人外の王
キング種の圧はまるでバルガンやファルスと対峙した時のそれであった。難攻不落という文字が頭をよぎる。
間合いに入り込むことを体が拒絶する。
しかしそうも言ってられない。
俺がやらなきゃ全滅だ。
「ハッ!!」
心を決める為の掛け声を発して、低い姿勢で懐に飛び込む。
思いっきりボディをえぐるように一発。
間を置かず反対の拳でハンマーフックのように顔を殴りつける。
二発の拳は殴ると同時に溜めてた魔力を爆発させて威力も高めた。
ユニークマジックの授業の賜物である。
ボディにヒビが入ったのは手の感触で分かったが、一度ダメージを見るためにバックステップで距離をとる。
その時だった。
バックステップに合わせてキングは踏み込み、大剣で大砲のような突きを繰り出した。
空中で回避が間に合わない俺は全魔力を前方に展開し闇の盾を作る。、、、壊れないでくれよ。
キングの突きが着弾すると俺は後ろに吹き飛ばされ、転がりながら壁に激突した。
「ルル!魔法で撹乱しろ!シェリルはリックスの回復だ。」
カイルが叫ぶとルルが幻影を作り時間を稼ぐ。
耳にはキーンという音が鳴り響き、口の中は鉄の味がして視界は朦朧としていた。
なんとなく誰か近づいて来たのが分かったが、痛みで動く事が出来なかった。
「母なる光よ。我らを癒せ。エクストラヒーリング。」
シェリルのその声が耳に入ってくると、体の痛みが無くなりなんとか立ち上がる事ができた。
しかし出血や骨折の痛みは治まったが体にはダメージが残っている。
回復魔法は体に元々備わっている治癒力を使うため、流した血は戻らないし、無理矢理細胞を再生させるのでその分体は体力を使っているのだ。
「まずいのだよ。リックス君が叶わぬとしたら、もう打つ手が、、、」
「ジャン先生とファルス先生はまだ来ないのか」
「私が何とか時間を稼ぎます故、お逃げ下さい。」
全員がかなり焦っていた。
それはそうだろう。唯一有効打を放てる俺が赤子扱いだ。
しかし俺は不思議と冷静だった。
思いっきり殴られて頭がおかしくなってるからか?
いやっ。一つだけ最悪の策を思いついているからか、、、。
、、、やるしかないな。
そう決心した俺はみんなに向き直り静かに告げた。
「ファルス先生との決闘で使った結界って打撃に強くできる?」
「できるけど、、、まさかアレをやる気なのかね?」
「あぁ。生き残るには鬼化するしかない。そして魔力が尽きるまで俺を閉じ込めてくれ。」
ルルの幻影がなくなると、キングの前に俺は再び立ちはだかる。
「すまん!リックス頼む!!」
カイルの声が上がったあと、三角形のリングが静かに展開される。
さぁ、第2ラウンドだ。
第2章終了となります。
次回、カイル目線での物語となりますので引き続き宜しくお願いします。




