してる最終にタックル喰らって詠唱が途絶えた。やり直すぞ。


「我等が神の名においてぐぬぅ!我等が神の名にふべっ!我等が神のぐあああああああ」


駄目だ、死ぬ。これ、死ぬ。撤退、撤退!

ただの水球に見えるのに予想以上にスライム強いんですけど!

「我等が神の名において、汝の痛みを取り除かん。ヒール!」よし、体力全快!経験値はもう少し、もう一度だ!




危うく最弱モンスター代表に殺されるところだったが何とかレベルが上がって、今は教会に避難してきた。

長椅子に腰かけてステータスを開いてみる。


PN:ノーマルハンド

LV:2

JOB:聖職者

HP(体力):7

MP(魔力):8

END(持久):7

STR(筋力):9

AGI (敏捷):6

TEC(技量):8

EDU(知識):10

FAI(信仰):22

LUC(幸運):11


Free(自由割り振り):5


全部1上がって、信仰と知識が2上がってる。職業補正か?知識じゃなくてもっと上がって欲しいのがあるんだけど、自由振り分け5ポイントもあるし贅沢言わない。

筋力に1、技量に2、信仰に2を振り分けて椅子から立ち上がり、凡百の聖剣を鞘から引き抜き頭上へ掲げる。

ふっふー!最高だァぜェ!お前こそ最高の聖剣だ!

さて、戦闘系クエストやるか。いいじゃん、聖剣持った聖職者の人助けロールプレイ。

カッコいいじゃん?





「ツラい!これツラい!でも楽しい!」


今俺は、岩山にある鉱山の底で凡百の聖剣を突き付けていた。

クエストは鉱物を幾つか持って来てくれ。と言う物。ツルハシを渡され、教えてくれた鉱山の一番下まで潜って、ツルハシじゃなくて凡百の聖剣を振るってる。

なんか、ツルハシって気分じゃないんだ。聖剣でも削れるし、削れて落っこちた石はストレージに入ってスタックされてくし、なんか、未鑑定の鉱石ってアイテムも入って来ている。これがクエストアイテムなんだろう。

でもそんなの関係ねぇ!楽しい!ヒャッハー楽しい!聖剣で鉱山掘るの楽しい!


ピシッ


切っ先が岩壁に突き刺さるとそんな嫌な音が響く。

えっ、なに?イベント?こんな始まりの街からすぐの鉱山で?

鳴り続ける嫌な音と共に岩壁に亀裂が全体へ走る。

聖剣を引き抜き、とどめに蹴り付ける。

端からゴロゴロと崩れ落ち、出て来たのは洞窟の様な入り口。

はっは、なんだかこのゲームが楽しくなってきたぞ!


中に入って進んでいくと、どうやら黄色のレンガで舗装された通路になっている。縦横幅五メートル程。聖剣持って振るうには丁度良い。

なんでも出て来いや!


そう、思っていました。

曲がり角でちらりと先を覗けばなんかいた。


スケルトン

LV:120


レベル120って何さ、俺の六十倍だぞ!スケルトンだぞ!雑魚モンスター筆頭だろお前!超強いじゃん!

でも相手はアンデッド、俺の聖剣の前では雑魚よ雑魚!





死んだ。

教会で目が覚めた。


スケルトン超つよい。超かたい。でも動き鈍い。何とかなりそうな気はする。何回か死ぬだろうけど、殺せると思う。ヒャッハー!2レベで120レベの奴倒したらどんだけ経験値くれるんだろうなー!

未鑑定の鉱石をクエストを出した工房のお爺さんに渡すと大量の金とそこそこの経験値。そして何故か凡百の聖剣が+1に強化された。もっと強くしたいならもっと鉱石を持ってこいと言われた。

鉱石とスケルトン退治を目標に勢い勇んでフィールドに出ると四人組がいた。

一人は剣と盾、一人は槍、一人は杖で、一人は杖と本を手にしていた。あの杖と本の人の服は、同業者!

でもオンラインゲーでいきなり人に話しかけるのは怖いなー、と遠巻きに見ていると近寄って来ていたスライムを杖で叩いてから詠唱して味方を回復しているのが聞こえた。

なるほど、聖職者の戦い方はああやるのか。


よし、近くに突然湧いたスライムで実験して見よう!

「我等が神の名において、汝の痛みを取り除かん。ヒール!そして俺の聖剣を食らえー」

スライムのヒットポイントバーが減り、そして増えた。


うんうん、うん?え?スライムが回復した?あっぐえー!

混乱してたらスライムに体当たりされてそのまま馬乗りになられた。がぼぼぼぼ、息が、息が出来ない!スライムって水だそりゃ窒息物だよな!

物理ダメージはゲーム側で軽減されてフィードバックされるけどこういうのは直接的なんだよぉ!


顔にまとわりつくゼリーの様な感触だったスライムが、突然バケツに入った水をぶちまけられた感覚に変わる。

息を整えながら辺りを見ると、さっきの四人組が怪訝そうな顔で仰向けに倒れている俺を見下ろしている。


「すんません、助かりました」

「あっいえ、スライムに襲われるとああなるんですね」


感謝を告げると即座に槍持ち君が返してくれた。


「何があったんです?」

「え?あ、あー、ヒール唱えながら攻撃したらスライムが回復して。驚いて固まってたら反撃されたんですよね」


全員が、は?と言った感じの表情だ。なに言ってるか自分でもわかんねぇよ。


「凡百の聖剣が弱すぎてバグっただけじゃないの」


同業者さんが言ってくる。


「そうなんですかね。廃品回収のお時間です、凡百の聖剣使わないなら下さい」

「良いわよ。タダであげるわ。でも何に使うの?」


トレード画面が表示され、言われた通りタダでトレード成立。


「そりゃ、実用、観賞用、保存用よ」

「どれだけこの産廃聖剣が好きなのよあんた。さっさと筋力ビルドにしてメイス持ちなさい」

「忠告ありがとう。でも俺は凡百の聖剣!」

「ハァ、詰んでも知らないわよ」


そう言ってさっさと四人組は離れて行ってしまった。

じゃあ俺は鉱山に向かうとしよう。

スケルトンめ、強化された俺の凡百の聖剣+1を食らえー!

次回未定です

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