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鬼の王子の異世界留学物語  作者: 田ノ島夜
第7章 リックス 獅子退治編
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ライオンは子供の好きな人を崖から落とす

ファルス先生は怒りに任せてカイルに斬りかかった。

凄まじい剣速であったが、カイルは上手く防御をしている。

元から得意な防御の剣術だ。

ファルス先生も攻めにくそうにしている。

そんな中、先生はカイルに言う。


「また守ってるだけか?

そうやって守って守ってシェリルにでも助けて貰うってか?

さっきの勢いはどうした!?」


そう言うとさらに攻撃の回転を早めていき、カイルは押され気味になる。

ここまでは昔の授業と同じよく見る展開だ。

たがこれで終わりじゃない。

ここからが俺達の本当の戦いだ。


カイルは攻撃を受けながらボソッと呟く。


「海神の魔石よ。我に敵を滅ぼす力を。」


すると服の下に隠れた魔石から魔力が一気に放出される。

そして力強い一歩を踏み出してソウと練習した嵐の型による猛攻が始まる。


「ぐっ、なんだ急に、、、」


そう言いながら今度はファルス先生が防戦一方となる。

最初からディールスーツを使わなかったのは今のような状況を作り出して堕天に移る隙を与えない為だ。

剣術を教えたソウの応援にも力がはいる。


「カイル!!休ませるな!」


先生が色々な手を使い距離を取ろうとするのをカイルが必死についていく。

そしてファルス先生が壁に挟まれて動けなくなり、カイルにチャンスが巡ってきたその時だった。


先生は手をかざして炎の壁を作る。

ここまで勢いは完全にカイルだったが、これに突っ込む訳にもいかず、カイルは急ブレーキをかけて身を守る。


そしてその忌々しい炎の壁が無くなったとき、ファルス先生には4枚の炎の羽が生えていた。


「まずい!出力を最大にするのだよ!!」


ピーターの声が届いたのか、カイルが本能に従ったのか分からないが、空気が振動するほどの魔力放出をしてカイルは先生に斬りかかる。

先生も腰を落としてカイルを迎え撃つ。


両者が激突した時、試合用の模造刀は爆発音を上げて砕け散った。


そしてここで経験の差が浮き彫りとなってしまった。


武器が無くなり一瞬困惑したカイルに対してファルスは躊躇なく自らの拳で殴りかかったのだ。


タイガルド一の戦士の全力の拳を受けたカイルは地面に転がりながら倒れる。

痛みを堪えてすぐに起き上がろうとするが、そこにファルス先生は躊躇なく腹蹴りを入れる。


カイルは壁まで吹き飛ばされた後、地面に叩きつけられてしまった。

その明らかなダメージに誰もが勝負あったと思った。


しかしカイルは諦めていないのか、それとも逃げようとしているのか、必死に立ち上がろうとしている。


それを見て俺の隣で見ていたユーラルさんが一歩前に踏み出した。

ここで止めに入るのか、、、

しかしカイルは何があっても止めるなと言っていた。

俺はそのユーラルさんを止めるべきなのかもしれない。

そう迷った中、手を伸ばそうとした時、ユーラルさんは叫ぶ。


「カイル様!!お立ち上がり下さい!!

今頑張らないと後悔しますぞ!

さぁ、立ち上がって下さい!!」


シェリルも涙を流しながら叫ぶ。


「カイル君!!!」


他のみんなもカイルに大きな声で声援を送った。


するとカイルは口から血を流しながらも立ち上がる。

もう魔力は切れてディールスーツも光ってはいない。

そしてファルスに向かっていきながら声を絞り出す。


「シェリルを幸せにしてみせます、、、」


ファルスは悲しそうな顔をしてカイルの到着を待ち、前に来たカイルを平手打ちする。


「シェリルは、、、

この子は俺を地獄から救ってくれた特別な子だ!

大量に人を殺した汚い俺に無邪気に微笑んでくれた、、、

俺に親になる幸せを分けてくれた、、、

妻を母にしてくれた、、、」


ファルス先生は目からボロボロと涙を流しながらシェリルへの愛を語る。

カイルはその姿をただ黙って真っ直ぐに見つめながら耳を傾けていた。


「シェリルを幸せにする自信があるのか!?

お前は俺よりシェリルを笑顔にしてくれるのか!?」


カイルは目から一筋の涙を流しながら真剣な眼差しで答える。


「必ず世界一幸せな女性にしてみせます!」



それを聞いてファルス先生は地面に仰向きで倒れてつまらなそうに言った。


「俺の負けだ。馬鹿野郎。」



こうしてカイルの挑戦は終わり、カイルとシェリルに幸せが訪れたのだった。

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