04
そこそこ大きい排気音を響かせて俺たちの目の前に一台の白いクルマが止まった。
「ランエボ…かな?」
「ああ、?だな」
ランエボは、三菱が誇るスポーツカーである。
スポーツカーでありながら4枚ドアであるため、きっちりと5人乗れる。
走るステージによってはポルシェやフェラーリより速いと言われるクルマだ。
工藤の姉が乗っているのはランエボ?で、グリルの三菱のマークにあわせた三角形が特徴である。
「なんなら乗っていく?お姉ちゃんは乗せたがり屋だから大丈夫よ」
これは願ってもないことだ。
実は何人か学校にストーカーが居るので助かる。
「でも私、反対方向だよ?」
美里が遠慮がちに言った。
「大丈夫だ、買い物も頼まれてるから」
と、工藤の姉が助手席の窓から顔を覗かせていった。
「遠慮せずに、乗ってくださいな」
工藤が後席のドアを開けた。
俺と美里はその好意に答えざるを得なかった。
まず俺が乗り、奥へ詰めて、空いたスペースに美里が乗る。
工藤は助手席に乗った。
「オレは玲香の姉、工藤良。よろしくな」
と、工藤の姉、良さんが運転をしながら言った。
口調が男っぽいとは思ったが、名前まで男っぽい。
まさに、名は体を表すとはこのことである。
おとなしそうな玲香とは違って、良さんは凛々しいと言ったイメージである。
「そ、そこを右です」
美里が緊張しながら道案内をしていた。
やっぱり年上の前では揚がってしまうんだな。
やがて、美里の家の前まできた。
「ここだね?」
「あ、はいっ」
良さんはクルマを止めると、美里の方を向いた。
「美里ちゃん、兄貴居るよね?」
「は、はい。居ますけど…?」
「なら伝えてくれないかな?工藤良って言うカッコ良くて超絶に美人な女の人が、次こそ勝つって言ってたってね」
「お姉ちゃん…」
工藤が苦笑いしていた。
「わかりましたぁ。そっくりそのまま伝えときまぁす」
美里はクルマから降りた。
「たのんだぞ♪」
良さんはクルマを出した。
「西条くん、こんなお姉ちゃんだから許してね」
「こんなとは何だ、こんなとは」
良さんは苦笑いした。
「大丈夫。俺の幼なじみも同じ性格だから」
その後、いろいろ話しているうちに工藤とも打ち解けた。
ケータイのメルアドも交換(半ば強制的に良さんのも)した。
「じゃあ、また明日ね」
「おう、じゃあな」
クルマは排気音と、ブローオフバルブのプシャァァンという音を響かせて走り去った。
俺は黙って家に入った。