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第八十八話 回避不能な攻撃

 店内は無人だったが、それなりに商品は充実していた。

 むしろアメリカの平均的なコンビニより品揃えは良いほうかも。

 平時はそこそこ繁盛していたのだろう。

 レジが四台もあるし、この商品量なら店員も数人いるかと思ったのだが、意外だった。

 ビッグジョンの相棒がレジカウンターから飛び出してくると予想して警戒していたのに。


「ビッグジョンのやつ、ここでワンオペしてやがったのか」


 俺の独り言に、チャールズが反応した。


「鈴木くん。ワンオペとは何だね?」

「一人で店番したりすることっすよ。ブラック企業がよくやるやつっすね。ただでさえ忙しいのに、替えが利かないから欠勤できなくて地獄らしいっすよ」

「そうか……私も時々ワンオペをしていたことになるな」

「スパイ組織なのに?」

「まあな。どういうわけか私以外の全員が当日欠勤することがよくあったのだ」

「全員で?」

「うむ。一週間ほど無人が続いてから、真っ黒に日焼けしたスタッフたちが一斉に出勤するようなことが毎年ある」


 それはチャールズをハブって社員旅行にでも行ってるんじゃないすか?」

 そう口にしようと思ったら、凛夏に口を塞がれた。


 ……まあ確かに、被害意識のない本人にわざわざ伝えることもないか。


「ドクトル。秘密の入口はどこにあるんだい?」

「UNMO DO DO」

「『トイレの掃除用具入れの中のスイッチ』を押せばいいんだね?」

「DO DO DO」


 ピビーはドクトルを先に歩かせた。

 掃除用具入れの前でドクトルははしゃぐ。


「UNMO UNMO」

「わかった。じゃあ君が開けてくれ」

「UNMO」


 用具入れから数メートル距離を置いたところで、俺たちはドクトルの動きを観察した。

 掃除用具入れの中にはデッキブラシとモップがたてかけられており、上部には雑巾がぶら下がっていた。


「UNMO UNMO DO UNMO」


 両腕の使えないドクトルは、あごをしゃくって雑巾をめくるしぐさをした。


「そこにボタンがあるんだね。じゃあ、自分で押してくれ」

「UNMO」


 ドクトルはマッサージ機のような動きで首を振って雑巾をめくると、壁に額をこすりつけた。

 雑巾が彼の薄い頭にばさりとかかってちょっと面白かった。


 ビービーとアラームが鳴りコンビニのドアが閉まると、窓の外の地面がりあがっていく。

 店そのものがエレベーターのように地中に沈んでいったのだ。


 かなり長い間下っていたと思う。

 おそらくリニアモーターカーの走っていた地下トンネルよりはるかに下まで潜っているに違いない。


 地響きみたいな音が鳴って、外の風景は固定された。

 どこかの研究所を彷彿とさせる風景だ。


「UNMO」

「よし、そのまま先頭へ進むんだ。一番安全なルートで僕たちをボンジョレモァのところまで連れていってくれ」

「DO UNMO」


 再びドクトルを先頭に、俺たちは店を出て廊下へ進んだ。

 薄暗い通路をぞろぞろと歩いていく。


「DO UNMO」

「そうか、なるほど。鈴木くん、どうやらこの基地内には人間はほぼいないそうだよ、敵がいたらウンモ星人だと思って間違いない」

「物騒な話っすけど、殺す時の抵抗心が少ないってことっすね」

「そういうことだね。一寸の虫にも五分の魂とはいうけれど、油断したら死ぬのは僕たちだから」


 確かに、敵とはいえ殺すのは抵抗がある。

 しかしらなかったら自分たちが殺られるのだ。

 特に凛夏は完全にカタギだから、守ってやらねーとまずいよな。たぶん。


「DO UNMO UNMO」


 ムカッ。


「うるせー!!」

「UNMOッ!!?」


 ついついドクトルのケツを蹴り上げてしまった。


「ウンモウンモうるせーんだよハゲ! 日本語で話せ。貴様の頭に載った綿菓子みたいな惨めなちぢれ毛をむしりとるぞコラ」

