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鬼の王子の異世界留学物語  作者: 田ノ島夜
第7章 リックス 獅子退治編
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告白と決闘

特別指南役には兵士達の訓練以外にも仕事がある。

将軍のライルスとお茶を飲みながら話さなくてはいけないという大事な仕事だ。

そして今日もあきらかに気難しいこのおっさんと机を挟んで座っている。


「昔のタイガルドは強かった。

私とゾイル、ユーラルを中心にまとまっていたからな。

特に剣術については剣の国にも負けなかった。

だが今は軟弱な奴らが集まってしまい、国は弱くなっていく一方だ。

カイル様が悪いのではない。我々なのだ。」


ついでにこの話は4回目である。

俺はこの苦行とも言える昔話に終止符を打つ為、新鮮な話を提供する。


「ライルス将軍。

強いタイガルドを取り戻す為にコレを導入してはいかがでしょうか。」


俺はカバンから全身タイツを取り出して説明をする。

コレはディールスーツの量産品バージョンだ。

魔石が小さくなった分、カイルほどの出力が出ないが、元の戦闘力の低い魔法系の戦士に着せれば効果は出る。

指南役としての結果を出すためにピーターに頼んで作って貰ったのだ。

こんなもの甘えだ!と言われるかと思ったが、将軍反応は良かった。


「うむ。うむ。

面白いな。魔法師団でテスト導入させよう。

だが軍の強さは戦士の強さ。

あなたの鍛えっぷりに期待してますぞ。」


こんな感じで俺はタイガルドを強くする為に日々働いている。

メレスに贅沢をさせてあげる為に俺は頑張るぞ。


そのメレスも最近では家事の合間に働きに出ている。

タイガルド近郊の魔獣を倒して回っているのだ。

修行も兼ねているらしい。


素材と魔石を売ってお金を貯めている。

商店に売る事もあれば、王立学校の校長に売る事もあるらしい。


そうやって俺たちはタイガルドでの生活の基盤を手に入れたのだった。



そして今日は久しぶりに薔薇組の面々で集まっての会議だ。

シェリル以外はみんなカイルとファルス先生の事を知っているので気まずい空気が流れていた。

みんなで結婚パーティーをしたいという事は勿論言ってないが、カイルに協力している事は伝えているので、シャナとメレスなんて完全に白い目で先生の事を見ている。


そんな中、会議は始まった。


「まずは僕からの報告なのだよ。

待たせて悪いのだが霊王の水晶はまだ結果が出ていない。

わかったらすぐ報告するのだよ。」


ピーターの発表が終わると沈黙となる。

いつもは好き勝手に喋り出して話がまとまらないくらいなのに、、、


するとカイルが意を決して話し出す。


「みんな聞いてくれ。

改めて宣言をさせて貰う。

シェリル。僕は君の事が好きだ。」


それを聞いてシェリルは涙目で胸を押さえ、ファルス先生は眉間にしわを寄せて睨みを利かせた。

先生の恐ろしい眼光にも負けずにカイルは続ける。


「その件で俺は先生とハッキリさせないといけない。

正式に決闘を申し込む。」


ファルスは宝剣を机に叩きつけるように大きな音を立てて立ち上がる。

が、シェリルはこの状況に混乱した。


「えっ!?なんで?

パパ関係ないじゃん。

やっとカイル君に振り向いてもらえたのに何なの?」


これに女子が続く。


「カイルは戦う意思を示しただけでいいじゃないか。」


「人の恋路を邪魔するなんて最低です。」


「ほんと先生って大人気ないよね〜。」



あれ?これって修行したにも関わらず、決闘しないパターンじゃない?

まぁそれならそれでいいか。

と、思ったがそう上手く事は進まなかった。


「うるせぇ!

誰がなんと言おうと、俺は安心して任せられる男にしかシェリルを渡さないって決めてるんだ。

俺より弱けりゃ安心できねぇ!!」


なんて理不尽な奴だ。

自分がタイガルドで一番強い兵士だって分かるだろ?


しかしカイルは動じずに女性陣に話しかける。


「みんな、いいんだ。

これは僕が決めた事でもある。

シェリルと一緒になる為の試練なら乗り越えてみせるさ。

その為に友と鍛えてきた。

先生には安心してもらうつもりさ。」


カイルはそう言って爽やかに笑う。

それを見てファルス先生は舌打ちをして睨みつける。

このおっさん完全に悪役じゃないか。


こうして俺たちは闘技場に移動した。


脇にはユーラルさんと医療部隊が控えている。

今回の決闘で使用するルルが開発した訓練用の模造刀は実戦に近い感覚だが致命傷は避けられる。

しかしそれでもユーラルさんは気が気じゃない顔をしていた。

それを見てカイルはユーラルに言う。


「ユーラル。

絶対に止めるなよ。

何が何でもだ、、、頼む。」


「、、、わかりました。

このユーラル。見届けさせていただきます。」



そしてカイルと先生は闘技場中央で向かい合う。


開始の合図を決めていないと思った時、カイルが呟いた。


「行きますよ。お父さん。」


ファルスからブチッと何か切れた音がした。


「おい、てめぇ殺すぞ。」


こうして戦いの火蓋が切って落とされた。

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