モンスターぺアレンツ
鬼の魔王は保護者席の先頭に座った。
生徒の席からはかなり離れているのでこれから起きる事はリックスは窺い知れない。
その圧倒的な圧力に身の危険を感じ、誰も周りに座ろうとする者はいない。 人としての防衛本能が備わっていれば近寄れるはずもないのだ。
しかしその危険区域など存在しないかのように侵入する者が出た。
身長は低いが威厳が体からにじみ出ている。
そんなロン毛にパーマの男が鬼の王の隣に座った。
中世の音楽家のような風貌である。
「戦争以来かマダラフ。
貴様が入学式に参加するとはこの世も平和になったものだ」
「ピエール=ファシウスか。
虚弱な魔人が遠い地までご苦労だな。」
2人は全く相手を見ることもなくそんな憎まれ口を叩きあう。
そこにもう1人絶世の美女が足を踏み入れる。
銀色の長く艶めいた髪を尖った耳にかけ、芸術のように整った顔で微笑んだ。
「破壊王に偏屈王か。
この学園にも魔族が出入りするとは物騒になったものだ。」
「ふん。1,000年近く生きてる化け物のババアに言われたくはないな。」
魔人王はさっそく偏屈を言った。
そこへまた1人、金色の鎧を着た男が座った。
「同じ保護者として、そして戦友として王族にするような挨拶は省かせていただきます。
しかし鬼王と魔人王、エルフ女王、みなさん同盟国なのですから仲良くやりましょう。」
英雄ファルス=ザルバーグはそう言いながら笑顔で手を広げた。
「今更仲良くなどできるか。
お前らを見ているとあの胸糞悪い戦争を思い出す。
英雄様も思い出したくないからあれ以降は戦いをやめて教師になったのだろ?」
エルフの女王エル=ストーンは無表情で冷たくそう吐き捨てた。
「私は殺し過ぎましたからね。
まぁ、そんな話は置いといて子供達の話でもしましょうよ。」
獅子の男は明るく振る舞うがパーマの偏屈王が面倒くさそうに口を開く。
「さっき顔見知りの教師に試験の話を聞いたが、
鬼の子は組手で相手を殺しかけて、
獅子の子は魔法の的を学校の壁ごと壊し、
エルフの子は一瞬でその壁を直し、
我が子は座学の問題で村一つ消し飛ぶレベルの魔法を思い付いたらしいな。」
鬼の王は一点を見つめながら言う。
「約束の子供達か。獣王様はいったい何を知ったのだろうな、、、」
鬼魔王マダラフのその言葉の後には誰も続かず、それぞれが色々な思いで入学式を眺めていた。