「すみまUNMO」


 ムカッ。


 今度は尾てい骨を粉々に砕くイメージで強い蹴りをぶちこむ。


「UNMOーーーッ!? もうしまUNMO」


「鈴木くん、ドクトルを蹴るのはボスを倒してからにしてくれ。正直私も射殺したい気持ちにはなったが、今は我慢だ」

「……はい」


 まさかチャールズに叱られるとは。

 自分がものすごくちっぽけで短気に思えてきた。猛省せねば。


「UNMO UNMO」

「うるせーーつってんだろハゲ!!!」

「UNMO DO UNMO♪」


 殴られないとわかって調子に乗ったのか、リズミカルにウンモウンモ言っているドクトルに心底ムカついた。


「しっ」


 二番目を歩くピビーが足を止め、ドクトルの鎖を引っ張った。


「誰かいるみたいだね」


 薄暗い廊下の奥に確かに何者かの気配が感じられる。


 ウンモ星人か。


 不意打ちに備えて、凛夏の腕を引き寄せ俺につかまるよう促した。



 カツーン。

 カツーン。


 それは、乾いた音を響かせながらこちらに近づいてくる。


「待っていたぞ。鈴木凡太」


 なんだなんだ。

 どうしてウンモ星人側に俺のことを知っているヤツがいるんだ。


「この二年間、オレは貴様を殺すことだけを考え生きてきた」


 前口上をたれやがって。

 何者だ、こいつは。


「今こそ二年前の復讐を誓う時なのだ……!」


 そしてとうとうそいつは暗がりから姿を現した。


「あ、あなたは……」


 それは、高校時代の数学教師だった。


「鈴木くん、知っているのかね」

「はい……橋川といって、高校時代の数学教師です」


「相変わらずだな、鈴木。橋川『先生』と呼べといつも言っているだろうが!」


 橋川は怒号をあげた。


「どうして高校教師があんたを殺すことばかり考えて生きてるのよ」

「そ、それは……」


 チャールズや鎮鈴さんが好奇の目を向ける。

 というか、俺が何か悪いことをして恨みを買ってるんだと疑われているに違いない。

 違う。俺は被害者だ。


 自らの潔白を証明するために、俺は彼らに橋川との思い出を語り始めた。



 橋川が数学Iの担当として俺たちのクラスに現れたのは、高校一年の春だった。

 彼は熱血教師だったが、昭和の香りを強く残している男でもあった。

 授業中におしゃべりする者がいると


「なんだてめえ! 授業を聞かねえなら出ていけコラァ!」


 と叫びながら竹刀で教卓を叩いて威嚇するので、生徒からは忌み嫌われていた。

 二年になっても数学IIは橋川だった。


 それは夏の暑い日だった。

 「やる気がないなら帰れ」と言われた俺は帰り支度を始めた。

 廊下に出ると橋川はすごい形相で飛び出してきて、


「貴様ァーー! 誰が帰っていいと言った!?」


 と竹刀で俺の背中をひと突きしやがったのだ。


「あなたが帰れって言ったんでしょーが!」

「それとこれは別だコラァー!!!」


 俺は放課後呼び出され、「この紙をいっぱいにするまで反省文を書け」とA4用紙を二枚渡された。

 ムカついたので二枚ぎっしりに円周率を埋めて提出すると、橋川の態度がころりと変わったのだった。


「鈴木……おまえも円周率で興奮するタイプのモビルスーツだったのか」

「いえ、違いますが。っていうかモビルスーツではありません。僕は人間です」

「照れなくて良い。先生と『円周率研究会』を結成しよう。約束だ」

「結成しません。僕は人間です」

「入らないと剣道六段、この橋川のマグナムでおまえの身体に本物の突きを教えることになる」

「す、すみませんでした。僕、『円周率研究会』に入ります! 命だけは……」


 そして俺は『円周率研究会』というあやしげな部活を橋川と二人で設立するはめになった。

 といっても活動内容は特になかった。

 俺は部室で漫画を読んでいるだけ。橋川は円周率を見ながらもぞもぞ動いているだけ。

 いや、それはシコシコだったのかもしれない。

 そもそも俺は円周率に興味はなかった。

