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鬼の王子の異世界留学物語  作者: 田ノ島夜
第5章 ファルス 悪魔戦争編
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戦争への覚悟

人殺しとなって最悪の気分だったが、やはり疲れているのか少しだけ眠る事ができた。

起き上がってみると魔力も大分回復した。

なんとかもう戦えそうだ。


俺が起き上がってベッドから降りようとすると、部屋のカーテンが急に開く。

そこにはこの連合軍の総指揮を務める獣王がいた。


「起きたか。

この度の任務ご苦労だった。ファルス。」


数年前まで権力者など糞食らえと言っていたが、この状況は流石に緊張する。


「いえっ。申し訳御座いません。

ご期待に添えずに敵の罠に落ちて逃げ帰って参りました。」


「そんな事はない君たちは1番大事な情報を掴んでくれた。」


そう言うとアルアは後ろを向いた。

なんだ?俺たちが持って帰った情報って、、、

するとすぐに答えを教えてくれた。


「こちらの情報が漏れていたということだ。

実は今回の作戦は王達と各軍の上層部しか知らないはずだ。

情報を流しているものがいるとみて間違えないだろう。」


確かにそうだ。

悪魔族は隠蔽魔法で隠れて待っていた。

まず間違えなく俺たちが来る事を認識していた。


しかしそうなると外にいた衛兵はなんだったのだろうか。

俺たちが来ると知っていて命の危険があるのに何故あそこに立たせていたのだろうか。

それに街に人が全くいなかったのも気になる、

各国で誘拐事件を起こして緊張が高まると分かっているのに、夜中とはいえ街に兵士が一人もいないなんてあり得るだろうか。

俺はアルア様は頼れるという自分の勘を信じて疑問点を伝えてみた。


「そうか、、、やはりな。

実は君が寝ている間に連合軍が街中に入った。

現在はゲリラ戦が繰り広げられていて結果は芳しくない。

これだけ動員しているのに誘拐の情報は見つからない。

やっと捕まえた捕虜も知らぬ存ぜぬの一点張りだ。

この戦争どこかがおかしい。」


「そういえば我々を罠に嵌めた悪魔族の司令官の反応もおかしかった。

罠を張っていたのに我々が来た事を驚いていたみたいだった。」



「、、、ファルス。君は信用できる。

罠にかけられて危険な目にあった張本人であり、権力に一番遠い。

悪いがこれからワシがこれから書く手紙を預かり明日まで仮病を使ってここで寝ていて欲しい。」


俺はアルア様を信じることにした。





そして次の日になり俺はベッドを出て王達やゾイルのいる司令室へ向かう。

そこは獣王の突然の失踪で混乱していた。


俺は膝をついて頭を下げると大きな声で王達へ伝える。


「人間族のファルスです。

獣王様より書状を預かっております。」


それを聞いてゾイルが苛立ちながら怒鳴る。


「そんな大事なこと、早く俺に報告しろ馬鹿者!!」


「いえ。獣王様から今の時刻まで誰にも伝えぬようにと言われておりますので。」


今度は魔人王が面倒くさそうに机に肘をついて俺に言う。


「いいからもたもたしてないで早く中身を読め。」


俺は書状を開き読む。


『皆には混乱をさせてしまい済まない。

しかし情報が漏れている可能性を考えて今回は単独行動をさせて貰った。

ワシは夜中のうちに街へ忍び込み、子供達と捕らえられた仲間を探す。

もう探していない大きな建物は一つだけ、王城だ。

ワシが戻らない場合はもう諦めて軍を引き上げよ。

この戦争には裏がある。』


読み終わると誰もが口を開かなかった。

色々と考えているのだろう。

裏切り者の疑いや自分が疑われた時の弁明を考えている。

全員がそんな顔をしていた。

その時だった。


ドゴォン!という爆発音のような音がした。

テントから出てみると国境線近くで煙が上がっている。


俺は周りにいたジェラードの部下二人と獣族の兵士を一人連れて煙の元まで走った。



辿り着くとそこには大量の味方の亡骸の上に血まみれの悪魔族の男が立っていた。

一体どこから一人で斬り進んできたのだろうか、敵の背後には血の道ができていた。


こいつは強い。

魂で感じる。


しかしよく観察をしてみると敵は体から大量の血を流していた。

呼吸も荒い。


今なら勝てるかもしれないと思ったその時、共に来た犬族の兵士が飛びかかった。

彼は素早く低い姿勢で走って行き、間合いに入る寸前で横に跳ぶ。

そして真後ろに回り込んだ。


と思った瞬間犬族の兵士は倒れ込み大量の血を体から噴き出す。

速くて目でしっかり追えていなかったが、悪魔族は剣を振り抜いていた。

それは俺が見た中で一番速い斬撃だ。


敵は血で足を滑らせて転ぶが、鬼気迫る眼光でこちらを睨みつけていた。


この時に改めてジェラードの言っていた事が分かった。

これが戦争で覚悟を決めた者の顔だ。

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