六ヶ所の旅
進め何処か分からぬ場所へ。
いやマジでどこだ。名も無い場所にポップしたイベントモンスターとかいう展開?村とかじゃなく?なら気が楽だ、話さなくて済む。
つまり一人称に気を使わなくて済む。別に苦痛でもなんでもないけど一人称汚染されそうで怖い。
侍モドキ聖職者一人旅。視聴率は悪そうだ。どこが侍だってクレーム多そう。拙者心は侍じゃい!
「寒い」
どういう事だろうか、一番遠い所から順に始まりの街へ向かおうとしていたが、一番遠い所で急に雪が降り始めた。
俺は都会っ子で雪が降ればテンションが上がるが、これはちょっと、テンション上がらないレベルの吹雪。
寒さの軽減とかしてるんだろうけど、キツい。指先の感覚なくなるほどじゃないし、冷たさ特有の痛さもないけど、寒いんだよ!
しばらく進んでいると進行方向に村発見!なんか、マントとかあれば、売ってくれるかな。
「立ち去れ」
適当な家のドアノックしたら開口一番にこれですよ。田舎は冷たいなぁ!
黙ってお仕事するよもう。男は背中で語るもんだって爺さんが言ってたし頑張るぞー。
吹雪にも、冬の寒さにも負けずたどり着いた先にいたのはゾンビの団体様。うん、寒いと死体腐らないもんね。
浄化聖剣を受けたゾンビ達は二度死ぬ。
次の場所に行くためにまた村を通ったが、子供が感謝の言葉と素材そのままのマントをくれた。茶色い毛皮の膝程までの長さで丁度いい。
聖職者としては殺生はいけないと思うけど、侍としては殺してしまったんだから是非も無しの精神で受け取り装備する。あったかい。
お金をいくつか押し付けて立ち去る。金はMP回復ポーションにしか使わないから有り余るんだ。
二箇所目は鬱蒼とした森の中。ボロボロの屋敷。
白い半透明な足のない人が大勢いるが、素浄化で一蹴できるレベルだった。
浄化をしながら進んでいくと、書斎と思われる部屋に豪華な服装のミイラみたいなのが杖を持って佇んでいた。
部屋に入った俺を見ると杖を掲げて魔法を使おうとしていたので素浄化。HPバーを確認し、二回で溶けて消えた。
帰ろうと振り返れば半透明のクラシックなメイドさんが頭を下げて光の粒子になって風に消えた。
アイテム[メイド服]を手に入れた。いやこれ遺品やん。保管しとこ。
三箇所目。
小高い丘の滅んだ村にある廃墟になった教会。
神父服を着て杖と黒く染まった聖書を持ったスケルトン。名前は[ワイス]。
黒い靄の様な魔法で攻撃して来たが、避けて浄化付与聖剣で数度叩くと消えた。
アイテム[死霊の杖]と[汚染された聖書]を手に入れた。杖はナマルさんにでもあげよう。この黒い聖書は、どうするかなぁ、修道女さんに渡せばいいかな。
もしかすると聖印竜の弱点突けるスキルが載ってるかもしれない。どのみち修道女さんに聞こう。
四箇所目。
話が通じるミイラがいた。殺した。
アンデット滅ぶべし。話をしようが友好的だろうがいつ民草に害を振りまくか分からない時限爆弾は処理するに限る。
というか、居た村に病人が多かったのお前のせいだろ消え去れデーモン。
不調を取り除くらしいキュアをエンチャントした聖剣で村人達を切って回ったらピンピンしてたしこれで終わりやろ。
五箇所目。
なんてことない負傷者多数の町。
外敵はすでに倒しているが勇敢な兵士が毒に侵され死にそうだった。
ヒールとキュア唱えながら聖剣突き立てておしまい。
なんとか意識を取り戻した彼の「アレが最後のマンティコアだとは思えない」という言葉は聞かないことにした。続編フラグ建てんなクソ映画かよ。
六箇所目。
デーモンの話をしたせいか悪魔がいた。契約のために呼び出されてそのまま居座っているらしい。
なんかテンションが低かったので一緒に酒飲んで愚痴を聞いた。
なんでも「思い人を振り向かせたい」とか戦闘要員の彼を呼び出して頼んだとか。悪魔の契約は「どんな内容であろうと呼び出されたなら完遂しなければ帰れない」らしい。つらいな。
筋トレに筋トレ、最終的には熊を正面から撲殺して結ばれたという話だ。割に合わない仕事させられてムカついてここで暮らしているそうだ。感動的な話だな。殺した。
