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鬼の王子の異世界留学物語  作者: 田ノ島夜
第6章 リックス 再始動編
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鬼の実家

霊王を倒して帰る途中、俺とメレスは別行動をさせて貰うことにした。

鬼王国が近いからだ。

たまには実家に顔を出さなくてはいけないし、一緒に住んでいるのだから、メレスの両親にお許しを貰いたい。


霊王国から半日南下した後で隊列から離れ東に歩き始めた。

すると遠くに懐かしい景色が見えてくる。

まずは俺の父様に挨拶する為に城へ行くことにした。

久しぶりに見えてきた山間にあるその建物は実に禍々しく魔王の居城に相応しく、父の人柄を知らない一般人は絶対に入りたくない建造物だ。


城に入ろうとすると門でデカい兵士に止められた。

一応この城の住人なのだが6年近く帰ってなかったから忘れられたのか。

入学式で父様には学校のまとまった休みに帰るとか言ったけど、まとまった休みはファルス先生に連れ出されるから全然帰れなかったんだよな。

そりゃあみんな俺のこと忘れるか。


規格外に大きく筋骨隆々のその兵士は丸太のような太い棒を使い俺たちの行く手を阻む。


「見ない顔だな。

入る前にここで要件を言え。」


身分を説明するのが面倒だなと思っていたらメレスが丸太を掴んで握力だけで破壊する。

その迫力にデカい兵士は尻もちをつく。


「偉そうな口をきくじゃないの。

私はいいとして自分の国の王子も忘れたの?マルトル。」


、、、マルトル?

見た目怖すぎるだろ。。。

と、思ったが大きさばかりに目が行って気付かなかったが、よく見ると昔と変わらない優しい顔だった。


「えっ?メレスと、、、リックスの兄貴??」


俺はマルトルに手を貸して起き上がらせる。


「マルトル久しぶりだな。

手紙も読んだけど立派に兵士やってるみたいだな。」


「本物の兄貴だ!

さぁさぁ。入って!

きっと魔王様も喜ばれる。」


そう言われて父様の部屋まで案内をされる。

自分の家だから案内なんかされなくてもいいんだけど。


王の部屋に入ると父様とバルガンがお茶を飲んでいてその横にサキュガルが控えていた。

ノックをした後マルトルが部屋に入り膝をつく。


「リックス様をお連れしました。」


すると部屋の全員が身を乗り出してこちらを見た後、急ぎ足で向かってきた。


「リックス!我が息子よ。久しぶりではないか。

体調は大丈夫か?旅で疲れているようだな。

すぐに湯を沸かすように手配しろ。」


相変わらずの過保護っぷりだが、この父様の笑顔が見れただけで寄った甲斐があったってものだ。

バルガンも嬉しそうにして歩み寄る。


「お帰りなさいませ。

ぼっちゃまもメレスも逞しくなられた。

師匠として鼻が高いですな。」


サキュガルは一度丁寧な礼をして膝をついた。


「サキュガル他人行儀はやめてくれよ。

俺はそういうのは望まないんだ。

昔のままでいいじゃないか。」


それを聞くと答えを求めてサキュガルはバルガンを見る。

バルガンが父様を見ると、父様が当たり前だと言うように頷いたので、サキュガルは立ち上がって俺に駆け寄る。


「リックス!噂は聞いてたよ。

獣神の塔を制覇したり凄い活躍だったらしいじゃないか。

この何年も君の活躍を聞くのが何よりも楽しみだったんだ。」


この話の流れから最近の出来事などを話した。

海神の迷宮の話をしたらバルガンが驚いていた。

バルガンは昔、一人で行ったけどその過酷さに諦めたらしい。

そりゃあ一人って、、、


そんな話をしていたら急に真剣な顔で父様は聞いてきた。


「それはそうと霊王はどうした?

滅ぼしたのか。」


霊王については隠す事が出来ないので説明をした。

が、ヴァリス教に伝わるといけないので水晶の話はせずにヴァリス教の手掛かりは途絶えた事にした。


一通りの報告が終わり、長旅だったから少し休めと言われたが、俺は意を決してあの報告をすることにした。


「みんな。ちょっと待ってくれ。

最後に伝えなきゃいけない事があるんだ、、、」


俺は凄いドキドキした。

こんなのなかなか無い緊張だ。

言葉が詰まりそうになるがなんとか絞り出す。


「これからメレスと二人で暮らしていこうと思ってるんだ。

タイガルドで家も借りてる。

報告が遅くなってすみません、、、」


、、、、


苦しい静寂に包まれていたが、氷が溶けていくように徐々に反応してくれた。


「ぼっちゃま、メレス、私は祝福させて頂きますよ。」


「僕もだ。とてもお似合いのカップルだと思うよ。」


父は下を向いている。


「久しぶりに帰ってきたと思ったら立派になって、、、」


そう言って涙を流した。

予想はしていたが、やはり泣き虫魔王だった。


そんな父様には目もくれずにバルガンがポンっと手を叩いて立ち上がる。


「そうとなればお祝いですね!

サキュガル、準備しますよ。」


「はいっ!」



こうして俺とメレスの婚約祝い?が行われた。


俺の希望で父様と俺とメレスに加えてバルガンとサキュガルとマルトルも同じ席に座ってもらうことにした。

バルガン達は王と同じ席を囲む事を一度は断っていたが、父様が半ば無理矢理座らせてくれた。


久しぶりに会ったこともあり、話は尽きる事なく夜遅くまで祝いの席は続いた。

最後は食べるものも飲む物もなくなったのでお開きになるという鬼族あるあるで閉会となった。



夜遅くになったのでメレスも俺の実家に泊まり、次の日にメレスのご両親に挨拶に行った。


メレスの両親は俺の名前を聞くと平伏してしまい、顔を上げてもらうのも大変だった。

が、なんとか顔を上げてもらってお父様より許可を頂くと、こっそり追跡していた父様が登場してメレスの実家はパニック。

『私も父として挨拶に、、、』とか言っていたが、後から追いかけて来たバルガンに怒られていた。


久しぶりの帰郷はすごく充実していた。

この愛する国を壊さない為にもヴァリス教と戦おうと再度心に誓った。

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