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鬼の王子の異世界留学物語  作者: 田ノ島夜
第6章 リックス 再始動編
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あらぶる鬼に悪魔の羽

鬼化状態での堕天は王立学校の卒業式の日にファルス先生に対して使用した。

卒業までに一人で先生を倒すためにピーターと開発したのだ。


最初は堕天を完璧に使おうとしたのだが、どうしても6枚の堕天ができない。

2枚は割と簡単にできたが、それより上は魔力の消費量の調整がなかなか効かないのだ。


しかし両方使ってみて堕天と鬼化との違いを肌で感じることができた。

簡単に言うと鬼化はパワー、堕天はスピードが特に強化されている。

他にも鬼化は防御力も上がる、堕天は魔法範囲が広がるなど、似ているようで全く別物だった。


なんとか4枚の堕天を成功させたが、安定しないしファルス先生の6枚の堕天の方が強いので使い物にならないかと思っていた。


しかしピーターの提案で両方の能力を併用したら、これが強かった。

お互いの長所を併せ持つこの技を俺たちは鬼化の『モード悪鬼』と名付けた。





ファン=ディールは堕天が使われたこの状況に一度距離を取りながら風魔法を放ってきた。

その唸る風魔法は剣士の魔法の威力では無かった。


しかし悪鬼なら避けるまでも無い。

目の前に闇の盾を作って攻撃を防ぐ。

魔法の出力が上がっているので体から離れた場所でも闇魔法の成形ができるのだ。


ディールはやはり戦闘が上手い。

ここぞとばかりに闇の盾を目隠しに使い一気に迫ってきた。


しかしさっきまでは追いつくので精一杯だったディールのスピードも堕天なら追い付ける。

俺は横移動してディールの剣撃を避けた後、右腕に魔力を込めて離れた位置からもう一つの闇の腕で殴りつけた。


デーモンガントレッド

これは魔法範囲が広がる悪鬼モードの時のみできる。

空中に闇の手を作って自分の手と動きを連動させて攻撃をする技だ。


俺は敵の間合いのギリギリ外から連打を叩きつける。

ディールはなんとか剣で受けていたが、こちらは拳の高回転だ。相手はそのうちに被弾をし始めた。


が、流石は霊族最強。

最小の被弾に抑えながらデーモンガントレッドの大振りを待ち、そのタイミングで一気に踏み込んできた。


、、、作戦通り。


俺はバックステップで距離を開けつつ大振りした腕を戻し、そして一気に踏み込んで間合いをつめた。


闇魔法をのせた渾身の右ストレートをディールの顔面に叩きつける。


ディールは端まで転がっていき、手すり部分に大きな音を立てて叩きつけられる。

そして額にあった大きな魔石がパンッと音を立てて砕け散った。

するとディールは二度と起き上がることが無かった。



「こいつやりやがった。」


クルネに肩を貸されたネロが呟いた。

それを聞いたら一気に力が抜けて俺は尻餅をつく。

やはり悪鬼は物凄い体力を奪われる。

あと1分でも続けばヤバかった。


戦闘が終わったので先生達も姿を現わす。

急いでシャナが紫の鎧の人達の手当てをする。

そして先生が俺の腕を掴み持ち上げて肩を貸してくれた。


「リックス。よくやった。

助けるまでもなかったな。」


「いやいや。かなりヤバかったんですよ。

本当は早く助けて欲しいくらいでした。」


そう言って動かなくなったファン=ディールの方を向くとピーターが近寄って行く。


「他の霊族の4倍は大きい魔石が埋まっていたのだよ。

国宝級じゃあ、そりゃあ強いわけなのだよ。」


ピーターの話にクルネが食いつく。


「魔石って額の石のことですか?

これは霊石といって、霊族は産まれた時から付いている体の一部ですよ。」


、、、、俺たちは顔を見合わせる。

ファルス先生が頷いて話していい許可が出たので、ピーターが説明する。


「みんな根本的に騙されているのだよ。

霊族だけ神話に登場しないから不思議に思ってはいたけど、調べてみたら霊族なんて本当はいなかったのだよ。」


ピーターの説明にネロがイラつき気味に言葉を返す。


「じゃあアイツはなんなんですか?

あれが霊族でしょう?」


「確かにあれは霊族だけど、彼らはただの作り物なのだよ。

人造人間とでも言うのだろうね。」


2人は次の言葉が出ないでいたのでピーターが説明を続ける。


「僕の魔眼は色々なモードがあってね。

魔石などのアイテムを発見するモードがあるのだけど、それに霊族がかかるのだよ。

おかしいと思ってタイガルドに攻めてきた霊族を詳しく調べてみたら、消化器官が見当たらない。

それどころか脳すらないのだよ。

唯一あるのは魔石とそれに繋がっている運動器官のみ。

ここまで見て気づいたのだよ。作られた物だとね。」


クルネは引きつった表情で一言絞り出す。


「じゃあ、まさか、、、」


「そう。多分、霊王国は霊王ひとりと人造人間の国なのだよ。」



ちなみに人殺しはしたくなかった俺たちが戦争に踏み切れた理由もこれだ。

人造人間相手なら戦える。


クルネは手に顎を乗せて考えた後、俺たちに向き直る。


「情報を、そしてピンチを救って頂きありがとうございました。

私達は今回の情報を一旦持ち帰りたいと思います。

さぁ、ネロ。怪我人の介助をしながら帰りますよ。」


ネロは無言で近くにいた兵士に肩を貸して立ち上がった。

そして俺の方を向かずに話しかけてくる。


「助かった。また会いましょう。」


そのあと鼻をすする音が聞こえたが、振り向かずに歩いて行った。


俺たちもこれからが本当の戦いだ。

気を引き締めて橋を渡った。

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