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鬼の王子の異世界留学物語  作者: 田ノ島夜
第6章 リックス 再始動編
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悪鬼

会議から一週間が経過して作戦は実行された。


カイルの率いる本隊は恐らく今頃出発したが、

俺とファルス先生とピーターとシャナは別働隊として2日先に出発している。


隊を割いている事がバレないように俺たちの偽物も作っておいた。

霊王には本隊に主力がいると思わせておいて一気に別働隊で頭を叩く作戦だ。


本隊はドッグポートから海を渡り、真っ直ぐ北へ進むルートだが、俺たちはタイガルド北の森林を抜けてバルミリ大橋を渡って龍大陸に入る。


バルミリ大橋は龍大陸と虎大陸が一番接近している場所である。

太古の神話時代からあるとされている橋で立派な石造りの橋だそうだ。

ファルス先生は悪魔戦争の帰りの道で使った事があるらしい。


俺たちは森林で野営をして2日目でようやく橋の近くまで来た。


遥か下に流れの強い川がある崖を沿うように歩いていくと、この旅で初めてのシャナの制止の合図が出た。


「誰かがこっち方向に走ってくる。

ピーターちょっと見てくれるか?」


「、、、魔人族の若い女性なのだよ。

かなり怪我してるみたいなのだよ。」


ファルス先生は悩んだあとで口を開く。


「作戦前に厄介ごとに巻き込まれて本隊に迷惑はかけられない。

その子には悪いが隠れてやり過ごそう。」


ファルスの指示に従い茂みに身を隠す。

俺は木に登る事にした。


しばらくするとその女性の足音が近づいてきた。

そして足を止める。

まさか見つかったか?


「すみません!!

探知魔法でいるのは分かっています。

ファルス様ですよね?

私です!エミエルの弟子と名乗った魔人族です。」


少しの間をおいてファルス先生が茂みから出て行く。


「君か。

どうしたんだ?その怪我は、、、」


長身の魔人族の少女は泣きながら膝をつく。


「お願いです。

みんなを、、、ネロを助けてください。

この先の橋で戦っています。」


ファルス先生が出てこいという指示を出したので木から降りて魔人族の少女に話しかける。


「ネロって茶髪の人間だろ?

あんな強い奴が手こずってるってこと?」


「はい、、、

敵は霊族のファン=ディール。

奴がここまで強いとは思っていませんでした。

このままでは全員殺されてしまいます。

どうかお助けください。」


ファン=ディール。

そいつは王の右腕と呼ばれる騎士だ。

霊族一番の戦士であることは間違えない。


それを聞いて俺たちはすぐに駆けつけようとしたが、ファルス先生は動かなかった。


「すまんが、俺たちがここでディールに存在がバレて仕留められなかった場合、今回の戦争で勝ち目が無くなる。

助けるのは難しい。」


、、、、


確かにそうだ。

俺たちはカイル達の命を預かっている。

赤の他人を助けている場合ではない、、、


が、魔人族の彼女は諦めなかった。


「私達も同じ道から霊族へ奇襲をかける作戦でした。

が、読まれていた。

恐らくファン=ディールはバルミリ大橋を守り続けています。

叩くなら今、共にやるべきです。」


ファルスは舌打ちをすると走り出した。



橋に近づくにつれて爆発音が聞こえてきた。

まだネロが生きていて戦闘しているらしい。


視界に捉えることができるギリギリで俺たちは一度橋の入り口にある柱の陰に隠れた。

ファルス先生が指示を出す。


「いいか、みんなここで隠れてろ。

俺が一人でいく。

顔が割れてなければこの子達の仲間だと思ってくれるかもしれない。」


そう言うが、ファルス先生の顔が割れていないことはないだろう。

これでも有名人だしな、、、

俺は提案を出すことにした。


「俺が行きますよ。

校長が作ってくれたこの鎧なら顔も隠せますし。」


ファルス先生は剣を地面にトントンと叩きつけて考えた後、俺の背中をバシッと叩く。


「頼んだ。

危なくなったら助けに行く。

任せたぞ!!」


俺は親指を立てて問題ないことを伝えて柱から飛び出していく。



走って近づいていくと、紫の鎧の男達がたくさん横たわっている中で血だらけのネロがフラフラしながら立っているのが見えた。

気力だけなのだろう。だが目だけは死んでいない。


ファン=ディールは不気味な紋様の着物のような戦闘服を着ている長髪の男だった。

額には大きなオレンジ色の魔石が埋まっている。

トドメを刺そうとネロに向かい異様に長い刀を振り上げている。


間に合わない。

鬼化だ。


鬼化で一気にスピードを上げて敵に殴りかかる。

横から肩口を殴ろうとしたが、刀を返されて防がれた。

しかし俺の鬼化した拳だ。

敵は端まで吹き飛ぶ。


が、ディールは吹き飛ばされた先の橋の手すりを蹴って一気に間合いを潰し、俺に刀を叩きつける。

なんとか籠手で防ぐが、物凄い剣圧だ。

そしてそこから息つく間のない連撃を受ける。


俺がディールをなんとか抑えていると、すかさず魔人族の女がネロに近づく。


「ネロ!

よかった。無事だったのね。」


「クルネ。

なんで連れてきたのがこいつなんですか。

ファルスの方が強いはずじゃあ、、、」


クルネと呼ばれた魔人族の女は回復魔法をしながら答える。


「私もそう言った。

でも、ファルス様が『俺よりあいつの方が強いから問題ない』って」



ディールの連撃は速く重い。

隙が一つもない。

鬼化しているにもかかわらずだ。



奥の手を使うしかないな。



俺は鬼化状態で背中に魔力を集める。

実戦で使うのは初めてだ。



そして背中から2枚の黒い羽を出した。

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