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光のダンジョン  作者: モリー
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私のダンジョン

「アカリ、早速ですがこのダンジョンの方向性を決めませんこと?」


ルミナにはマスターではなくアカリと呼ばせることにした。初めは嫌がったルミナだけど、私が友達ならそんな他人行儀な呼び方しない!と言ったらあっさり呼び方を変えてくれた。


「方向性?」


「そうですわ。ダンジョンは一度造ると固定されて動かせないので慎重に造らなければならないのですが、ダンジョンマスターはダンジョンがないと防衛できませんので、できるだけ早くダンジョンを作成する必要があるんですの。ダンジョン作成するにあたってダンジョンの方向性やルールを決めてから作成する必要がありますが、この場合の方向性というのはどういう仕組みでダンジョンポイントを得るかということですわ」


む、難しい……。


「えーと、つまり……どーいうこと?」


「つまり、ダンジョンを早く造らないと危険で、ダンジョンを造るにはアカリがダンジョンのルールを決めて造らねばならないということですわ」


ほうほう。


「ルールかぁ。そんなの急に言われても、普通のダンジョンがどういうのかも知らないし、そもそもどこにダンジョンを造ればいいのかもわからないよ」


「ダンジョンを造る場所は今わたくし達のいるこの洞穴でいいですわ。世界地図と他のダンジョンとの兼ね合いから見ても現状では一番良い場所かと思いますし、たぶん神があらかじめアカリに有利な場所を提供したのでしょうから……」


ルミナは神のことを話す辺りから苦い顔をした。私も今更、神が良い場所を提供してくれたぐらいじゃ、神に対する悪感情は変わらない。

ルミナは気持ちを切り換えるように続きを話し始めた。


「ルールに関しては他のダンジョンに合わせる必要なんてありませんわ。アカリが自分の住まいをどういう風にしたいか、ということが大事なんですの」


おお!そっか!ダンジョンマスターって、ダンジョンに住むわけだから、ダンジョンっていわば家みたいなものなのね。その家にはその家のルールがあって、その家の家具やインテリアは家の持ち主である私がレイアウトを決める、と。うん、わかりやすい。


「それなら私は、光輝くイルミネーションで飾りつけされた夢の国のようなダンジョンにするよ!」


「イルミネーションとは何ですの?」


「イルミネーションっていうのはね……」


私は自分が大好きなイルミネーションのお祭りや某遊園地の光のパレードのことなどを長々と熱く語った。ルミナは終始興奮しながら、素晴らしい!と相槌を打ちながら最後まで聞いてくれた。




「アカリ!貴女の造るダンジョンは、きっと世界で一番美しいダンジョンになること間違いなしでしょう!」


「ありがとうルミナ!」


「後はその方向性に合わせたダンジョンのルール作りですわね」


「そうだね、と言ってもどうすればいいの?」


「そうですわね……、実を言いますとダンジョンのルールは後からダンジョンポイントを使わずにいくらでも追加できますので、基本となる最低限のことだけ決めるだけでいいんですの。むしろ、ダンジョンのルールは消去するのに莫大なダンジョンポイントを消費しますので、余計なルールは決めないほうがいいんですわ。ですから、アカリのダンジョンはどういうモノを糧にしてダンジョンポイントを得るのか決めるだけでもいいと思いますの」


「糧……かぁ。例えばどういうモノがダンジョンの糧になるの?」


「一般的なダンジョンは命を糧にすることが多いですわ。ダンジョンに来た冒険者を殺すことによってその命や死体を吸収してダンジョンポイントに変えるんですの。後は恐怖の感情なんかを糧にして、捕らえた冒険者を死ぬまで拷問して幽閉したりなんかですわね」


こ、こえー!え?ダンジョンマスターって魔王的な職業なの?やばくない?!


「あと変わり種は、マスターが食べることでダンジョンポイントにするとかもありますわよ?美味しいものを食べるほどダンジョンポイントが増えるみたいですわ」


あっ、なんかいいわね。平和的で。美味しいもの食べてダンジョンポイントまでゲットなんて一石二鳥じゃない。


「食べるマスターはたいてい人間が好物ですから、食欲と実益を兼ねた効率的なダンジョンと言えますわね」


前言撤回ー!ダンジョンマスターは魔王だ!全然平和的じゃない!


ルミナは他にも色々例えを言ってくれたけど、どれも録なものじゃなかった。


そもそもこの世界の人達はダンジョンの資源をあてにして生きてるわけだから、ダンジョンに行かないという選択肢はない。ダンジョンマスターは黙ってても自分のところに来る人間をダンジョンポイントに変えるというのは確かに合理的ではある。でも私は元々人間だ。そんな簡単に割り切れるはずはない。


私が頭から湯気が出そうなほど、うんうんと唸りながら悩んでいると、ルミナが救いの手を差し伸べてくれた。


「アカリ、わたくしも光輝く美しいダンジョンを血生臭くしたくはありませんわ。命や死体ほどダンジョンポイントの効率は良くありませんが、感情を糧にすることもできますわ。強い感情ほど得られるダンジョンポイントも大きくなりますから、恐怖を糧に選ぶマスターが多く存在しますが、恐怖に負けないくらい強い感情もありますの」


私は大きな希望を感じながらルミナの話しに聞き入っていた。


「……どんな感情?」


「それは、感動ですわ!」


「感動?」


「ええ、人は美しいモノに触れると感情を大きく揺さぶられますの。それも、恐怖に負けないほどの強い感情ですわ」


聞いた瞬間、それだ!と思った。日本でだってテーマパークや観光地には楽しみや癒しや感動を求めて全国から人が集まる。上手く行けば遠くからだってわざわざ人が足を運んでくれるかもしれない。そのためにはダンジョン内が安全でなくては話しにならない。


「ルミナ、ありがとう!私のダンジョンの糧は人々の感動や喜びに決めたよ!」


私は上機嫌のルミナとルールについて色々相談した。ルミナは私のやりたいことをすぐ理解して案を出してくれた。ダンジョンマスターとしてまだまだ不安が沢山あるけど、ルミナがいればやっていける気がした。むしろ、人生で一番ワクワクしているかもしれない。


いくら神のやり方が気にくわなくったって、神に拉致られた時点でどのみち私には選択権はない。それなら、与えられた能力で今を楽しむしかない。なってやるわよ、ダンジョンマスターに!


「よーし、さっそくダンジョン造っちゃうよー!」



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