仕事が終わったら帰れ、帰れば今度は合う仕事がくるだろ。
アイテム[悪魔の酒]と[悪魔の片角]を手に入れた。
酒は「楽しく戦えた礼」と言っていた。片角と、なんでもいいので酒。後は召喚呪文があれば彼を呼び出せるらしい。なんというか、悪魔凄いな。
ちなみに召喚呪文なんだけど、呼び出した人は忘れていた。脳みそまで筋肉になっちまったんだろう。バカだけど気のいい奴だった、なんというか、奥さんと仲良くな。
お仕事終了。
マンティコアだかちょっとアレだが、終わりは終わりだ。
出発から翌日の事である。話すミイラ殺してログアウトしたんだ。あの一件はこれの心を予想以上に疲弊させてくれた。
最初は「元いた場所から追い出された」とか言ってて「ほー、友好的なモンスターおるんやなー」って感じだったが、病人が多い事と目の前のミイラが繋がって「こいつ害悪やん!殺したろっ!」って流れだ。
ちょっとでも同情した俺の心は裏切られた事で消えない傷を残した。
翌日の脳筋悪魔さんで癒えたけどな。
「と言うわけです」
「そ、そうですか、此度の旅、お疲れ様でした」
「休んだしあんまり疲れてないですね」
「ふっ、ふふっ、そうですか。では、聖書をこちらに」
何故か笑われて聖書を求められたので渡す。
いつもの光が収まると白い聖書を返される。受け取ろうとした腕もストライプから白になっている。
ただの白じゃない、夏の日の雲のような白さだ。美しいな。
「あっ、これなんですか?」
思い出したので黒い聖書を懐から取り出す。
「それは堕ちた聖職者が持つ聖書。いえ、元聖書。彼等が何と呼ぶかは知りませんが、我々は偽書と呼んでいます」
「中見ても大丈夫なんですか?」
「さあ、どうなのでしょう。実際に聖書と偽書の双方を扱うお方はいませんので」
「そうですか、じゃあ読みまーす」
「えっ、今読むのですか!」
勢いよく開いたら驚かれた。
うんうん、うん?
神の敵対者の名において、その精神を堕とす。ポリューション
神の敵対者の名において、地に眠る魂を呼び起こさん。サモン•レイス
神の敵対者の名において、地に伏す亡骸に仮初めの魂を。パラサイト•カダバァ
神の敵対者の名において、同朋をこの地へ招き、契約を成す。サモン•デーモン
悪魔さん呼び出せるやんけ!今度一緒に遊んだろ!
「で、こっちは一体?」
偽書をしまって、続けて杖を取り出す。
「そちらは偽書との同時使用によって消費する精神力を軽減することができます」
MPって精神力なのか。マジックポイントじゃなくてマインドポイントだったのか。
消費軽減?女々だな、使わん。ナマルさんにあげよう。
「聖印竜倒したらどうなるの?」
「さあ、どうなるのでしょうか」
笑みを浮かべながら返される。怖いよその笑顔。目うっすら開いてたりしない?
「それじゃ行きます」
「ええ、更なる聖職の高みへと」
いつのも酒場へ向かいながら聖書を開けば、ハイ•ヒール、ハイ•ピュヒリケイション、ハイ•キュア。一番使わないハイ•リジェネさんもいる。
一体どれだけの火力を生み出してくれるのだろうか。
開いている手で偽書を開けば、ロー、普通、ハイの三種類が並んでいた。さっきまでなかったやんけ!
で、レベルも上がってたな。
PN:ノーマルハンド
LV:69→70
JOB:聖剣騎士
HP(体力):79→80
MP(魔力):76→77
END(持久):75→76
STR(筋力):80→81
AGI (敏捷):74→75
TEC(技量):80→81
EDU(知識):136→138
FAI (信仰):511→515
LUC(幸運):78→79
Free(自由割り振り):5
聖剣騎士?俺、騎士的行動したっけか?
レベルアップの信仰ボーナスは4になったのか。これで信仰520。
それにしても知識のボーナスが2から変わらないんだけど?嫌がらせ?知識が何の影響あるのか分からないけど、ボーナスあるってことはなんかあるんだろうな。
とりあえずアイナス達と愚痴って、それからギルドだな。