 反省文の紙に書いたのも最初の五桁以外は全部デタラメだし、それを見抜けなかった橋川も円周率に対する思い入れを持っているようには思えなかった。


 部活がいやでいやでしょうがなかった俺は、放課後になると非常階段から出て校門へ向かった。

 それでもヤツは校門前に全裸で待機し、竹刀かマグナムをいじりながら俺を待ち伏せているのだ。


「鈴木! 部活の時間だ」


 そう叫んで俺を部室へ引きずっていくのだ。


 全裸で校門に立つ橋川を見ると、女子生徒は悲鳴を上げながら逃げていく。

 しかしそれも毎日続くと橋川が全裸で立っている程度じゃ誰も驚かなくなってきた。


 近所のおばあさんなど、毎日校門前で仁王立ちする橋川のマグナムを拝むようになった。


 「熱血教師、不良生徒を更正。肛門丸出し、校門での珍事」という正気とは思えない見出しで新聞でも取り上げられた。

 しかも、ほのぼのニュース枠で。


 新聞がきっかけで橋川は有名になり、一緒に映っていた俺まで世間から好奇の目で見られるようになってしまった。

 しまいには北海道の親戚から「凡ちゃんも立派になったのね。高校を出たらこの人のお婿さんになったらどう?」と男の写真を渡される始末。


 とうとう怒りが爆発した俺は、橋下を社会的に抹殺することに決めた。


 部活中フルチンでくつろいでいる橋川に後ろから近づいて、事故を装ってマグナムに濃硫酸をぶっかけた。


「ギャアアアア!! が! 芽がぁぁぁぁ!!」

「橋川!? 大丈夫っすか!? 硫酸を拭いてください!」


 俺は粗めの紙ヤスリを手渡した。


「すまんな鈴木……」


 ザリッ。


「ギャアアアアアアア!!!」


 硫酸でただれた患部を紙ヤスリでこすり、ヤツのマグナムは致命的なダメージを負ったのだ。

 ざまあみろ。





 そこまで話したところで凛夏が会話に割って入った。


「気持ち悪くなってきちゃったから、ちょっと離れてていい?」

「ああ」


 そして彼女は数歩離れた壁に背を預けた。


「鈴木くん。続きを頼む」


 どうしてこんな胸糞悪い話をチャールズは嬉しそうな目で聞いてるんだ。

 まあいいや。

 続きは、えーと……。




 橋川は救急車で運ばれていき、しばらく学校を休んだ。

 これで俺の身の安全が保障された。


 そう思ったのだが、二週間後ヤツは戻ってきた。


 モロッコで女に生まれ変わってきたヤツは、薄い頭と毛深い身体はそのままに、胸部には巨大な脂肪の塊が追加されていた。

 しかも、三つも。

 どうやら医師が胸の数を間違えたらしい。


「鈴木。私は女性に生まれ変わったのだ、これで君と本当の愛を育める」


 ハゲ頭で巨乳のラオウという風体になった橋川は、クトゥルフ神話にでも登場しそうな異形のバケモノになっていたのだ。


 それを新聞が「熱血教師、軌跡の帰還! 性差を超えた師弟愛」というタイトルでスクープしたせいで俺の自宅には全国の親戚から心配と祝福の電話が鳴り止まなかった。


 まず俺は新聞社を襲撃した。

 担当記者と編集長をロープでぐるぐる巻きにして連れ出し、部室に閉じ込めた。

 ヤツらにも橋川の恐ろしさを知ってもらうためにやったのだが、逆効果だった。


 しばらく部室に呼び出されずに平穏な日々を送れたが、ある日の朝刊を読んで背筋が凍った。


 「密着取材。橋川先生愛の指導」というよくわからない連載コラムが始まっていたのだ。

 ついでに担当記者が性転換したことも本文で触れられていた。


 恐怖した。

 次は我が身かもしれない。


 やはり橋川本人を消さねば。

 しかし剣道六段の橋川を倒すのは容易ではない。


 俺は空手部と柔道部の力を借りることにした。

 幸いにも学校一の美少女のブラジャーを盗みとった事件をきっかけに、彼らから英雄とあがめられていたのだ。

 俺は、戦利品のブラと引き換えに力を貸してもらえることになったのだ。






「凡ちゃん、そんなことしてたの!? 最低じゃない!!」

「うるせーな! おまえ聞きたくねーんだろ? あっち行ってろ」


