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鬼の王子の異世界留学物語  作者: 田ノ島夜
第6章 リックス 再始動編
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エンペラーゲーム

ファン=ディールを倒してからは順調に進んだ。


霊王国に入っても敵はほとんどいなかった。

まあ、タイガルドとの戦争の為に全員駆り出されているんだから当たり前か。


ほどなくして霊王国で一番高い建物の王城へ着いた。

霊王の城はタイガルド城と対をなすような黒一色で、若干斜めに歪んでいる奇妙な城だ。

俺は気を引き締めて鎧の面を下ろして突入に備えた。


門番をピーターの狙撃で倒して中に侵入する。

シャナに先導してもらい、帰りに苦労しない為になるべく敵を倒しながら進む。

霊王を倒せば他の霊族は動かなくなる予想だが、もしもの事を考えて倒しておく。


最上階の部屋の前に衛兵が2人いたので俺と先生で音の出ないように一気に片付ける。


そしてピーターに扉を見てもらってトラップがない事を確認。


どうも順調にいきすぎている気はする。

俺はそんな不安な気持ちを抱きながら扉を開けた。



部屋に入るとそこは一面真っ白の大きな部屋だった。

そこには大きな水晶が一つと椅子が数個並べられているだけだ。

そしてその一番奥の椅子に男が一人座っていた。


その男は老いたエルフだった。

姿勢は悪くガリガリに痩せ細り、とても一国を統べる魔王には見えない。

しかし間違えない。王城にいる魔石が一人だけ埋まっていない人物なのだから。

彼が霊王ケント=サルヴァンドンだ。

霊王はくつろいだ様子で話しかけてくる。


「辿り着いたのは君たちか。

まぁ、いい。ここに座りなさい。

面白いものが始まる。」


言われるまま座るわけにはいかない。

ファルス先生が剣を構えて霊王に詰め寄る。


「霊王、ケント=サルヴァンドンだな。

ユーラルさんの家族を返して大人しく投降しろ。」


霊王は面倒臭そうにファルス先生を見ると部屋の一番奥の部屋を指差す。


「あの男の家族ならそこにいる。

俺が死んだ後にでも勝手に連れて帰れ。

それに剣など構えても意味ないからとりあえずそこに座りなさい。」


俺たちはどうしたものかと様子を見ていたが、ピーターが椅子の一つに座り出す。


「協力な結界が張られていて霊王側には行けないようになっているのだよ。

多分座らないと何も始まらない。

安心していい。トラップとかはないのだよ。」


それに習って全員椅子に座ると霊王は嬉しそうに説明を始めた。


「理解が早くて助かるぞ。

恐らく今日あたり寿命で俺は死ぬ。

だから本当はこの戦争もどうでもいいんだが、最後の研究の成果だけは誰かと一緒に見たくてね。」


そう言った後、大きく咳き込み血を口から出した。

しかしファルス先生はそんな事気にもとめず語りかける。


「死期が近いのならヴァリス教について知っている事を吐いてもらいたいな。」


「よかろう。

だが俺は本当はあの宗教に興味はないんだ。

ただ、神と話して見たら俺のことを理解してくれるんじゃねぇかと思ったんだ。」


「と、言うと?」


俺は少し興味をそそられて聞き返す。


「命を作れるっていうのは寂しい事だ。

簡単に命が作れる奴が一人一人の命に価値を見出せるか?

答えはノーだ。

だんだん自分の命さえ馬鹿らしくなっちまう。

それを神はどう考えてるのかだけ聞きたかったんだがな、、、

復活したら聞いといてくれ。」


何をバカな事と思ったが、想像できなくもなかった。

霊王は仲間を増やせば増やすほど寂しかったのではないかと思う。

勝手に作っておいて勝手な話だがな。


続けて霊王は話し出す。


「だが、最後に面白い物ができたんだ。

ほれっ。これを見ろ。」


霊王が水晶に手を当てると真っ白な壁に映像が映し出された。


「これは、、、

カイル達か。」


壁には対峙しているタイガルド軍と霊王軍が映し出されていた。

霊族側には人外の騎士達も加わりかなりの大所帯となっていた。


「ちょうど始まるな。

見ていなさい。

ファン=ディールには劣るが俺の傑作が生まれるぞ。」


霊王が黒い石を片手に持ち魔力を込める。

すると霊王軍の人外の騎士達が黒い煙になり霧散した。

霧散した煙は一箇所に集まり、大きな黒い門となる。

その門を内側から蹴破りそいつは現れた。


青い肌に地面まで伸びた長髪。

腕が4本生えており、そのどれもに刀を持っている。

異様だが一目見れば分かる。

コイツはヤバい。


「最後だから派手に材料を使わせてもらったよ。

こいつが俺の最後の作品。

人外の帝王。エンペラー種だ。」


ファルス先生は立ち上がり戦場に向かおうとする。

が、ピーターが止めた。


「結界で囲まれてるのだよ。

我々は手出しできない。」


シャナがそれを聞いて慌てる。


「どうするんだ!

こっちには主力のファルス先生もリックスもいるんだぞ。」



、、、、



「なんだと?」


霊王は気の抜けた声を出した後で頭を抱えた。


「普通は戦力を分けるだろうよ。

リックス君と戦わせるつもりだったのに、まさかそこに座ってる君が、、、」


俺が鎧の面を上げると霊王はより深く落ち込んだ。


「そしたら残虐なショーを見せるだけではないか。

人生は最後まで上手くいかないな。」


シャナは慌ただしく室内を調べて回っていた。

ピーターも抜け道を調べている。


が、俺とファルス先生は出られないと分かると落ち着いて座って映像を見ていた。

シャナはその姿を見て怒り出す。


「二人ともなんで諦めてるんだ?

先生かリックスが行かなきゃ仲間が全員殺される状況じゃないか。」



その怒鳴り声に対してファルス先生は少しにやけて答える。


「向こうも化け物だが、こっちにも一人いるんだよ。」


俺的には化け物呼ばわりして欲しくないがな。




「俺たちにはメレスがいる。」

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