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鬼の王子の異世界留学物語  作者: 田ノ島夜
第4章 リックス 大森林探検編
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招待客

エルフの渾身の隠れ家を見て俺はテンションが上がった。

この世界に来て一番感動したと言っても過言ではない。

ピーターはゴーグル越しでも目が輝いているはずだし、ファルスでさえ開いた口が塞がっていない。

ソウなんて『我が命は今日の為に』とか訳わからない事を言って涙を流している。


エレベーターから出て辺りを見渡すと大木の中が切り抜かれた建物が7つ、陸上競技場のトラックくらいの巨大な円を描くように建っており、その真ん中は板が敷かれていて、それぞれの建物から自由に行き来ができるようになっていた。


その壮大さだけでなく、コンセプトも素晴らしい。

まず生い茂る無数の葉で下から目視で基地は見えない。

エレベーターも森の中にこれだけの数がある木々の中から探し出すのは不可能だ。

これだけの大きさがあるのに目で見えないなんて、、、ロマンだ。


女子は置いてけぼりのようだが、男子のリアクションにエルフ達は明らかに機嫌を良くして元々通っている鼻筋をより高くしている。


ゲスト用の建物に案内されて男子が一階女子が二階を借りた。

荷物の整理と装備の確認をしていたら、ジェラードがやって来て是非夕食を共にと言ってくれた。


夕食会場には沢山の食べ物が並べられていた。

新鮮な獣の肉や山で採れた野菜や果物に俺たちの大好きな焼きおにぎりまで用意されていた。

後で聞いたが焼きおにぎりはルルのリクエストで兵士の一人が調達へ走ってくれたらしい。

そのルルは全く悪びれる様子は無い。


「さぁみんな食べて食べて!メレちゃんも今日は遠慮なく食べてね。」


「ありがとうございます。お言葉に甘え、、、」

と、言葉を止めてメレスは何故か俺の方を見て来たので、なんとなく頷いておいたら、勢いよく食べ始めた。


「ファルス殿は素晴らしい方なのだ。

これは部下から聞いた話だが大量の悪魔族に囲まれた時なんて、、、」


相変わらずジェラードはファルス自慢をしていて彼の部下達、自分から聞きに行ったソウ、『いいから君も聞きなさい』と言われて連れていかれたピーターに話している。

かなりのヨイショをされてファルスは嬉し恥ずかしいような感じだが満更でもない様子だった。


ルルはシェリルに『ちなみに私にタメ口なのバレたら後で兵士達に酷いことされるかもよ』とか嘘をついてからかっていた。


俺はメレスを見習って黙々と量を食べていた。

そもそも俺も鬼の国育ちなので、人間の尺度で測れば沢山食べる方なのだ。

どれも美味しそうなのでつい取りすぎてしまい席に着くと珍しい人に話しかけられた。


「ちょっと話があるんだ。隣いいか。」


選んだ食事を持ちながらシャナはそう言うと俺の答えを聞かずに隣の席に着いた。


「みんなには言っていないが、ウチは聞き耳を立てていたらな。

昼の戦いの大体の様子とリックスと先生がこちらへ向かってくる時のやりとりを聞いていたんだ。」


仲間に隠し事をしてしまった事を俺は凄く恥ずかしくなったが、彼女はすぐにフォローを入れてくれた。


「ウチもみんなには言わないべきだと思うぞ。

ただ、一人で抱え込んで不安な時はいつでもウチに言えよ。」


「ありがとう。

俺だけの秘密じゃなくなっただけで気が楽になったよ。」


本当にシャナはイケメン女子だ。これからは俺も頼らせてもらおうと本気で思った。


夕食が終わるとエルフの魔導師にシャワー代わりに浄化の魔法をしてもらい、部屋へ帰ってみんな寝てしまった。


俺も疲れていたはずなのだが、目を瞑ると鎧の男の絶望的な強さとあの場で何もできない無力な自分を思い出してしまい、なかなか寝付くことができなかった。


するともう一人寝れない様子のファルス先生が外へ出て行った。


少し気になった俺は建物の扉を出てファルスを目で探してみた。

この基地の真ん中、中央の広場にいたファルスは勢いよく鞘から剣を引き抜き、一心不乱に振り始めた。

話しかけられる雰囲気では無かったので俺はその姿をベンチに座って遠くから眺める事にした。

しばらくすると彼は悔しさをその口から漏らし始めた。


「子供達を守れずに何が英雄だ!!

何が獅子だ、、、

くそっ!!何が父親だ!!」


ここまでの長い間、子供達に不安を与えないように、あそこまでの感情を隠していたのか、、、

ファルス先生はやはり立派な人物だ。



俺は最近身に染みて分かったことがある。

王子という立場に生まれたからには将来的にファルス達のような国を第一線で守る立場に成長しなくてはいけないのだ。

そして今回思った。

まだ俺には力が足りない。


そんな事を考えていたら扉が開いてメレスが出てきた。

俺を見つけると静かにベンチに座って、しばらくファルスを見ていた。


「それほどの相手だったのですか。」


「あぁ、人知を越えてた。

敵がその気なら殺されてたよ。

だけど俺は強くなる。

あんな強い奴からも国を、家族と友達を守れるようになる、、、」


「リックス様。『俺』じゃなくて『俺たち』って言って下さい。

私はどこにでも付き合いますから。」


こっちを見つめるメレスは月に照らされてとても美しかった。


「さぁ、久しぶりに組手でもしましょう。

リックス様がいない間に私も結構強くなったのですよ。」



『俺たち』は今起きて出てきたかのように広場に向かっていき、ファルスに手を振った後、久しぶりの組手を始めた。



さぁ、強くなろう。

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