表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼の王子の異世界留学物語  作者: 田ノ島夜
第6章 リックス 再始動編
62/91

鬼の住む家

いきなり手に入りそうだったヴァリス教の手掛かりは全て手元から無くなってしまった。


ジャンデウル追跡組がタイガルド城へ戻るとおおよその片付けと治療が終わったようであった。

今日は休みをとっていたユーラルさんも片付けを手伝っている。


俺たちは戻ると事の顛末を伝えた。

ジャンデウルは殺されたこと、紫の鎧の男達は完全な見方でないこと。


「すまない。

結局手掛かりを全て逃してしまった。

またヴァリス教に関する情報はゼロになったな。」


俺が代表して謝ると、

ファルスが俺の肩に手を当てた。


「そうでもないさ。

ピーター!頼んでたアレは準備できたか?」


ピーターは少し間をおいて、喋り出す。


「あっ!あぁ、アレはもうすぐできるのだよ。

調整が済んだらみんなに知らせるのだよ。」


ん?なんだろう。

ファルスとピーターとルル以外は首をかしげていた。


「アレってなんですか?」


俺はストレートにファルス先生に聞いてみる。


「ピーターにある開発を修行前に頼んでおいたんだ。

まぁ、お披露目になってからのお楽しみだ。」


そうして解散をすることになった。

それぞれが帰っていく中、俺は大変なことに気づいた。


「待ってくれ!

忘れていたんだが、俺とメレスは帰る家がない。」


そうだ。卒業してすぐ修行の旅に出たから忘れていたんだが、もう学校の寮は使えない。

どうしよう。


「確かに考えていませんでした。

リックス様、申し訳ございません。」


「うちは俺とエライザとシェリルだけでも結構いっぱいだからな。」


「すまん。

既に客間をピーターとルルが一つずつ使っていて一部屋は空けておきたいから、、、

そうだ!ユーラル、国の領地で空き家が一つあったよな?

前に僕の家庭教師が住んでいたやつが。」


「あっ!ありますね。

掃除をしなきゃいけませんがあの家なら自由に使っていいですよ。」


「カイルありがとう!

助かった。タイガルドは宿が高いから住み続けられないし。」


「ありがとうございます。カイル様。」


ユーラルの説明では6年近く使われていない為、手入れが必要とのことだ。

今日は宿屋に泊まって、明日大掃除をすることにした。


明日シェリルとシャナは時間があるようなので掃除を手伝ってくれるそうだ。



そして大掃除当日、

宿屋からユーラルの地図を見てたどり着いたのは小さな二階建ての家だった。


茶色いレンガに茶色い屋根、入り口までのちょっとした庭には太ももくらいの丈の雑草が生えていた。


まずは家に入れるように雑草からなんとかすることになった。

幸い芝に近い種類の雑草だったので比較的処理は楽にできそうだ。

ナイフや短剣を使って雑草を切っていく。

1時間ほどするととりあえず入り口までの道を確保できた。


シェリルが「あとは燃やしちゃう?」とか恐ろしい事を言っていたのでシャナに見張らせて俺とメレスは中の片付けを始める。


家の中に入ると埃っぽいカビ臭い匂いが充満していたので、まずは窓部分に当てられた木の板を外す事から始める。


取り外して光を入れると、物凄い埃の塊と蜘蛛の巣が姿を現わす、、、

道のりは険しそうだ。



よしっ!気合い入れて掃除だ!!



もう使えないベッドやソファーを俺が外まで運びシェリルに燃やしてもらい、そのあとはひたすら掃き掃除と拭き掃除をした。


一階が綺麗になった時に丁度お腹が空いた。

手伝って貰っているシェリルとシャナにご馳走する為に近くの焼肉に行く。

考えてみたらここって霊族の襲撃があった時の店だな。

あの時お金って払ったっけ?