 凛夏を追い払ったあと、話を続けた。






 作戦はこうだ。

 授業が終わってから橋川の竹刀を隠す。

 それから部室に行き、素手になった橋川を総勢十六人の空手部員・柔道部員が襲撃する。

 「確実に息の根をとめろ」「少年法が守ってくれるから安心しろ」が合言葉だ。


 彼らは教師襲撃というリスクある仕事をするので、女子のパンツを彼らにかぶせた。

 彼らが惚れている女子を調べ上げ、そのパンツを盗んできたと報告したので、彼らのやる気はMAXだった。

 実際はセキュリティの甘いブスたちのパンツだったけど。知らぬが仏。


 今回の橋川襲撃作戦では多数の怪我人が――ひょっとしたら死人も出るかもしれなかった。

 しかし、全裸のニューハーフとパンツマスクが死闘を繰り広げても、世間からは変態同士の縄張り争いとしか思えないだろう。

 捜査の手が俺に及ぶことはあるまい。

 完璧な作戦だった。


 そして作戦決行日。

 アリバイ工作のため俺は学校を欠席し、こそこそと学校にやってきて予定通り橋川愛用の竹刀を隠した。


 あとはパンツマスクどもがあのバケモノを討伐してくれるはずだった。

 しかも俺は風邪で自宅療養中。

 完璧である。


 夜になってもパンツマスクどもから作戦結果の報告がないことが不安だったので、念のためもう二、三日休んでから登校することにした。


 そして三日目の朝、新聞を見て青ざめた。


 そこには「高校教師、下着を盗んだ十六人を体で説得」「改心した十六人、恩師とともにモロッコへ」と美談のような記事が載せられていた。

 どうやら全員返り討ちにあったらしい。


 再び平和が続いたが、それは台風の目に過ぎなかった。

 彼らが帰ってきたのだ。

 凱旋した巨乳マッチョ集団は、おぞましい威圧感を放ちながら校内を闊歩かっぽしていた。


 彼らがモロッコに行ったのは元をたどれば全て俺に責任がある。

 下手を打てばられる。


 恐怖のあまり俺は登校拒否になってしまった。

 毎日布団にくるまって怯えながら過ごした。


 二週間ほど経ったところで朝刊に記事が載った。


 「熱血教師とラブリーエンジェル十六人、登校拒否児宅へ慰安訪問 あす出発」という見出しを見た瞬間に小便を漏らしそうになった。


 もはやゴシップ紙と化した誌面もひどいが、それ以上に犯行予告を突きつけられたようなインパクトの見出しが恐ろしかったのだ。

 ラブリーエンジェルとやらは空手部員、柔道部員のことだろう。

 部室で何があったのかは知るよしもないが、彼らは完全に『その道』に染まってしまったのだ。


 俺は荷物をまとめて家に出ることにした。

 ほとぼりが冷めるまでは野宿して暮らそう。


 初日は二子玉川から多摩川の土手に降りてテントを張った。

 そして二日目は南多摩、三日目は拝島橋とゆっくり上流へ移動していった。


 五日目の夜にそれは起こった。

 奥多摩の川沿いで橋川とラブリーエンジェルに見つかってしまったのだ。


 ヤツらはホモとニューハーフの混在部隊になっており、十七人あわせると格闘技の段位は四十段におよぶ最凶の敵だった。

 逃げても逃げてもヤツらは追ってきた。

 運よくパトカーが通りがかったので警察官に泣きついた。


「小僧、任せときな。本官は偏見に満ちているからな。ああいうホモ野郎がでえきれえなんだよ」

 頼もしい言葉とともにニューナンブを抜く警察官。


「停まれ! クソホモども! 全員まとめてブタ箱にぶち込んでや……ぐあああっ!!」


 死肉に群がる餓鬼のように、警察官はラブリーエンジェルに囲まれてしまった。

 やばい。

 彼が時間を稼いでいる間に少しでも逃げなくては。


 必至で崖を這い上がった。

 下からは警察官の悲鳴とヤツらの歓喜の声が聞こえていた。


 途中で数匹が崖を上ってきたが、蹴り落とした岩が命中して地面に転がり落ちた。


 山中をさまよっていると頭上をヘリが飛んでいるのが見えた。


「おーい、助けてくれ!」


