だって行きたいもん
俺はまた荒ぶる船に乗り込んで家へと帰った。
途中でまたあの子に会えるかと探してみたが、会う事はなかった。
名前は確かメモしていたな。
あった!シェリル=ザルバーグ。ザルバーグ?なんか最近良く聞くような響きだな。
船酔いはそこそこに旅は順調に進んで我が家が見えた。
城へ着くとすぐに父の部屋に向かった。
ノックして部屋に入ると父はバルガンとお茶をしていた。
「ただ今戻りました。無事に合格いたしました」
「ご苦労。疲れただろ。ゆっくり休みなさい。」
父は嬉しそうに言ったが、少し寂しそうにも見えた。
確かにこれで試験に落ちたら家から出てかないもんな。
「父様。実はお願いがありまして、、、」
「ん?なんだ。言ってみなさい!
離れてしまうと何もできないからな!今のうちに何でも言っておきなさい。」
なんだか父は嬉しそうだ。
しかしこの内容は実に重たい。
「実は王立学校の入学式は保護者同伴と書いてあって、、、」
「、、、それは困りましたね。ぼっちゃま。
魔王が虎大陸に渡るのは戦争以来ですから。
これは大きな外交問題ですね」
やっぱり。
そしたら代わりにバルガンに来てもらうしか、、、
「いやっ!一人息子の晴れ舞台だ。なんとしてでも行こう。」
魔王様はもう心に決めてしまわれたようだ。
「しかし閣下。タイガルド王国へ了承をいただかなくては、、、」
バルガンは困った顔で父を見ている。
「大丈夫だ。なんとかする!
もし邪魔する者が出てきたら殺してでも参加する。」
俺は平和の架け橋になりにいくはずったのではないのだろうか。
「とにかく行くぞ。」
後日、バルガンが直接虎王国へ交渉へ行き、魔王の入学式出席を取り付けてくれた。
すぐに入学式の日は訪れて、俺は父様と二人で馬車に乗り込もうとしていた。
サキュガルとマルトルは昨日、しばしの別れを済ましたが、メレスは俺の前に現れなかった。
メレスに挨拶できなかったのが心残りだったが、出発時刻は容赦なく迫っていた。
そしていよいよ出発となり門から出たところで彼女は柵に寄っかかって立っていた。
「私、絶対に強くなって虎大陸に行きますから。」
俺は待ってると告げて彼女と握手を交わして故郷を後にした。




