表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

1 英雄譚のはじまり?


その色を見る度に思い出す

君が僕にとって、冒険そのものであったことを





勇敢なる者ブレイブハート!」


 瞬間、光り輝く対の紋様が少女の背から広がった。

 それは小さな翼のように、光の羽根をまき散らしながら揺らめいている。


 少女は肩越しに振り返り、守るべき小さな命を確かめると剣の柄を握る手に力を籠めた。

 対峙するお猿と睨み合いながら、構えた剣先を向ける。

 一瞬の静寂。お猿が動き出すと同時に少女は上体を屈め、身を投じた。

 競り合う刃と腕。それを一度弾くと、目にも止まらぬ攻防が始まった。

 少女が幾重にも剣を振るうが、お猿はそれを身の硬さで受け止め、反撃に重たい一撃放ってくる。

 しかし、振るわれる腕を、少女は右手に持った盾で器用にいなしてしまう。

 スタイルこそ違うが、その実力は互角であった。

 

「GYAU!!!GRUAAAA!!!」


 醜く恐ろしい咆哮に、僅かな苦痛の音が混ざり始めた。

 剛腕を躱し続ける少女に対して、剣を受けても無視していたお猿の肉体が、少しずつダメージを蓄積してきていた。

 お猿の足がふらつくのを捉え、少女は大きく斬り下ろすための姿勢を取る。

 お猿は堪らず腕を乱暴に振り回した。防御ですらない悪足掻きは、本来少女の脅威とはならないはずであった。が、お猿の腕から滴っていた血が偶然にも少女へと飛び散る。

 咄嗟に少女は右腕で目を庇う。

 この行動が奇しくも彼女の致命的行動クリティカルとなった。

 右手に持った盾が左目の視界を遮り、振り回された腕への反応が遅れてしまった。

 左胸に強い衝撃を受け、血の気の混じった息を漏らす少女の体が後方へと飛ばされる。

 身体を丸めて転がり、何とか行動不能を避けたものの上手く力が入らず、苦しそうに息を荒げている。

 それでも、


「絶対に守ってみせる……。こんなところで負けはしないっ―――!」


 血を流しながらもお猿は両腕を振り上げ、よろめく少女を殺さんと飛び掛かる。

 対して少女は剣を鞘に納め、事もあろうに瞳を閉じる。

 それは僅かな瞑想。最後に見た光景と理想の未来を瞳の奥で重ね合わせ、手繰り寄せる。

 瞳を開くと同時に少女は動いた。

 眼前に迫った両腕を剣の鞘を掲げて受け止める。そのまま鞘を敵に押し付けるように固定しながら両手で剣を抜き、鞘を蹴り上げた。

 敵の上体が反り、胴が大きく開く。

 少女は剣を抜き放った勢いのまま身体を回転させ、力を乗せた剣先を敵の急所へと向ける。

 まるで約束された軌跡をなぞるかのように、少女の剣がお猿の脇腹へと滑り込み、その心臓を貫いた。


「BYAP…!GBU――――」

「これで、ボクの勝ちだ」


 急所への致命の一撃クリティカルヒット

 口から血の泡を滲ませ、お猿は地面に膝を着いた。打ち上げられた腕は少女に振るわれることなく、力を失い垂れ下がっている。

 最期まで少女を睨んでいた瞳も光を失い、焦点の合わぬ濁った色を写していた。

 お猿の脇腹から剣が抜かれ、ひと振り血を払った後鞘へと納められる。

 その動きからは多少の疲れが伺え、肌には薄っすらと汗の筋が浮かんでいた。

 拳を握ることで手の震えを誤魔化し、少し蒼い顔のままだが笑顔を浮かべて守ったものを振り返る。


「怪我はないかい?」


 それは正しく英雄の姿であった。



 今この時より、少女は立ち向かう運命へと身を投じることになる。


 彼女の名は勇者エコー。

 世界を平和へと導く者。



  ***



〈こんな感じで、どーかな?〉

「うん、初めてにしては悪くないんじゃないか。だが、何で敵がお猿なんだよ。緊張感台無しだろうが。ブラッチエイプに直すように」

〈えー、可愛くないよ〉


 書かれた文章を確認しながら、あれこれと話し合う二人の姿。

 いや、“二人の姿”と形容するには、実際の場景との齟齬が大き過ぎるのだが、それでも頭の中にはそんな風景を浮かべて欲しい。現状、それで問題はない。


 これから紡がれるのは、一人の少女の物語だ。

 些か田舎が過ぎる小さな村から、この冒険は始まろうとしている。

 剣の腕を研き、仲間を集め、時に笑い、泣き、いつかの平穏を得るため旅路を行くことになるだろう。

 戦士や魔法使い、神官などを引き連れて歩く彼女の未来が、非常に楽しみである。


 さて、では先ほどの二人は何者なのか。

 彼らは戦士や魔法使いではないし、ましてや魔王のような存在であるはずもない。だが、説明するとなると多少時間がかかる程度に彼らの状態、というか形状、見た目には頭を悩ませる部分が多い。

 名前諸々、それらは追々語っていくとしよう。

 というわけで、お気付きの方もいると思うが簡潔に。

 そう、彼らは―――



――― 首だけ勇者とゴーストライター ―――


初投稿となります。

我ながら日本語がヤバい。

作品と同時に、私の文章能力の成長を楽しんで頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