焼肉を食べた後は2階の掃除。

2階の掃除を始めてから気がつく。

掃除は2階からやるべきだ。

また1階を少し掃除しなくてはいけなくなったので後悔したが、日が落ちる頃には1階も2階も見違えるほど綺麗になっていた。



掃除も終盤となりメレスとシャナが拭き掃除した布を外で干している時にシャナが俺に言った。


「リックスはこういう根性はない方だと思っていたから、正直驚いたぞ。

二人で住むことを即決するなんて。」




あっ。



たしかに俺、メレスと二人暮らしだ。



、、、、




俺のリアクションを見てシャナは呆れたように俯いた後、俺の目を真っ直ぐに見た。


「いいか。こういう事はうやむやにするな。

黙ってついて来てくれるメレスに甘えてはダメだぞ。」


「すっ、すまん。」


そんな会話をしているとメレスとシャナが家に入ってくる音がした。


シャナは最後に「今日決めろよ。」と小声で言った。


きっ、決めるとは?



最後にタイガルド城に預けていた荷物を取りに行く。

丁度カイルが食事の時間とのことでみんなで食べることになる。

やっぱり城のご飯は美味しいな。


城から帰る時、別れ際に手伝ってくれた二人に感謝を伝えて手を振り見送ったが、最後にシャナが鋭い眼光をこちらに飛ばして来たのでドキッとした。



帰り道、二人になった途端に静かになった。

メレスとはずっと一緒に旅していたのに、急に何を話せばいいか分からない。



、、、今、思いだけでも伝えよう。




「なぁ、メレス。」


「はい。」


もう俺の心臓は最高潮に高まっている。

頭に血が上って顔も真っ赤だろう。



、、、あれ?

なんて言えばいいんだろうか。

結婚は早いよな?


もう思ったことを言うしかない。




「これからずっとそばにいてくれないか?」




絞り出した言葉だった。


メレスは下を向いて黙った。

何秒たったのだろうか。

もしかしたら2秒程しか無言で無かったのかもしれない。

しかし俺には永遠にも感じられた。


が、その永遠は終わり彼女は俺の袖を掴んだ。


「側にいなければリックス様を守れないんだから当たり前じゃないですか。」


彼女は顔を上げると笑いながら泣いていた。


一緒になって俺も泣いた。



家に帰り順番にシャワーを浴びる。

ベッドは燃やしてしまったので、修行の旅をしていた時のように寝袋で寝る。


勿論だが俺も空気は読める。

今は抱きついたりする時ではない。

しかしなんだか胸がドキドキして眠れずにいた。


するとメレスから手を繋いできた。


「実はですね。

シャナ様から言われていたんですよ。

リックス様を焚きつけるから心の準備をしとけって。」


お節介などと言うものか。

シャナさんには足向けて寝れないな。

続けてメレスは話す。


「一度相談したんです。

リックス様をお慕いしているけど、寿命の関係で私だけ400年ほど生きてしまう事を考えると辛いって。

もしリックス様に好かれてもお断りしなければいけないって。

でもシャナ様が「あなたは300年以上後悔していいの?」って言ってくれました。」


そんなこと考えてくれていたのか。

前世から人の寿命は大体同じだと思っていた俺には考えつかないことだな。



「そうか、、、

メレスの為にも1年でも長生きしなきゃな。」


「いいえ。やっぱりできれば400年生きて下さい。」



そう言って彼女は笑った。

寝そべりながらこちらを向いて笑っているメレスはとても綺麗だった。




、、、、





あれ?これキスするタイミングか?


よしっ!今だ。行こう!


俺は寝袋から出てメレスに近づこうとした。

その時だった。


ドンッ!

ドンッ!


我が家の扉が激しくノックされている。

こんな夜中に誰だ?不審者か?


「リックスくーん!開けてくれなのだよー!!」


お前か。


空耳だと思うがメレスがチッと舌打ちをしたように聞こえた。



俺たちは下に行き不機嫌さを全面に出しながら扉を開いた。


「夜分遅くにすまんのだよ。

ちょっと2人に大事な事を伝えなくてはいけないのだよ。」


ピーターは家に勝手に上がり話し始めた。



たしかに大事な話だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