 スマホのライトをつけて両手を振るとヘリから大量のビラが舞い落ちてきた。


「なんだこりゃ」


 それは明日の朝刊だった。


 見出しの「我らのラブリーエンジェル、体制を撃破! 警察官(ニ五)殉職」を見て腰を抜かしそうになった。

 同意に背後の森からヤツらのうめき声が近づいてきた。



 もうダメだ、と神に祈ったところで目が覚めた。

 夢だったのだ。




「夢オチというわけね」

 鎮鈴さんが少し苛立った声色でそう言ったので、俺は無言でうなずいた。


「どこからが夢だったの?」

「円周率のあたりからっすね」

「ほとんど全部フィクションじゃないか」

「こんな時に夢の話なんてしないでほしいんだけど」

「鈴木くん。今の話が夢だったのなら、あの教師はどうして君を恨んでいるんだね?」


 チャールズと二人がかりで責められたので、しぶしぶと俺は答えた。


「えーと、高二の時に橋川に竹刀で殴られたのでムカついて、復讐で橋川を焼却炉に放り込んだら大火傷したからじゃないっすかね」

「君が悪いんじゃないか」

「フツー殴られたくらいで相手を焼却炉に投げ込まないわよ」

「凡ちゃん、それはひどすぎるよ……」

「鈴木くん。もう少し我慢強くなったほうがいいかもね」


 とうとう味方全員が俺を責めはじめた。

 なんだなんだ、俺が悪いことになっていないか?


「ちょっと待ってくださいよ。橋川が俺を殴ったのがきっかけだし、最初は俺が被害者だったんすよ? 俺が責められるのはおかしくないっすか? ですよね?」

「鈴木。貴様が授業を真面目に聞かないから殴ったんだ!」

「そりゃ違いますよ。授業を聞かなかったのはあなたの授業が退屈だったからっすよ。俺、文系だし。悪いのはあなたじゃないっすか?」

「凡ちゃん、それは逆ギレだよ」

「葉月くんの言う通りだ。鈴木くん、それは君の逆ギレだ。橋川先生は悪くない」

「鈴木くん。あんたちょっとエゴイストだから治したほうがいいわよ」

「僕もみんなに賛成だね」


 マジかよ!

 また全員に責められてる!

 お、俺が悪いのか!?


「どうやら味方に見放されたようだな。鈴木。焼却炉の炎は私を復讐の鬼と変えた……わかるな?」

「わかりますとも、橋川先生。鈴木くんに世の中を教えてやってください」


 げっ!

 チャールズが裏切りやがった!


「ちょっと待ってくださいよ、チャールズまで橋川の味方するんすか?」

「仕方ないだろう。鈴木くん、君のイタズラは少し度が過ぎる。私の食事に下剤を混ぜたりしただろう?」

「そ、それは……確かに混ぜましたけど、二食に一回くらいのペースっすよ? かわいいイタズラじゃないですか」

「君にとってはお茶目なイタズラかもしれないが、二食に一回のペースで下剤を飲まされるのは世間的にはオーバーペースだ。わかるかね?」

「う……」


 確かにそうだ。

 そんなこと俺だってわかっている。


 チャールズが下痢で苦しんだらそれを笑って終わりにするつもりだった。

 しかしチャールズは腹が強いのか、全然効果がないから少しずつ下剤の量を増やしていたのだ。

 オーバーペースというより、俺の調合スキルとチャールズの腹との真剣勝負のつもりだったのに……。


「凡ちゃん! 人の食べ物に下剤を入れるなんて最低だよ……なんでそんなことばかりするの?」

「なんでって……みんなに笑顔を与えたかったから」

「みんなが笑ってくれるのなら、私の腹はどうなっても構わないのかね?」

「ええ、まあ……一応」

「その思考はサイコパスの部類だ。自覚はあるのかね?」

「まあ……二割くらいは」

「二割? たったの二割?」

「いえ、その……三割くらいは」


 やばい。

 全員の視線が痛い。

 なんかウンモ星人よりも俺のほうが悪者にされそうなんですけど。


 絶対時間モラトリアムでは回避不可能な、精神攻撃で俺は追い詰められている。

 大ピンチだ。

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