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鬼の王子の異世界留学物語  作者: 田ノ島夜
番外編 二人の王
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鬼の国の良いところ

それからも鬼の国には色々無ことがあった。


バルガンとティアの結婚式


隠居していた雷の王の逝去


霊族との衝突


いい事も悪いこともバルガン、マダラフ、ティア、そしてザムは力を合わせ、手を取り合って乗り越えた。



そんな穏やかな春のある日、タイガルドからティアに書状が届いた。

その知らせを見て、いつも天真爛漫なティアの顔が明らかに曇っていった。

きっと悪い知らせなのだろうとも思いながらバルガンはティアの肩に手を乗せた。


「どうしたのだ?母国からの知らせであろう」


ティアはバルガンに手を合わせる。


「母が不調のようです。

私に要らぬ心配をさせまいと連絡を控えていたようですが、文面から察するにそろそろかと、、、」


ティアは迷った。

すぐにでも駆けつけたいが、近日中に大森林との国交に関わる大事な会議を控えていたのだ。


大森林。

そこは神獣の加護を受けた獣王アルアが古代より治める国だ。

国土が広く様々な種が存在するため情勢が不安定ではあるが、絶対の王が率いる軍勢は世界最強とも言われ、龍王に対する最大の抑止力とされている。

その大森林との国交は国防の観点から言ってもティアの最大の悲願であった。


バルガンは表情から彼女のその迷いを察した。


「ティア。王妃の元へ行きなさい。

大森林には私が一人で行こう。

タイガルドなら途中まで共に行けるうえ、

私もそろそろ独り立ちしなければいけぬからな。」


その優しい言葉と笑顔にティアは涙を流し礼を言った。




すぐに出発の日が来た。

今日も鬼の国らしい心地の良い素晴らしい晴天が広がる日だった。

船には獣王アルアに対する手土産と、タイガルド王妃への見舞いの品を積んでいる。


マダラフは港まで見送りに来ていた。

王が不在の最中は彼が全権限を持つ決まりだ。


「王よ。もしもの時にはすぐに駆けつけるが、無茶だけはするなよ」


バルガンは何も言わずにマダラフの胸元に軽く拳を当てた。

そこには「分かっている」「ついにここまできたな」「国の留守を任せたぞ」「信用しろ」「信用している」色々な意味が込められている。

マダラフは全て感じたからこそ、黙って見送った。




タイガルドの港に着くと、タイガルド王城と大森林、それぞれの目的地に分かれる。

準備も整い出発しようとしているバルガンにティアは駆け寄った。


「やはりザムは王がお連れください。大森林は大国ですが、情勢は不安定でございます。」


それを聞いてバルガンはザムを見る、、、

かつて自分を見るなり震えて助けを求めに行った弱々しい面影はなく、バルガンの教えを誰よりも受け継いだ、鬼の国最高の戦士となっていた。

が、だからこそ大事なティアの護衛に付けたかった。


「ティアよ。

鬼の国には良いところがたくさんある。

その中の一つが何か分かるか?」


ティアは何を聞かれているのか、自分の話と関係があるのか分からずに困った。

その困り顔でバルガンに目を向ける。

するとバルガンは少し微笑むと今度はザムの方に向き直す。

ザムは小さく笑った後、自分の王に跪きながら言った。


「王が世界の誰よりも強い事でありましょう!」


バルガンはその答えに満足すると、大森林に向かって進み出す。


「ザムよ。妻を任せる!」


バルガンは本当に心から安心をして歩を進めた。

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