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鬼の王子の異世界留学物語  作者: 田ノ島夜
第5章 ファルス 悪魔戦争編
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悲しみの英雄

アルア様が子供達を連れてきたその日、終戦となった。


話し合いをもってなどではない。

悪魔族の全滅という最悪の形での終結となる。


しかし驚きだったのは、これだけの戦争を繰り広げてた悪魔族は死体を確認したところ300人に満たない数だったのだ。

それに対し連合組はその10倍以上の被害を受けていた。

改めて悪魔族の戦術は脅威であると思い知らされた。


この戦争で最も謎とされたのは、発見された大物は王弟ウルトスのみ。

悪魔王を始めとした王族やエミエルのような軍のトップの面々は一切その足取りが掴めなかった。


正義を掲げ侵攻した連合軍はこの煮え切らない結果を受けて戦争の詳しい内容に対しては箝口令を出す。


王達の作ったストーリーはこうだ。

悪魔族は降伏と人質の解放を勧められたにも関わらず、最後まで抵抗を続け全滅。

人質救出が困難な状況の中、獣王アルアが何人かの子供を救出したが、もう一度救出に行った後に行方不明になる。

結果的には数人の子供を助けて悪魔族を全滅させた大勝利とされた。


悪魔族のほとんどが消えたことや獣王アルアが自ら去ったことはそれぞれの国民に不安を与えるとして語ることは禁止された。



帰国した際、勝利の報告を受けてタイガルドの街は沸いていた。

街に帰ってきた軍列の中から家族を見つけて泣いて喜ぶ人間もいたが、俺は家族の死に涙する人々の方に目が行ってしまう。

そんな群衆の中にエライザを見つけると彼女は大粒の涙を流しながら手を振ってくれた。

俺も軍列を離れてエライザを抱きしめた。



帰国した次の日、戦争の勝利を祝して式典が開かれる事となる。

俺は不本意ながら表彰をされる事となった。

悪魔族の大群からゾイル将軍と各国の王を守った英雄として。


魔導師のジャンも一緒に表彰されることとなる。

ジャンの登場に会場は沸いていたが、近くで見た俺には分かった。

彼はげっそりと痩せ細り、目はどこか遠くを見ているようであった。

魔導師は戦後に死体の処理をさせられる。

今回は街の至る所で戦いがあった為、一気に処理と言うわけにはいかず、たくさん見たくないものを見たのだろう。


その式典で俺は獅子、ジャンは鷲の二つ名を貰う。

これはタイガルドの国旗に描かれているデザインがこの2種類の動物だかららしい。

そんなこと本当にどうでも良かった。


式典が終わり俺とジャンは王の間へ通された。

王は言った。

何でも好きな願いを言いなさいと、

俺とジャンは迷わない。


軍を辞めたいと答えた。


同席していたゾイル将軍は怒鳴り散らし引き止めようとしたが、ある人物が横から口を出す。


「ならば王立学園へ来なさい。

英雄達は次の世代を育てている、というストーリーなら各国にも発表しやすいでしょう。」


そう言ったのはタイガルドの王弟。

彼は支援魔法の第一人者にして宮廷魔導師であったが、現在は王立学園の校長をしているとの事だった。


俺とジャンはこの誘いに乗る事にした。


王弟は俺とジャンと3人になった時にこう言った。


「あなた達は戦争で死なない子。

戦争を起こさない子を育ててください。

さぁ、平和を望む子供達が待ってますよ。」


ジャンは泣きながら、『頑張ります。』と言っていた。



アルア様から預かった子供はエライザが喜んで面倒を見てくれている。

『あなたはこの子を私の元へ届ける為に戦争に行ったのね。』というエライザの言葉は俺の心の傷を少しだけ閉じてくれる。


子供の名前は2人で考えた。

もう語ることは許されない俺たちの恩人が置いて行った甘い酒『シェリー』と彼の名前の最後の音『ル』を貰いシェリルと名付けた。



俺は体を張ってこの子と未来の教え子達に平和な世界を見せてあげよう。

そしてアルア様が言うように、この子が何か運命を背負っているなら俺が代わろう。

俺は燃える教会で拾った白い羽を見ながら心に誓った。

ファルス編も最後まで読んで頂きありがとうございました。

物語は後半に突入します。

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