鬼士団長は怒らせてはいけない
衝撃の家族会議から数ヶ月が経ち、俺は自分の部屋で虎大陸で行われる入試試験に向かう準備をしていた。
留学という形で入学が決まっているが、適性検査も兼ねてるので試験は受けなきゃいけないとのことだ。
「ぼっちゃま。魔王様にご来客なのですが少し困っています。来ていただけませんか。」
いつもより少し疲れた様子のバルガンに呼ばれた俺は謁見室へ向かう。
中に入ると見慣れた顔が3つ。
サキュガルとマルトルとメレスだった。
「急に押しかけてすまない。リックス。」
「私たちの味方になって下さい。」
「リックスの兄貴からもお願いしてくれよ。」
それぞれ話しかけてくるがどうも内容が掴めないでいるとバルガンが教えてくれた。
「ぼっちゃまの留学を聞きつけて3人も行きたいと言い出したのです。
しかし鬼族を留学させる許可はタイガルドに取り付けておりません。
それに我が子まで混ざっていて魔王様に申し訳ない。」
「バルガン。リックスがこんなに人望があるなんて私は感激だぞ。」
魔王様は少し嬉しそうだが3人は真剣だ。
いっこうに諦める気がない。
「父バルガンのように城へ仕えたいんだ。ならばリックスと行動を共にして学んできたい。」
「私はリックス様を守りたい。」
「俺は、、、とにかく行ってみたい!」
マルトルがどうして巻き込まれたのか疑問だが、3人が付いて来てくれるのは嬉しい。
俺もお願いをしようとした時だった。
俺たち4人の前5メートルくらいにバルガンが歩いてきた。
何かと見ていたが、彼は全身から殺気を出し訓練でも見せたことない全力の踏み込みをした。
本気だとわかった俺は全身に最大魔力を練り込み3人を守るようにして前へ出る。
だがそれは間違えだった。
いつのまにかバルガンは剣を握っている。
鋭い刃先が目の前に迫ってくる。
俺は死を覚悟してまぶたを閉じてしまった。
が、その瞬間は来なかった。
刃は俺に到達することなく寸前で止められていた。
「みなさんこれが現実です。
私の殺気に反応できたのはぼっちゃまだけでした。
あなたたちは守って貰うだけ。
そして本来守るべき主君を死なせたのです。」
足手まとい。
この現実は3人を黙らせるのに十分で彼らの目から希望の光を奪って行った。
それを見ていた魔王が口を開く。
「しかし、、、我が子リックスを一人で行かせるのは心細い。
私がタイガルドの王へ鬼族の留学の許可を取る間に弟子がいなくなって寂しいバルガンに稽古でも付けて貰いなさい。」
そういうと3人はひざまづいて魔王にお礼の言葉を言った。
俺は偉大な父と大事な仲間がいることがとても嬉しかった。




