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鬼の王子の異世界留学物語  作者: 田ノ島夜
第4章 リックス 大森林探検編
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神獣レヴェン

休憩をした俺たちは99階へと歩を進めた。

魔石はたくさん残っているので念の為みんな魔力を満タンにしておく。


99階の入り口に辿り着いた時にシャナとピーターの様子がおかしくなった。


「ウチが嗅いだ臭いの中で一番ヤバい。

絶対的な捕食者の臭いだ。」


「やっとはっきり見えたのだよ。

この部屋に入る前に言っておくけどかなりデカイのだよ。

これは建築物のサイズなのだよ。」


2人は既に冷や汗をかいていた。

しかし我々には引き返すという選択はない。

どう足掻いても一階まで降りていく準備はないのだ。


シャナとピーターの様子を見る限り、よっぽどのことなので慎重に中に入っていくと、そいつは姿を現した。



5メートル近い巨体。

それを支える大木のような太い足。

体は真っ白で雪のようであるが、それと対を成すような燃え盛る炎のたてがみ。


神話に出てくる獣神の召喚魔獣『神獣レヴェン』。


もう我々には気付いている様子だが、よく見ると鎖に繋がれていて部屋の奥半分しか動けないようであった。

たまに体を震わせると無数の火の粉が舞って地面が焼けている。


「今はどうでもいい情報なのだが、この魔石の反応は白色種なのだよ。」


確かに今は勝った時のことを考える余裕はない。

切り抜ける方が先だ。


この強敵を前に一回外に出て作戦を立てようとしたが、最後にシェリルが部屋の中に入ったその時、入り口に魔力の壁が張られてしまう。


「まずいっ!構えろ!!」


ヤバいと思った瞬間、荒ぶる神獣は鎖から解放されてこちらへ走り出してきた。


囮になるために走り出したファルスが指示を出す。


「ルル!隠蔽だ。

ソウ以外の戦士系は出てきてスピードで撹乱してくれ。

絶対に反撃を喰らわないタイミングを見つけて攻撃だ。

ソウは隠蔽組を守れ。」


俺とメレスとシャナはレヴェンの間合いに入らないように走る。


が、考えが甘かった。

俺たちの誰よりもトップスピードのレヴェンは圧倒的に速かった。

それは考える余裕を与えない速さでシャナにまず飛びかかり太い前足で潰そうとした。


バゴンッ!!

激しい音を立て舞い上がる土埃でシャナは見えなくなってしまった。


が、よく見ると土埃の向こうにファルスがシャナを抱き抱えて攻撃を避けていた。

しかしシャナを庇ったのかファルスの頭から血が出ている。


次にレヴェンはメレスに飛びかかる。

俺は体の全魔力を使ってメレスに向かって走る。

もう寸前に迫っているレヴェンの前足と衝突は避けられないので思い切って前足を殴りつけた。


ズンッ!!と鈍い音が響き、闇魔法の爆発でレヴェンの前足を吹き飛ばす。

前に鬼化した影響だろうか。

人外の騎士のキング種との戦いの時より桁違いに威力が増していた。

が、俺に対する反動も大きく後ろに弾き飛ばされた。


「水よ!唸り狂え!」


片足を弾き飛ばされてバランスを崩したレヴェンに隠蔽から一時離れたシェリルが水魔法を当てる。

やはり苦手属性の力かこれにはレヴェンも後退をする。


シャナを避難させたファルスがレヴェンに走って行きながら指示を出した。


「全力を出す!

リックス!すまないがそのあとに動けなくなった俺を回収しろ!!」


そう言うと、ファルスは走りながら炎に包まれる。

そして背中に6枚の炎の羽が生えた。


あれは鬼化か?

ちょっと違うようだが。


確かに考えてみればファルスは俺より魔力コントロールが上手い。

人間の行う不完全な鬼化はできるはずだ。

しかし鬼化で羽は生えないが。


そのファルスが構えたと思ったら一瞬消えて、次にレヴェンの後ろに現れた。

そして意識を失って前のめりに倒れてしまった。


少し遅れてレヴェンは全身から大量の血が吹き出した。

あの一瞬でいったい何回の攻撃をしたのだろうか。

これには堪らずレヴェンも体制を低くして身悶える。

しかしすぐに立ち直り、倒れているファルスに対し怒りの表情で噛み付こうとしている。


俺はまた思い切り走り出し、レヴェンの牙より先にファルスに辿り着き、なんとか回収。

背中ギリギリに炎のたてがみがカスって物凄い熱を感じた。

そして隠蔽組の方へ向かってファルスを思い切り投げた。

ソウ、キャッチしてくれよ。


ファルスが作ってくれた隙をついてメレスがレヴェンの上に飛び乗る。

そしてメレスは大きな咆哮を上げて鬼化した。

そして瓦割りのように足元を思い切り殴りつける。


鬼化した鬼族の本気のパワーで背中を殴りつけられ、レヴェンは遂に立ってはいられず。その体を地面につけた。あの音は背中の骨を折られたのだろうか。


俺も腹部に回って全闇魔力を拳にのせて殴りつけた。レヴェンは血を吐き出して明らかなダメージを見せた。

いける。


メレスの鬼化が解けてレヴェンの背中で倒れたので回収する。


「リックス様。すみません見苦しい姿をお見せして。


そう言ってメレスは意識を失った。

彼女が与えたダメージがあったおかげで俺の攻撃が届いた。

起きたらいっぱい褒めてやろう。


メレスが作ったチャンスを逃さない為に俺がファルスに代わりみんなに指示を出す。


「総攻撃だ!攻撃を撃ち込め!!」


隠蔽から出てきた、シェリル、ピーター、ルル、がそれぞれ全力の攻撃魔法を撃ち込む。

それを受け続けて確実にレヴェンは弱っていっている。


俺はメレスを安全な場所におくと、さっきの一撃で出し尽くした為、一つ持っていた魔石から魔力を取り出して回復する。


その時だった。

レヴェンは最後の力を振り絞って体をくねらせて前進しながら魔法を撃っていた3人の元へ襲いかかる。

ソウが前に出て体を張って止めようとしていた。



させるか。

俺の仲間を殺させはしない。


足元で爆発を起こして一気に近づき、

全魔力を拳にのせてレヴェンの顔を殴りつける。

闇魔法の大爆発をのせて。


レヴェンは横に吹き飛び、壁に顔を打ちつける。


そして大きな振動を立てながら地面に転がると二度とその巨体を起き上がらせることはなかった。



こうして俺たち薔薇組は伝説の神獣を前に大苦戦したが、なんとか1人も死者を出さずに99階を突破した。

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