探検の終わり
100階の真ん中にある装置に俺が手をかざすと辺りは光に包まれて1階の小さい塔に戻ってきた。
建物の中なので気づかなかったが外は夜中だったので、そのまま塔の中にキャンプする。
みんな話したい事があったが疲れているので朝になってからする事にした。
朝になり朝食の調達がてら出発をする事になった。
歩きながら俺は一番聞きたかったことを聞いてみる。
「みんなもそうなのかな?
俺は転生の前に「地球」とか「earth」って呼ばれてる星にいたんだ。
だがそれ以外はほとんど覚えていない。」
「私はたぶん違う星だよ。
そんな呼び方してる地域もないと思う。
でも覚えてないのは私も一緒。
ちなみに隠してた訳じゃないけど、パパと血が繋がってないことも知ってた。」
シェリルに続いてルルとピーターも違う星、前世の記憶はないと同じことを言った。
また歩きながら食べれる木の実などを採って歩いていると、ピーターが今度は猪型の魔物を仕留めたのでファルス達が血抜きをして捌いてくれて朝ごはんとなった。
朝ごはんを食べながら100階の天井についてファルスが見解を述べる。
「あれを見て分かることはヴァリス教はまだ存在しているって事だな。
俺は奇跡とかあまり信じない方だから、どちらかというと誰かがあの天井通りに歴史が運ぶように操作していると思っている。
アレがヴァリスの予言だなんて信じない。」
「常識だったらごめん。
ヴァリス教の人って見たことないけど、いっぱいいるの?」
ルルが木ノ実を食べながらみんなに聞く。彼女はこういう情報に疎いからな。
「ヴァリス教は禁止宗教だ。
信仰してる事が分かった時点で処刑だ。」
「確かに破壊神を祀るなんて危ないけど、すぐ処刑だなんて過激なのだよ。」
ピーターの今の発言を聞いてファルスは少し悩んだ後で話始めた。
「違うんだ。
ヴァリスは破壊神じゃない。
子供達には教えてはいけないとされているが、ヴァリスは『破壊と再生の神』なんだ。
神の中で唯一命の再生ができるから妄信する者が現れる。
だからヴァリス教は危険なんだ。」
「命の再生って素敵な事じゃないの?」
「あぁ、命の再生だけならシェリルの言う通りだ。
だが一つの命の再生には多くの犠牲が必要になる。
それを続けるとどうなる?」
「人類がいなくなるのだよ。」
「その通りだ。
そしてあの天井の絵を見る限り13年後にヴァリスは復活して、また大きな戦争になる。」
「復活はさせないのだよ。
帰ったら僕たちの親に協力を要請して、、、」
みんなピーターの意見に賛成している。
だがダメだ。
ファルスの方を向くと俺がこれから話す事が分かったのかこっちを向いて頷いた。
「みんなそれはダメだ。
実はこの間森でエルフと戦闘していた鎧の男だけど、本当は人知を超えるほど強かったんだ。
そして彼が獣神の塔へ行くことを勧めたんだ。」
「ウチも耳で聞いてたから強さは分かっていた。だけど、それで親に頼れない理由はなんだ?」
シャナは顎に手を当てて難しそうな顔で聞いてきた。
上手く伝えようとしたが、何から説明すればいいか迷っていると、ファルスが助け船を出してくれた。
「奴は俺より強かった。
そしてあの天井のヴァリス教が見られたくない絵を俺達に見せた。
という事はアレ程の実力者が反ヴァリス教として表立って活動できないでいるんだ。
はっきり言って王族かそれに近い奴がヴァリス教に絡んでなければそうはならない。」
みんな次の言葉が出なかった。
12年は過ごしてきた実家が邪教の巣窟だなんて思いたくはない。
だがみんな馬鹿ではない。
根拠もなく親は冤罪だと否定もできないのだ。
俺たちは重苦しい雰囲気だったが学校まで帰らなくてはいけない。
川まで行ってボートを作り乗り込んだ。
そのボートの上で俺は何となく後回しにして聞いていなかった事をファルスに聞いた。
「そういえば約束の子供達ってなんですか?」
ファルスは少し悩むと話始めた。
「その話をするには悪魔戦争の話をしなきゃいけない。
あの戦争が起こる前、孤児院で育った俺は当たり前のようにタイガルドの兵士になったんだ、、、、」
その後語られたのは俺たちの知らない血塗られたファルスの歴史だった。
第4章終了です。
ありがとうございました。
次章はファルスの悪魔戦争編です。
少し過激な描写が増えると思いますが、ファルスの過去とリックス達のルーツが分かる話なので是非見ていただければと思います。




